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外の風景と内部が一体化する、海を望む家
日々刻々、時間と共に変化する外の風景が、まるで建物のデザインの一部のように一体化している住宅です。

杉田真理子
2019年7月15日
兵庫県、明石市。丘の上に立つ家の前に立つと、微かに潮の匂いがする。ダイナミックな展望が楽しめる大きな窓と、広々としたバルコニーが印象的な住宅だ。見えるのは、波のきらめき、行き交う船、大迫力の明石海峡大橋と淡路島。交通量の多い国道に面しつつ、隣地や道路との高低差を計算し、「見たいけど、見られたくない」という贅沢な願いを叶えた住宅を訪ねた。
どんなHouzz?
・住まい手:夫婦、息子2人
・所在地:兵庫県明石市
・敷地面積:381.10㎡
・建築面積:86.89㎡
・延床面積:135.33㎡
・構造:在来木造2階建て
・設計:Studio tanpopo-gumi
・施工:ヨリフジ建設 株式会社
・竣工時期:2015年10月
・写真撮影:K’s Photo Works 野口兼史
共に明石出身の夫妻が地元の明石にマイホームを建てることに決めたのは、自然の成り行きだった。マンションに住みながら根気よく土地を探し、丘の上に位置する見晴らしの良いロケーションを見つけた。
イメージしたのは、リラックスのできるバケーションハウスのような暮らし。展望の良さをめいいっぱい生かし、明石の良さを十分に満喫できる家づくりを目指した。
・住まい手:夫婦、息子2人
・所在地:兵庫県明石市
・敷地面積:381.10㎡
・建築面積:86.89㎡
・延床面積:135.33㎡
・構造:在来木造2階建て
・設計:Studio tanpopo-gumi
・施工:ヨリフジ建設 株式会社
・竣工時期:2015年10月
・写真撮影:K’s Photo Works 野口兼史
共に明石出身の夫妻が地元の明石にマイホームを建てることに決めたのは、自然の成り行きだった。マンションに住みながら根気よく土地を探し、丘の上に位置する見晴らしの良いロケーションを見つけた。
イメージしたのは、リラックスのできるバケーションハウスのような暮らし。展望の良さをめいいっぱい生かし、明石の良さを十分に満喫できる家づくりを目指した。
設計を担当したStudio tanpopo-gumiの建築家・坂口弘樹さんは、この住宅から車で10分ほどの距離に事務所を構えている。
ご主人は「家づくりでは、距離が近く、土地勘がある人にお願いするのがやはり一番だと思います。ちょっとした不安や確認があるときも、この距離感なら安心ですよね」と話す。坂口さんに家づくりを依頼した決め手は、人柄と、明石のことをよく知っている点だったという。
具体的な要望が細かくあった夫婦は、建築家との打ち合わせに、1年ほど費やした。妥協のないコミュニケーションを根気の良く続けたことが、現在の美しい住まいの基礎となった。
丘の上の家を訪れ、玄関を開けると、潮の匂いがする明石の風がすっと吹き抜けた。風通しがよく、まだ屋外にいるかのような、清々しい玄関口。土足で上がれるスペースを広々と設け、向かって正面のドアから更に庭に直接出入りできるようにした。
庭には屋外用階段もついており、更にここからテラスへ出入りできる。来客が多い家庭のため、家族用の玄関は、あえて別に設けた。家族用の玄関は、駐車場から直接出入りができ、収納スペースもついている。子供がいる家庭ではどうしても散らかりがちな玄関も、家族用を別に設けることで、来客用玄関を常にすっきりと保つことができる。
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ご主人は「家づくりでは、距離が近く、土地勘がある人にお願いするのがやはり一番だと思います。ちょっとした不安や確認があるときも、この距離感なら安心ですよね」と話す。坂口さんに家づくりを依頼した決め手は、人柄と、明石のことをよく知っている点だったという。
具体的な要望が細かくあった夫婦は、建築家との打ち合わせに、1年ほど費やした。妥協のないコミュニケーションを根気の良く続けたことが、現在の美しい住まいの基礎となった。
丘の上の家を訪れ、玄関を開けると、潮の匂いがする明石の風がすっと吹き抜けた。風通しがよく、まだ屋外にいるかのような、清々しい玄関口。土足で上がれるスペースを広々と設け、向かって正面のドアから更に庭に直接出入りできるようにした。
庭には屋外用階段もついており、更にここからテラスへ出入りできる。来客が多い家庭のため、家族用の玄関は、あえて別に設けた。家族用の玄関は、駐車場から直接出入りができ、収納スペースもついている。子供がいる家庭ではどうしても散らかりがちな玄関も、家族用を別に設けることで、来客用玄関を常にすっきりと保つことができる。
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個室と収納スペースがまとまった1階。寝室として使われる和室と子供部屋 2室、家族用のウォークインクローゼットとトイレがある。全ての個室のドアを閉めると、廊下としてすっきり見せることができる。
クローゼットの写真を見る
