無機質な素材を印象的に用いた、クールモダンな住宅
コンクリート打ちっ放しに、石、木材などこだわりの天然素材を用いてつくった、建築家の自邸。
杉田真理子
2019年8月25日
兵庫県、西宮市。桜のシーズンには、見事な景色で花見客を楽しませる夙川のほとりに、この家は位置する。コンクリート打ちっ放しのシンプルな外構と、城壁のような見事な石垣は、外からぱっと目をひくスタイリッシュさだ。素材そのものがもつ魅力に徹底的にこだわった、建築家の自邸を訪ねた。
どんなHouzz?
住まい手:建築家・藤田豪さんと愛犬
所在地:西宮市夙川
敷地面積:105.16㎡
建築面積:61.01㎡
延床面積:155.35㎡
構造:RC造
設計:株式会社GOSIZE
施工:株式会社笠谷工務店
竣工時期:2017年10月
独立してから15年ほど、大阪・梅田に自宅兼事務所を構えていた建築家・藤田豪さんがこの場所を見つけたのは、偶然のことだった。「川や緑が見える場所で暮らしたい、という思いもどこかにあり、たまたま仕事の関係で見つけたこの土地に、思い切って移動することにしました」と藤田さんは当時を振り返る。
住宅の他、ホテルや旅館の設計も多く手がける藤田さん。「この自邸は、自身の作品としてだけでなく、実際に人に来てもらい、本物の素材を見て、触り、肌で体験できる場所にしたいと思いました」と語る。
住まい手:建築家・藤田豪さんと愛犬
所在地:西宮市夙川
敷地面積:105.16㎡
建築面積:61.01㎡
延床面積:155.35㎡
構造:RC造
設計:株式会社GOSIZE
施工:株式会社笠谷工務店
竣工時期:2017年10月
独立してから15年ほど、大阪・梅田に自宅兼事務所を構えていた建築家・藤田豪さんがこの場所を見つけたのは、偶然のことだった。「川や緑が見える場所で暮らしたい、という思いもどこかにあり、たまたま仕事の関係で見つけたこの土地に、思い切って移動することにしました」と藤田さんは当時を振り返る。
住宅の他、ホテルや旅館の設計も多く手がける藤田さん。「この自邸は、自身の作品としてだけでなく、実際に人に来てもらい、本物の素材を見て、触り、肌で体験できる場所にしたいと思いました」と語る。
石や木材など、できるだけ天然素材を使うことにこだわった。「まがい物は使いたくないですし、あまり多くの素材を一度に使いたくないので、ひとつひとつ厳選し本当に良い素材のみ使用しています」と藤田さん。
もちろん、天然素材だからこそのデメリットもある。例えば天然石の床はシミや汚れがつきやすいなど、実際自身で住んでみて、手入れに手間がかかることを改めて実感したそうだ。「しかし、私は家はそもそも手がかかるし、そうあるべきなのではと思っているんです。時間をかけて手入れをし、長く大事に使っていくことで、生活の時間が豊かになる気がしています」と藤田さん。
結果、無用なものは買わず、本当に価値のあるものだけを、厳選して生活に取り入れるようになったという。お茶、香り、器など、住まいに関わる全てにこだわりが詰まっており、それがデザインの仕事にも生かされている。「自分で実際に体験し、心からその価値を信じているからこそ、自信を持ってお客さまにおすすめできると思っています」と藤田さんは語る。
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もちろん、天然素材だからこそのデメリットもある。例えば天然石の床はシミや汚れがつきやすいなど、実際自身で住んでみて、手入れに手間がかかることを改めて実感したそうだ。「しかし、私は家はそもそも手がかかるし、そうあるべきなのではと思っているんです。時間をかけて手入れをし、長く大事に使っていくことで、生活の時間が豊かになる気がしています」と藤田さん。
結果、無用なものは買わず、本当に価値のあるものだけを、厳選して生活に取り入れるようになったという。お茶、香り、器など、住まいに関わる全てにこだわりが詰まっており、それがデザインの仕事にも生かされている。「自分で実際に体験し、心からその価値を信じているからこそ、自信を持ってお客さまにおすすめできると思っています」と藤田さんは語る。
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玄関から室内に入ると、石垣に囲まれたすっきりとした中庭が目に入る。夙川の辺りは、松や桜などさまざまな種類の木々に恵まれているため、中庭はあえてシンプルに仕上げた。緑の美しいアオダモの木は手入れもしやすく、すっきりと涼しげな雰囲気を与えてくれる。「良い季節には中庭の窓を開けっ放しにし、内と外の一体感を楽しみます。」と藤田さん。庭池の水が流れる音が、耳に心地よい。
