「住まいのバリアフリー」で家族に配慮した家をつくるには?
言葉としては浸透している「バリアフリー住宅」ですが、住宅に採用する時に、具体的にはどのようにすれば良いのでしょう。またその際の注意点やポイントなどを、具体例を交えてご説明します。
安井俊夫
2019年6月5日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
「バリアフリー住宅」とは家の中での事故を防ぎ、安全で快適に暮らすことを目的とし、危険性のある「バリア= 障害」に対して配慮された家のことを言います。主にお年寄りや子供、あるいは障害を持つ方への配慮ですが、弱者に対して優しい家は家族みんなに優しい家となります。
玄関には転倒への配慮を
まずは家の入口でもある玄関ですが、玄関は靴を履き替える場所で、その際に姿勢が不安定になり転ぶ危険性があります。そこで手摺を設け転倒防止に配慮します。
また座って靴を履けるような椅子やベンチを設けることも、安全に繋がります。椅子に座った時には立ち上がりやすい位置に、手摺が設けられていると、より安全な玄関となるでしょう。
転倒や躓きによるケガは、家庭内での事故の中で一番多く、その理由は圧倒的にちょっとした段差によるものです。段差を解消することは、バリアフリー住宅への第一歩と言えます。
まずは家の入口でもある玄関ですが、玄関は靴を履き替える場所で、その際に姿勢が不安定になり転ぶ危険性があります。そこで手摺を設け転倒防止に配慮します。
また座って靴を履けるような椅子やベンチを設けることも、安全に繋がります。椅子に座った時には立ち上がりやすい位置に、手摺が設けられていると、より安全な玄関となるでしょう。
転倒や躓きによるケガは、家庭内での事故の中で一番多く、その理由は圧倒的にちょっとした段差によるものです。段差を解消することは、バリアフリー住宅への第一歩と言えます。
車椅子への配慮は段差の解消と広さの確保
ご家族が車椅子を利用している場合には、車椅子の利用方法により考え方が変わってきます。まず外では外用の車椅子を利用し、帰って来た際に室内用の車椅子に乗り換える場合には介助者の助けが必要となります。その場合には段差の有無よりも、介助しやすい広さの確保の方が重要となります。
車椅子を乗り換えることなくタイヤだけを拭き、そのまま室内に入る場合には、玄関の段差を無くし、玄関の目の前に部屋を配置したり、あるいはホームエレベーターを設置するなどの配慮が必要でしょう。
写真の家は玄関の目の前に、ホームエレベータを設置した狭小住宅の実例です。
建築家を探す
ご家族が車椅子を利用している場合には、車椅子の利用方法により考え方が変わってきます。まず外では外用の車椅子を利用し、帰って来た際に室内用の車椅子に乗り換える場合には介助者の助けが必要となります。その場合には段差の有無よりも、介助しやすい広さの確保の方が重要となります。
車椅子を乗り換えることなくタイヤだけを拭き、そのまま室内に入る場合には、玄関の段差を無くし、玄関の目の前に部屋を配置したり、あるいはホームエレベーターを設置するなどの配慮が必要でしょう。
写真の家は玄関の目の前に、ホームエレベータを設置した狭小住宅の実例です。
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廊下の手摺は転倒防止と道案内役
玄関から部屋に行く際に通る廊下に、手摺を設けることも大切です。それは転倒防止の意味だけでなく、夜間にトイレに立った際にも、手摺を頼りに躓いたりすることなく辿り着くことが出来るからです。そのためには手摺が途切れることなく、一直線に設けられていることや、足元の明るさを確保するために人感センサー式の足元灯などを併設すると、より安全になります。
また車椅子を利用する際には、90cmの有効幅が確保できると理想的です。同時に車椅子で部屋に入る際に、安全に展開できるように扉の形状や開き勝手を考慮しておくことが大切です。
車椅子にやさしい、障害物と角のない明るい住まい
玄関から部屋に行く際に通る廊下に、手摺を設けることも大切です。それは転倒防止の意味だけでなく、夜間にトイレに立った際にも、手摺を頼りに躓いたりすることなく辿り着くことが出来るからです。そのためには手摺が途切れることなく、一直線に設けられていることや、足元の明るさを確保するために人感センサー式の足元灯などを併設すると、より安全になります。
