屋根の形にはどういうものがある?種類とその特徴
家が完成すると、良く見ることが出来なくなってしまう屋根。実はさまざまな形があり、家を雨や風から守ってくれる大切な役割も担っています。そんな「家の傘」とも言える屋根の種類についてご紹介いたします。
安井俊夫
2019年8月9日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
私たちは雨が降ると傘を差します。濡れて風邪を引くのは嫌ですし、大切な服がダメになってしまうのも辛いからですが、でも傘が大き過ぎると重くて持ちにくくなってしまいます。また強い風に煽られても危険です。家の傘といえば「屋根」。今回は屋根の形や特徴を、それぞれのメリット・デメリットを交えながら、ご紹介します。
まずは基本的な七種類の屋根の形をご紹介します。
1.切妻(きりつま)屋根
切妻屋根は、一番スタンダードな屋根の形です。屋根頂部から下部に向かって、二つの面が建物を覆うように作られています。
この屋根が緩やかな曲線を描きながら反る形の屋根を「反り(そり)屋根」と言い、神社仏閣などに多く見られます。反対に少し膨らむように作られた屋根を「起り(むくり)屋根」と呼び、数寄屋建築の代表作でもある京都の桂離宮にも用いられています。「反り屋根」は中国から伝えられた建築様式で、「起り屋根」は日本独自の建築様式です。
1.切妻(きりつま)屋根
切妻屋根は、一番スタンダードな屋根の形です。屋根頂部から下部に向かって、二つの面が建物を覆うように作られています。
この屋根が緩やかな曲線を描きながら反る形の屋根を「反り(そり)屋根」と言い、神社仏閣などに多く見られます。反対に少し膨らむように作られた屋根を「起り(むくり)屋根」と呼び、数寄屋建築の代表作でもある京都の桂離宮にも用いられています。「反り屋根」は中国から伝えられた建築様式で、「起り屋根」は日本独自の建築様式です。
構造が単純なので、工事費用も比較的安価に作ることが可能です。屋根の角度を急にすることで、雨や雪に対しても強い屋根を造ることが可能で、屋根材を選ぶことなく葺くことも出来ます。
世界遺産にも指定されている白川郷の合掌造りの集落群も、屋根の形だけを見れば「茅葺きの切妻屋根」と言えるでしょう。
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世界遺産にも指定されている白川郷の合掌造りの集落群も、屋根の形だけを見れば「茅葺きの切妻屋根」と言えるでしょう。
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2.方形(ほうぎょう)屋根
方形屋根とは、四枚の屋根面が頂部の一点でぶつかる屋根の形です。四角錐(しかくすい)あるいはピラミッドを思い浮かべていただけると、分かりやすいかもしれませんね。平面が正方形の建物に多く採用されます。屋根の傾斜は比較的自由が利き、どの屋根材料を用いることも可能なことは、切妻屋根と同じです。
方形屋根とは、四枚の屋根面が頂部の一点でぶつかる屋根の形です。四角錐(しかくすい)あるいはピラミッドを思い浮かべていただけると、分かりやすいかもしれませんね。平面が正方形の建物に多く採用されます。屋根の傾斜は比較的自由が利き、どの屋根材料を用いることも可能なことは、切妻屋根と同じです。
3.寄棟(よせむね)屋根
寄棟屋根 は、四枚の屋根面で構成されている基本形から、写真のように複雑な形状をした平面にも対応できるデザイン的にも優れた屋根の形です。切妻屋根に次いでスタンダードな形で、屋根葺き材料を問わず採用できる点も同様です。
寄棟屋根 は、四枚の屋根面で構成されている基本形から、写真のように複雑な形状をした平面にも対応できるデザイン的にも優れた屋根の形です。切妻屋根に次いでスタンダードな形で、屋根葺き材料を問わず採用できる点も同様です。
4.入母屋(いりもや)屋根
伝統的な日本家屋に多く見られる形状で、切妻屋根と寄せ棟屋根の二つを組み合わせたような形をしています。重厚感を演出する屋根ですが、形が複雑なためメンテナンスに手間が掛かります。他の屋根と比べて工事費も高めです。屋根葺き材料は選びませんが、趣のある建物に採用されるケースが多いため、銅板や和風瓦といった比較的高価な材料を葺くケースが多いようです。
