自然なかたちを建築する。中庭のある平屋で、自然と繋がる暮らし
木箱のような外観と、3つの中庭が印象的な住宅。風と光と木漏れ日が重なる、自然と共存できる住まいです。
杉田真理子
2019年7月28日
兵庫県明石市。明石城跡から続く丘陵地を切り開いた、閑静な住宅地にこの家は立つ。木箱のような佇まいの家の前に立つと、木製のルーバーから中庭の木々が透けて見え、室内がどうなっているのかを想像して、思わずわくわくしてしまう。「自然とどう向き合うのか」という問いを大切にしている事務所だから実現できる、身近に自然を取り込んだ住宅を訪ねた。
どんなHouzz?
・所在地:兵庫県明石市
・住まい手:夫妻、子ども3人
・敷地面積:172.81 ㎡
・建築面積:82.70 ㎡
・延床面積:81.07 ㎡
・構造:木造
・基本設計・現場監理:arbol一級建築士事務所
・実施設計:arbol一級建築士事務所 + はすいけ
・造園:荻野寿也景観設計
・照明:株式会社パルコスペースシステムズ
・家具:萬代製作所
・施工: 株式会社笹原建設
・竣工時期:2017年1月〜2018年07月
・写真撮影:下村康典
長く転勤が続いていた夫妻は、ようやく一箇所に腰を落ち着けられることになったタイミングで、夫の実家である明石に居を構えることに決めた。「木を使い、風や光が感じられる、自然を取り込んだ家にしたいとずっと思っていました」と奥さまは当時を振り返る。インターネットや雑誌などを参考に、1年ほど建築家や工務店を探した。最終的に、40代で世代も近い建築家・堤さんの人柄に惹かれ、依頼をすることにした。
・所在地:兵庫県明石市
・住まい手:夫妻、子ども3人
・敷地面積:172.81 ㎡
・建築面積:82.70 ㎡
・延床面積:81.07 ㎡
・構造:木造
・基本設計・現場監理:arbol一級建築士事務所
・実施設計:arbol一級建築士事務所 + はすいけ
・造園:荻野寿也景観設計
・照明:株式会社パルコスペースシステムズ
・家具:萬代製作所
・施工: 株式会社笹原建設
・竣工時期:2017年1月〜2018年07月
・写真撮影:下村康典
長く転勤が続いていた夫妻は、ようやく一箇所に腰を落ち着けられることになったタイミングで、夫の実家である明石に居を構えることに決めた。「木を使い、風や光が感じられる、自然を取り込んだ家にしたいとずっと思っていました」と奥さまは当時を振り返る。インターネットや雑誌などを参考に、1年ほど建築家や工務店を探した。最終的に、40代で世代も近い建築家・堤さんの人柄に惹かれ、依頼をすることにした。
限られた敷地面積ではあったが、以前から平屋への憧れがあったという。試行錯誤のすえ、敢えて平屋に3つの中庭を設けるという大胆な構造となった。木箱のように木製のルーバーで建物を囲むことで、プライバシーを確保しながらも、風、光、木々のこもれびなど、身近に自然を取り込んだ豊かな住まいを目指した。「春は中庭にピンクのお花が一面に咲き、大変綺麗でした」と奥さま。
玄関を開けると、ふわりと木の匂いがする。無垢材を使用しているからこその家の香りだ。「食べ物と同じように、出来るだけ人工物や添加物的なものが入ったものは使わずに、いつも自然素材を使用して家作りをすることにこだわっています」と堤さんは説明する。玄関には、オリジナルで造作した薪ストーブ。玄関から入って右手にすぐ、ひとつめの中庭があり、室内にいながらまだ室外にいるかのような、内と外が曖昧なデザインとなっている。
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玄関を開けると、ふわりと木の匂いがする。無垢材を使用しているからこその家の香りだ。「食べ物と同じように、出来るだけ人工物や添加物的なものが入ったものは使わずに、いつも自然素材を使用して家作りをすることにこだわっています」と堤さんは説明する。玄関には、オリジナルで造作した薪ストーブ。玄関から入って右手にすぐ、ひとつめの中庭があり、室内にいながらまだ室外にいるかのような、内と外が曖昧なデザインとなっている。
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玄関を抜けてすぐのリビングダイニングは、3つの中庭に囲まれ自然光がふんだんに入り込む。床は、端から端まで伸びるスギ板の無垢材。木材をふんだんに使用した室内には、柔らかな温かみがある。ダイニングテーブルとソファは、arbol一級建築士事務所と家具職人が共同でデザインした。「室内も含めてトータルでコーディネートしていただくことで、自分たちでは思いつかなかった住まいが実現しました」と奥さま。
玄関から入って右手の庭には、屋外用水道がついている。釣りが趣味というご主人が、外で釣り道具を洗い、魚を裁くスペースとしても使用されている。