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2人の息子が使用する子供部屋は、現在、ひとつの部屋として使用しているが、将来的に2部屋に仕切れるよう、間取りを調整した。「何十年と暮らす住宅だからこそ、子供の成長やライフステージに合わせて、柔軟に使い方を変えられることが大切だと思っています。5-10年後をどう過ごしているか、常にイメージしながら設計しています」と坂口さん。
子供部屋と2階のリビングダイニングとは、スケルトン階段を介して距離が近い。階が違っても声が良く届き、子供部屋と家族のための空間が近しくなるよう意識して設計をした。
子供部屋と2階のリビングダイニングとは、スケルトン階段を介して距離が近い。階が違っても声が良く届き、子供部屋と家族のための空間が近しくなるよう意識して設計をした。
階段をあがると、この家の主役であるリビングダイニングが広がる。行き止まりがなく、回遊性のある空間を目指した。「玄関から入って、1階は一見すると普通の住宅。階段をあがると、明石海峡と海をパノラマで望むリビングダイニング。序奏からクライマックスまでの、家のストーリー性をイメージしました」と坂口さん。
リビングダイニングの魅力はもちろん、明石海峡と海をパノラマで望む窓と、大きなバルコニーだ。「まずはロケーションを最大限に生かすことを意識しました」と坂口さん。年月に合わせて味わいが増すチーク床が、暖かな雰囲気で空間をまとめている。「ピカピカの人工物でなく、月日と共に変化する、本物の材質ならではの味わいが魅力です」(坂口さん)
大きなスライド式のガラス窓がリビングダイニングとバルコニーを緩やかにつなぎ、室内にいながら半屋外にいるような開放感を感じることができる。
リビングの写真を見る
大きなスライド式のガラス窓がリビングダイニングとバルコニーを緩やかにつなぎ、室内にいながら半屋外にいるような開放感を感じることができる。
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キッチンは、通常の床よりも少し小上がりになっている。視線を少し高めの位置に設定することで、料理をしながら景色を楽しめる仕掛けだ。ダイニングテーブルの様子を確認するのにも最適な高さで、リビング側からは中が覗き込めないため、来客時に嬉しい。
家電など、生活感の出るものは全て奥にあるパントリーに隠した。吊り棚などの収納スペースも検討したが、こちらもすっきりとした見た目を重視し、シンプルなカウンタースペースへと変更。あくまでも生活感のない、清潔感のあるキッチンを目指した。
家電など、生活感の出るものは全て奥にあるパントリーに隠した。吊り棚などの収納スペースも検討したが、こちらもすっきりとした見た目を重視し、シンプルなカウンタースペースへと変更。あくまでも生活感のない、清潔感のあるキッチンを目指した。
キッチンから向かって左手には、緩やかに仕切られた和室がある。普段は子供が自由に遊べる場所として使用されており、料理をしながら子供の様子を確認できる。
現在棚として使用されている壁付きカウンターは、将来的に下部の床を外して足を入れ、座って使える勉強用のデスクへと変更できる。ここにも、子供の成長に合わせて変化する家の柔軟性がある。リビングから和室へと続く段差に座ると、ちょうど明石の空を望める。椅子、ソファ、畳、段差など、様々な座り方があるのが、このリビングの良い特徴だ。
現在棚として使用されている壁付きカウンターは、将来的に下部の床を外して足を入れ、座って使える勉強用のデスクへと変更できる。ここにも、子供の成長に合わせて変化する家の柔軟性がある。リビングから和室へと続く段差に座ると、ちょうど明石の空を望める。椅子、ソファ、畳、段差など、様々な座り方があるのが、このリビングの良い特徴だ。
リビングダイニングとほぼ同じ面積で設計したバルコニー。外からの視線をカットできるよう、西日の入り方や周囲の環境を綿密に計算したうえで、壁の高さや屋根の位置を工夫した。バルコニーの壁の高さも、プライバシーと展望のバランスを計算したうえで決定した。
目の前には交通量の多い国道があるが、わざわざ下を覗き込まなければ、それにも全く気づかないほどだ。階下には、バルコニーと屋外用階段で繋がる庭が広がる。
目の前には交通量の多い国道があるが、わざわざ下を覗き込まなければ、それにも全く気づかないほどだ。階下には、バルコニーと屋外用階段で繋がる庭が広がる。
2階には、バルコニーから直接出入りのできる南向きのバスルームもある。バスルームに大きく窓をとってもプライバシーが気にならないのは、丘の上の立地ならでは。海を望みながら入る浴槽は、きっと気持ちが良いに違いない。
「3年ほど住んでみて、『ここ、いらなかったな』という無駄なスペースが一切ないことに気づきました。家づくりに関する後悔がひとつもないのが嬉しいです」と奥さま。
明石への土地勘がある建築家だからこそ出来た、「土地の空気」をうまく掴んだ住宅。地域と周辺環境への理解とリスペクトがあったからこそ生まれた、こだわりの住まいだ。
ほかのHouzzツアー(お宅訪問)の記事を読む
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明石への土地勘がある建築家だからこそ出来た、「土地の空気」をうまく掴んだ住宅。地域と周辺環境への理解とリスペクトがあったからこそ生まれた、こだわりの住まいだ。
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