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家の中の「四つ角」が家族をゆるやかにつなぐ住まい
キューブ型の家の四方に、バランス良く部屋が配置された住宅。細部まで計算して作り上げた構造が、すっきりとした均衡を生み出しています。
杉田真理子
2019年8月2日
大阪府堺市、ニュータウン開発に取り残された、なだらかな丘の中腹。四角い家型の外観が可愛らしい家の前に立つと、堺市の街並みを見渡せる。建築家のこだわりが詰め込まれた、「四つ角の家」を訪ねた。
どんなHouzz?
所在地:大阪府堺市
住まい手:夫妻、5歳の息子
敷地面積:246.55㎡
建築面積:65.61㎡
延床面積:110.21㎡
構造:木造2階建て
意匠・設備設計監理:山本嘉寛建築設計事務所 山本嘉寛 三橋香織
構造設計監理:ワークショップ 安江一平
施工:マサキ工務店
竣工時期:2017年4月
子育てが始まったタイミングでマイホームづくりをスタートさせたご夫妻。市内のマンションをリノベーションすることなども考えたが、昔から一軒家への憧れがあり、仕事で縁があった堺市に家を持つこと決心した。建築家・山本さんは、ご主人と出身大学が一緒。「建築の先生、といった構えた雰囲気がなく、人柄が好きで山本さんに頼みたいと思いました」とご主人は当時を振り返る。
所在地:大阪府堺市
住まい手:夫妻、5歳の息子
敷地面積:246.55㎡
建築面積:65.61㎡
延床面積:110.21㎡
構造:木造2階建て
意匠・設備設計監理:山本嘉寛建築設計事務所 山本嘉寛 三橋香織
構造設計監理:ワークショップ 安江一平
施工:マサキ工務店
竣工時期:2017年4月
子育てが始まったタイミングでマイホームづくりをスタートさせたご夫妻。市内のマンションをリノベーションすることなども考えたが、昔から一軒家への憧れがあり、仕事で縁があった堺市に家を持つこと決心した。建築家・山本さんは、ご主人と出身大学が一緒。「建築の先生、といった構えた雰囲気がなく、人柄が好きで山本さんに頼みたいと思いました」とご主人は当時を振り返る。
焼杉のシックな外壁と、カラフルな屋根のバランスが印象的な外観。シンプルなキューブ型に三角屋根の、アイコニックな家型だ。窓もほとんどが正方形に切り取られている。「小高い場所にありますが、三方を高台と近隣住宅に囲われている立地なので、眺望の良さを取り入れつつ、プライバシーを守るための設計を工夫しました」と山本さん。眺望がよく、山奥ではないが程よく緑のある、バランスの取れた立地が魅力だ。焼き杉を鎧張にした外壁は、どっしりとした高級感がある。
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玄関の扉を開けると、天井まで伸びる背の高い収納スペースが印象的な、すっきりとしたエントランスが広がる。右手に進むと室内へ、そのまま奥に進むと、裏口と土間の収納部屋がある。
土間は自転車や雨具、掃除用具などをたっぷり収納できるスペース。個室として閉じず、敷居を挟んで室内と緩やかに繋がるデザインだ。写真の中央にある白いシンプルな扉を開けると、広々とした床下収納となっており、ご主人のコレクションや作業スペースとして活用されている。
室内に入ると、仕切りのない、白が基調となった空間が広がる。取っ手などところどころにアイアンが使用され、全体の雰囲気をシックに引き締めている。
室内に入ってすぐ、2階のダイニングキッチンへ続く階段は、奥さまの意見であえて広めに作ることにした。階段に座り、目の前の窓から庭を眺めるのがお気に入りだという。階段の横に位置するリビングには仕切りがなく、自然と家族が集まりやすい。フローリングは、ナラ材にウォールナット色の塗料を施し、程よい色合いに仕上げた。
室内に入ってすぐ、2階のダイニングキッチンへ続く階段は、奥さまの意見であえて広めに作ることにした。階段に座り、目の前の窓から庭を眺めるのがお気に入りだという。階段の横に位置するリビングには仕切りがなく、自然と家族が集まりやすい。フローリングは、ナラ材にウォールナット色の塗料を施し、程よい色合いに仕上げた。