圧巻の大きさを誇る石垣は、福島県までわざわざ足を運んで取り寄せたこだわりの素材だ。戦国時代に、寺院や城郭の石垣施工を専門とした技術集団「穴太衆(あのうしゅう)」の技を引き継いだ場所を訪ねたという。「目の前の夙川には、樹齢200〜300年を誇る木々があります。素材として、負けない品格を誇るものを使用したいという想いがありました」と藤田さん。
圧巻の大きさを誇る石垣は、福島県までわざわざ足を運んで取り寄せたこだわりの素材だ。戦国時代に、寺院や城郭の石垣施工を専門とした技術集団「穴太衆(あのうしゅう)」の技を引き継いだ場所を訪ねたという。「目の前の夙川には、樹齢200〜300年を誇る木々があります。素材として、負けない品格を誇るものを使用したいという想いがありました」と藤田さん。
中庭の横には、普段商談などに用いる土間スペースが広がる。天井が吹き抜けとなっており、広々とスタイリッシュな雰囲気はまるで美術館のようだ。縦長に切り取られた窓から差し込む光が、すらりと美しい。
内玄関の床には、伝統的な表面加工技法「名栗(ナグリ)」を施した、ダークな色合いのタモ材を使用した。丸太や板の表面に道具の痕跡をあえて残し、それを味わいとして意匠に持ち込んだのは、かの千利休だという。「プライベート空間へと続く第二の玄関なので、その境界線をゆるやかに表現できる、存在感のある素材を選びました」と藤田さん。
内玄関の壁の一面には、錫を流し込みタイル状にしたものを装飾として施した。「錫でできた湯呑みで飲むと、水やお酒が美味しくなると言われていますが、錫には空気を浄化する作用もあるようです。玄関なので、"邪気を払う"という意味でも縁起が良いと思いました」。錫を流し込んだ際に自然に生まれた波模様が、空間に品格と面白みをプラスしている。
内玄関の壁の一面には、錫を流し込みタイル状にしたものを装飾として施した。「錫でできた湯呑みで飲むと、水やお酒が美味しくなると言われていますが、錫には空気を浄化する作用もあるようです。玄関なので、"邪気を払う"という意味でも縁起が良いと思いました」。錫を流し込んだ際に自然に生まれた波模様が、空間に品格と面白みをプラスしている。
ベッドルームとバスルームがある2階からは、1階の土間スペースをガラス越しに上から見下ろせるようになっている。各方面の窓から自然光がバランス良く入り込み、照明に頼ることなく、家全体が明るい。「照明はダウンライトが中心になるので、夜はまた雰囲気が代わり、違った表情を楽しめます」と藤田さん。
打ちっ放しのコンクリートとクールモダンな雰囲気が踏襲されたバスルーム。コンクリート製のバスタブとシンクは、自身でデザインした。バスタブからは見えないよう。シンクの下に配管や蛇口を埋め込むなど、細部に工夫が凝らされている。天窓から差し込む光が、バスルーム全体を広々と演出する。
ガラス窓で仕切られただけのシンプルなシャワーブース。すっきりと美しいシャワーは、Vola製だ。
3階のリビングダイニングは、仕切りのない開放的なデザイン。天井から床まで大きく切り取られた一枚窓からは、夙川沿いの木々を贅沢に見渡せる。桜の季節には、バルコニーから外に出て、桜を愛でることもできる。フローリングは、コンクリートとの相性がよい、御影石で統一した。
コンクリートの無機質な素材感に、窓の外の緑が美しく映え、まるで室内のデザインの一部のように見える。四季を愛でるのに、絶好のリビングだ。
キッチンも特注で作り込んだ。収納棚のドアには、ドイツからオーク古材を取り寄せて使用。カウンタートップにはクオーツの入ったストーンをあしらい、すっきりと清潔感がある仕上がりだ。
コンクリートの無機質な素材感に、窓の外の緑が美しく映え、まるで室内のデザインの一部のように見える。四季を愛でるのに、絶好のリビングだ。
キッチンも特注で作り込んだ。収納棚のドアには、ドイツからオーク古材を取り寄せて使用。カウンタートップにはクオーツの入ったストーンをあしらい、すっきりと清潔感がある仕上がりだ。
一時の流行や見た目の良さに引きずられず、長く自分らしく付き合える家づくりが大切だと、藤田さんは語る。「例えば、コンクリートの打ちっ放しは確かにスタイリッシュですが、夏は熱が籠りやすいなどの特徴をしっかり理解していないと、大変な目に合います」と笑う。「だからこそ、"なんとなくイメージでかっこいい"だけで判断せず、実際に目で見て触り、体験することが肝心です。」素材と真っ向から向きあう藤田さんの哲学を、この家は雄弁に物語っている。
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杉田さん、取材して頂きありがとうございました。
改めて取材を受けて記事にして頂くとシンプルな空間ながら
色々な試みをしていたなと当時の記憶が蘇ります。
どうもありがとうございました!
今度共どうぞよろしくお願い致します。
こちらこそ、いつもありがとうございます!引き続き、どうぞよろしくお願い致します。