築50年の倉庫が、趣味のための場に。生まれかわった『崖のアジト』
築50年の倉庫が、陶芸のための基地として生まれ変わったリノベーション事例。元々あった倉庫の造成 や建築構造があえて露わになった内装には、まさに「アジト」という言葉がしっくりきます。
杉田真理子
2019年12月5日
趣味の陶芸にしっかり打ち込みたいという想いで、家づくりを決心した30代の施主。陶芸ができる納屋スペースも一緒に確保できる住宅を、築50年の物件を建築家とリノベーションすることで実現させた。「30代のうちにものづくりをすると、その後の人生の感性が変わる、と聞きました。定年後に趣味として陶芸をやるのでは遅い、今からやらなきゃ、と思いたったんです」と施主。使い手の感性が光る、高台に立つアトリエを訪ねた。
どんなHouzz?
住まい手:30代の施主
場所:兵庫県宝塚市
建築面積:33.92㎡
延床面積:67.84 ㎡
構造:1F鉄骨造2F在来木造
設計:鈴木俊彦(SQOOL一級建築士事務所)
施工:鷲尾工務店
竣工時期:2019年7月
撮影:笹の倉舎/笹倉洋平
賃貸時代も、ろくろは部屋に置いてあったという施主。「ろくろはあっても、スペースは足りないし、やはり焼く場所がなくて。このままでは継続できないな、と思ったんです」と当時を振り返る。
建築家・鈴木俊彦さんとの出会いは、友人を通じてだった。築50年の倉庫付き住居を見つけ、住居のリノベーションも含め、陶芸に使用するための倉庫の改修を鈴木さんに一任した。「『この人と仕事をしたら、面白いぞ』というワクワク感がありました」と鈴木さん。
住まい手:30代の施主
場所:兵庫県宝塚市
建築面積:33.92㎡
延床面積:67.84 ㎡
構造:1F鉄骨造2F在来木造
設計:鈴木俊彦(SQOOL一級建築士事務所)
施工:鷲尾工務店
竣工時期:2019年7月
撮影:笹の倉舎/笹倉洋平
賃貸時代も、ろくろは部屋に置いてあったという施主。「ろくろはあっても、スペースは足りないし、やはり焼く場所がなくて。このままでは継続できないな、と思ったんです」と当時を振り返る。
建築家・鈴木俊彦さんとの出会いは、友人を通じてだった。築50年の倉庫付き住居を見つけ、住居のリノベーションも含め、陶芸に使用するための倉庫の改修を鈴木さんに一任した。「『この人と仕事をしたら、面白いぞ』というワクワク感がありました」と鈴木さん。
大学時代に陶芸サークルに入り、社会人になってからは、自分でろくろを買って独学していた施主。陶芸のための場所を設けるにあたって、きっかけのひとつとなったエピソードがある。
「昔姫路で、版画家の方が運営されているサロンに行きました。そこで出会った70代のおじいさんが、『今まで誰にも教わらず、自分だけで、なんでもつくってきた』とおっしゃっていたことが印象的で。素人でも、辞めずに継続することが大切だなと気付いたんです」と施主は語る。
「昔姫路で、版画家の方が運営されているサロンに行きました。そこで出会った70代のおじいさんが、『今まで誰にも教わらず、自分だけで、なんでもつくってきた』とおっしゃっていたことが印象的で。素人でも、辞めずに継続することが大切だなと気付いたんです」と施主は語る。
古い倉庫の壁面全体を覆っていた板を剥がすと、鉄の構造と、道路の下側の斜面となる石壁が露わになった。コストを削減する、という狙いも合ったが、この剥き出しの風合いが気に入り、そのまま残すことにした。
「既存の建物の図面が残っていなかったので、全て計り直して、再現する必要がありました。1本1本測るのは大変な作業でしたが、そのおかげで正確な改修が可能となりました」と鈴木さん。
建築家を探す
「既存の建物の図面が残っていなかったので、全て計り直して、再現する必要がありました。1本1本測るのは大変な作業でしたが、そのおかげで正確な改修が可能となりました」と鈴木さん。
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窓の外は緑の美しい斜面であるため、元々の腐った壁は取り払い、窓を2つ付け足すことで自然光をふんだんに取り入れた。
室内には、作業台や必要機材を収納する棚の他、作品を乾かしたり、展示するためのスペースがある。作品を飾るための収納棚は、改修前の家に残っていた階段の手すりと段板を使って、施主自らが作った。古い床の間の板を使った手作りの家具もあり、ものづくりをする住まい手のこだわりが詰まった空間となっている。
室内には、作業台や必要機材を収納する棚の他、作品を乾かしたり、展示するためのスペースがある。作品を飾るための収納棚は、改修前の家に残っていた階段の手すりと段板を使って、施主自らが作った。古い床の間の板を使った手作りの家具もあり、ものづくりをする住まい手のこだわりが詰まった空間となっている。
倉庫の2階は、昔は車庫として使われていた。今回のリノベーションでは、元々あった天井の仕上げ材を取り払い、古い屋根の構造をあらわにさせた。陶芸作品を焼くための灯油釜を置き、倉庫内で作品づくりを完結させられるように工夫されている。壁には防火材をあしらい、作品を焼く際も安心して使えるようにした。元々の倉庫に残っていた1階と2階をつなぐ滑車は、現在も灯油や土を運ぶ際に活用している。
住宅側の改修コストを下げるため、施主と鈴木さんは、工事に使用する合板350枚をこの場で手塗りしたという。この時色ぬりをした時の染みが床に残ったが、あえて味わいとして、そのまま残すことにした。「新築だったら、汚したくないからこんな作業は無理ですよね」と笑う施主。あえて過去の痕跡を残す、という美意識は、この場所全体のデザインに反映されている。
住宅側の改修コストを下げるため、施主と鈴木さんは、工事に使用する合板350枚をこの場で手塗りしたという。この時色ぬりをした時の染みが床に残ったが、あえて味わいとして、そのまま残すことにした。「新築だったら、汚したくないからこんな作業は無理ですよね」と笑う施主。あえて過去の痕跡を残す、という美意識は、この場所全体のデザインに反映されている。
元々は、木彫をやっていたというお施主。プロセスが多く、飽きにくい陶芸に惹かれるようになった。「時間がかかるもの、一人では完結しないものが好きです。小さい頃から、器が好き、というのもあります」とお施主。平日は仕事をし、趣味の陶芸は休日に行っているという。今までは茶器が中心であったが、最近は食器も手がけるようになった。
「秘密基地、では少しぬるいと思ったので、アジト、という名前をつけました」と鈴木さん。来るかわからない"いつか"のためではなく、今だからこそ始めたい活動のための場づくり。その大切さを、この場所から学べたような気がした。
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「秘密基地、では少しぬるいと思ったので、アジト、という名前をつけました」と鈴木さん。来るかわからない"いつか"のためではなく、今だからこそ始めたい活動のための場づくり。その大切さを、この場所から学べたような気がした。
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