階段を登ると、家の中心となるダイニングキッチン。この空間を起点として、上部四方に四角い部屋が分散して配置されるレイアウトとなっている。そのため、ダイニングキッチンには、路地裏の四つ角のような雰囲気がある。「それぞれ個室で区切られていると、ひとつの場所にこもってしまいがちになるのが心配でした。ここは仕切りがなく全てが繋がっているので、気軽に行き来し、緩やかに回遊できるのが魅力です」とご主人。
「天井の形は綺麗に見せたかったので、照明や光の取り込み方には工夫をしました。ダウンライトなどを天井に埋め込むと不恰好になると思ったので、キッチンにはダクトレール照明、それ以外は四つの部屋それぞれの壁の裏に、一つづつ照明を忍ばせました」と山本さんは説明する。
「天井の形は綺麗に見せたかったので、照明や光の取り込み方には工夫をしました。ダウンライトなどを天井に埋め込むと不恰好になると思ったので、キッチンにはダクトレール照明、それ以外は四つの部屋それぞれの壁の裏に、一つづつ照明を忍ばせました」と山本さんは説明する。
ダイニングキッチンからは、階下のリビングを含め、全ての部屋がオープンに繋がっている。「キッチンで料理をしていても、首を伸ばせばリビングの様子を上から見渡せるので、子供の様子を確認するのに役立っています」と奥さま。思春期に入って、子供がリビングを通らずに個室に入ってしまうのは避けたかった。オープンなレイアウトには、どこにいても家族の気配を感じられるように、という思いがあったという。
キッチンに向かって前方、エキスパンドメタルを使用したメッシュ状の階段を登った先に、四つの個室のひとつを構成するバルコニーがある。大きく切り取られた窓から自然光が入り込み、室内全体を明るく照らす。「将来的にはウッドデッキを敷くなどして、セカンドリビングのように使用できたらと思っています」と奥さま。2階なので、虫も入り込みにくい。右手に進むと、収納部屋とバスルームがある。
広々としたシンクとタイルの組み合わせが美しい、洗面所と一続きのバスルーム。外から覗き込めない位置を計算して広々と窓をとり、開放的な雰囲気を醸し出している。
ダイニングキッチンからバルコニーとは反対側の階段を登ると、4つの個室のうち、残りの2室へアクセスできる。天窓から空が見渡せる寝室は、息子さんにも好評なのだそう。天井は、斜めに傾斜した三角形の角が、四つ角でピタリと合わさるようにデザインされており、現代アートのような雰囲気を生み出している。
すっきりとした和室はゲストルームなどに使用する。一枚板のテーブルが部屋に品格を与えている。
和室の床の間の目の前には、大きく正方形にくり抜かれた室内窓。バルコニーの窓と上手く重なるよう計算されており、そこから桜の木が見渡せる。キャンバス上の絵のような風景が、和室全体に趣と華やかさをプラスしてくれる。
このように、大胆に刳り貫き式の室内窓を作ることで、どの部屋にいても、個室のなかにいながら外にいるような、緩やかに外と繋がる空間となった。「住んでからも全く後悔のないデザインで、日々の暮らしが楽しいです」と奥さま。正方形平面を基調にデザインをまとめ、4部屋を各頂点から派生させるというユニークなアイデアが、全体の均衡が取れた美しい住まいを生み出した。
日本のHouzzツアー(お宅訪問)をもっと読む
このように、大胆に刳り貫き式の室内窓を作ることで、どの部屋にいても、個室のなかにいながら外にいるような、緩やかに外と繋がる空間となった。「住んでからも全く後悔のないデザインで、日々の暮らしが楽しいです」と奥さま。正方形平面を基調にデザインをまとめ、4部屋を各頂点から派生させるというユニークなアイデアが、全体の均衡が取れた美しい住まいを生み出した。
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