玄関から入って右手の庭には、屋外用水道がついている。釣りが趣味というご主人が、外で釣り道具を洗い、魚を裁くスペースとしても使用されている。
造作のキッチンは、表面をシナ合板で統一し、すっきりとした雰囲気。冷蔵庫を隠してしまえる扉をつけることで、来客時も生活感なくすっきりとした見た目になるようにした。カウンターの高さを使い手の好みに合わせて調整するなど、造作らしく細かい部分にまで気を配った。キッチンとダイニングテーブルまでの距離も計算されており、ひとつひとつの動作に無駄がないよう、機能的な空間となっている。
木洩れ日が差し込むリビングダイニング。季節や時間の移ろいで、異なる表情を楽しめる。中庭の植物は全て、造園家にデザインを担当してもらった。中庭には、収納スペースも完備。外用のホースや掃除用具などをすっきりと収納できる。また、雨の日も水がたまらないように、排水溝を砂利の下に隠して配置した。庇を効果的に配置することで、雨の日も雨水が室内に侵入しにくい。美しいだけでなく、機能的な空間に仕上がった。
テラス・中庭の写真をみる
テラス・中庭の写真をみる
リビングダイニングに隣接する琉球畳の和室は、中庭ひとつを挟んで玄関の反対側に位置する。二方向を中庭に囲まれ、自然光が差し込む開放感のある空間だ。小上がりにすることで、仕切りをつけることなしにリビングダイニングとゾーニングを緩やかに分けた。日中はピアノの練習やライブラリースペース、夜は寝室として使用している。夜は月明かりが美しく、ここで就寝するのを、子供達も大変気に入っているという。
リビングダイニングから奥に進むと、まっすぐ伸びる廊下が現れる。右手の壁面は全面収納に、左手に家族それぞれの個室を配置した。個室の収納スペースを最小限に抑え、廊下の壁面収納に家族全員分の荷物をまとめて配置することで、個室もすっきりと使うことができる。
「ドアに取っ手がないので、廊下を歩く際に引っかかることがありません。子供もすっと簡単に開け閉めができ、掃除も楽で、非常に助かっています」と奥さま。ランドリールームとも近く、畳んだ洗濯物をそのまま仕舞えるなど、家事が楽になるよう工夫した。
「ドアに取っ手がないので、廊下を歩く際に引っかかることがありません。子供もすっと簡単に開け閉めができ、掃除も楽で、非常に助かっています」と奥さま。ランドリールームとも近く、畳んだ洗濯物をそのまま仕舞えるなど、家事が楽になるよう工夫した。
子供部屋であり寝室でもある個室は、すっきりとナチュラルな雰囲気が美しい。各部屋は家全体の冷暖房システムと繋がっており、個室でも常に適温を保つことができる。
照明は、照明デザイナーが細かく計算したうえでデザインした。広々と設けられた中庭から自然光が入り込むおかげで、昼間は照明に頼る必要がない。夜は雰囲気が良く、中庭が室内から美しく見えるよう工夫した。グレアレスタイプで、窓ガラスに照明が映り込みにくい。
「庭が一番美しく見えるのは、やはり月明かり」という造園家の意図を汲み取り、中庭の照明は、一般的な下からのアッパーライトではなく、上から下を照らすスポットライトを導入した。
庭の照明の写真をみる
「庭が一番美しく見えるのは、やはり月明かり」という造園家の意図を汲み取り、中庭の照明は、一般的な下からのアッパーライトではなく、上から下を照らすスポットライトを導入した。
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外構はあくまでもシンプルに、それでいてよそよそしくない佇まいを、植栽に気を使って仕上げた。施工を担当した工務店は、普段神社仏閣の施工を行なっているため、木の扱いが上手なのだそうだ。異なる種類の木材で幅もひとつひとつ違う素材を組み合わせ、外壁とした。
「これらの無垢材は時間が立つと次第にグレーになります。木の種類が異なるため、濃淡や模様の違いを楽しめます」と堤さん。年月の経過に伴い、深まる味わいを楽しめることを意識した。「『こうしておけばよかった』という要素が一切ない仕上がりで、毎日の生活がとても楽しいです」という奥さま。住宅街の中心にありながら、自然に寄り添う、無理のないデザイン。人間と自然の幸せな関係性のあり方を、垣間見たような気がした。
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「これらの無垢材は時間が立つと次第にグレーになります。木の種類が異なるため、濃淡や模様の違いを楽しめます」と堤さん。年月の経過に伴い、深まる味わいを楽しめることを意識した。「『こうしておけばよかった』という要素が一切ない仕上がりで、毎日の生活がとても楽しいです」という奥さま。住宅街の中心にありながら、自然に寄り添う、無理のないデザイン。人間と自然の幸せな関係性のあり方を、垣間見たような気がした。
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