伝統的な日本家屋に多く見られる形状で、切妻屋根と寄せ棟屋根の二つを組み合わせたような形をしています。重厚感を演出する屋根ですが、形が複雑なためメンテナンスに手間が掛かります。他の屋根と比べて工事費も高めです。屋根葺き材料は選びませんが、趣のある建物に採用されるケースが多いため、銅板や和風瓦といった比較的高価な材料を葺くケースが多いようです。
5.招き(まねき)屋根
切妻屋根の変形した形の屋根です。2枚の屋根の長さと、その設けられている高さが違うために、招き猫の手が招くように見えることから、その名が付られています。この屋根の形は意外と多く採用されていますので、散歩する際には屋根の形に注意ながら歩いてみて下さい。
切妻屋根の変形した形の屋根です。2枚の屋根の長さと、その設けられている高さが違うために、招き猫の手が招くように見えることから、その名が付られています。この屋根の形は意外と多く採用されていますので、散歩する際には屋根の形に注意ながら歩いてみて下さい。
6.陸(りく)屋根
「りく屋根」あるいは「ろく屋根」と、読みます。傾斜の無い水平な面を「陸」と呼ぶため、平らな屋根のことを「陸屋根」と呼びます。イメージとすれば、ビルの屋上のように平らな屋根のことです。木造住宅には少ないかもしれませんが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅の場合、屋上利用を目的とし、陸屋根を採用する場合もあります。
「りく屋根」あるいは「ろく屋根」と、読みます。傾斜の無い水平な面を「陸」と呼ぶため、平らな屋根のことを「陸屋根」と呼びます。イメージとすれば、ビルの屋上のように平らな屋根のことです。木造住宅には少ないかもしれませんが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅の場合、屋上利用を目的とし、陸屋根を採用する場合もあります。
7.片流れ(かたながれ)屋根
屋根が一方向に向かって傾斜している形を、片流れ屋根と呼びます。構造が単純なため、費用も安価に作ることが可能です。南側に向けて傾斜させれば、太陽光発電のパネルを載せることにも適していると言えます。
屋根が一方向に向かって傾斜している形を、片流れ屋根と呼びます。構造が単純なため、費用も安価に作ることが可能です。南側に向けて傾斜させれば、太陽光発電のパネルを載せることにも適していると言えます。
大きく分けると以上の7つの形に分けられますが、他にもまだたくさんの種類がありますし、新しい建築材料の開発や技術・性能の向上により、名前を付けることが難しい屋根までもが誕生しています。
もともと屋根形状は、その角度とは密接な関係を持っていました。瓦屋根ならば4寸勾配(約21度)以上の角度を設けることが基本ですし、スレート葺きならば2.5寸勾配(約14度)は、必要という具合に。つまり家の外観デザインを考えるときに、屋根の形と使用する屋根葺き材料によって、最低限確保しなければならない角度が決まってしまうことがあるのです。
最近では技術の発展で1寸勾配(約6度)を下回る屋根を作ることも可能になりましたが、その製作意図やメンテナンスの費用なども考慮した屋根形状、そして材料の選択が必要だと言えます。
もともと屋根形状は、その角度とは密接な関係を持っていました。瓦屋根ならば4寸勾配(約21度)以上の角度を設けることが基本ですし、スレート葺きならば2.5寸勾配(約14度)は、必要という具合に。つまり家の外観デザインを考えるときに、屋根の形と使用する屋根葺き材料によって、最低限確保しなければならない角度が決まってしまうことがあるのです。
最近では技術の発展で1寸勾配(約6度)を下回る屋根を作ることも可能になりましたが、その製作意図やメンテナンスの費用なども考慮した屋根形状、そして材料の選択が必要だと言えます。
一昔前、まだ屋根に樋を設けて雨水を受け止めるという考え方をしていなかった頃は、玄関に向かって雨水が流れるような屋根の形を作ることは、避けていた時代がありました。
材料の性能だけに頼るのではなく、計画の段階から、ちょっとした形状に気を使うだけで、家は格段に快適になると思います。その辺りに関しても、建築家と相談してみて下さい。
梅雨の時期に考える、雨の日のための住宅デザイン
家の外観の記事をもっと読む
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