また車椅子を利用する際には、90cmの有効幅が確保できると理想的です。同時に車椅子で部屋に入る際に、安全に展開できるように扉の形状や開き勝手を考慮しておくことが大切です。
車椅子にやさしい、障害物と角のない明るい住まい
階段を降りる時の利き手側に手摺を設置、段鼻を目立たせる配慮を
階段での事故は、家の中で三番目の多さです。そして階段を上がる時よりも、降りてくる時の方が危険と言うデータがあります。事故を防ぐためには、降りる際に利き手でしっかりと手摺が掴めるよう、階段の廻り方や手摺の位置、素材、高さを工夫する必要があります。
また踏板の段鼻(先端)には、滑り止めの設置や色を変えるなど注意を促す工夫をして、安全への配慮も忘れずに。階段の昇降を補助する器具もあるので、新築時から将来のことを想定しておくことも良いかもしれません。
階段での事故は、家の中で三番目の多さです。そして階段を上がる時よりも、降りてくる時の方が危険と言うデータがあります。事故を防ぐためには、降りる際に利き手でしっかりと手摺が掴めるよう、階段の廻り方や手摺の位置、素材、高さを工夫する必要があります。
また踏板の段鼻(先端)には、滑り止めの設置や色を変えるなど注意を促す工夫をして、安全への配慮も忘れずに。階段の昇降を補助する器具もあるので、新築時から将来のことを想定しておくことも良いかもしれません。
居室への配慮で家は格段に安全になる
家の中で一番事故が多いのは、以外にも居室です。居室で多いのは転倒事故ですが、これは床材の違いによって生じた段差に躓く場合がもっとも多く、次いで床に敷いたラグに乗り滑るようなケースです。
また電気コードに足を引っ掛けて転倒することもあるので、段差を解消することは勿論ですが、コンセントの位置を考えた家電の配置計画なども重要となります。
車椅子を利用する場合には、車椅子のまま食事が出来るようなテーブルの配置を工夫したり、小上がりの部屋を設け、その段差を椅子として利用できるように工夫すれば、その度に車椅子に乗り換える必要も無くなり、事故への危険性が減るでしょう。
家の中で一番事故が多いのは、以外にも居室です。居室で多いのは転倒事故ですが、これは床材の違いによって生じた段差に躓く場合がもっとも多く、次いで床に敷いたラグに乗り滑るようなケースです。
また電気コードに足を引っ掛けて転倒することもあるので、段差を解消することは勿論ですが、コンセントの位置を考えた家電の配置計画なども重要となります。
車椅子を利用する場合には、車椅子のまま食事が出来るようなテーブルの配置を工夫したり、小上がりの部屋を設け、その段差を椅子として利用できるように工夫すれば、その度に車椅子に乗り換える必要も無くなり、事故への危険性が減るでしょう。
車椅子にも対応した流し台の設置
台所は家の中で二番目に事故が多い場所です。台所にはラグが敷いてあることも多く、また濡れて滑りやすくなっていることから、転倒事故が多いのです。ですから流し台の前に敷く床材には滑り難いものを選択し、ラグなども敷くことを避ける方が良いでしょう。またガスレンジよりもIHレンジの方が、視力の低下したお年寄りが料理をする場合には安全と言えます。
車椅子を利用する場合には、流し台の下に足が入るような流し台の設置が、好ましいと言えます。流し台の高さに関しても、一般的な流し台よりも低くなります。目安とすれば車椅子に座った状態での膝の高さより16cmから20cm程度の高さが適当と言われていますが、この辺りは建築家と十分に相談した上で決められると良いでしょう。
車椅子でもすべてに手が届くキッチン。料理が楽しくなるリノベーション
台所は家の中で二番目に事故が多い場所です。台所にはラグが敷いてあることも多く、また濡れて滑りやすくなっていることから、転倒事故が多いのです。ですから流し台の前に敷く床材には滑り難いものを選択し、ラグなども敷くことを避ける方が良いでしょう。またガスレンジよりもIHレンジの方が、視力の低下したお年寄りが料理をする場合には安全と言えます。
車椅子を利用する場合には、流し台の下に足が入るような流し台の設置が、好ましいと言えます。流し台の高さに関しても、一般的な流し台よりも低くなります。目安とすれば車椅子に座った状態での膝の高さより16cmから20cm程度の高さが適当と言われていますが、この辺りは建築家と十分に相談した上で決められると良いでしょう。
車椅子でもすべてに手が届くキッチン。料理が楽しくなるリノベーション
浴室は手摺の設置と段差の解消、そして扉幅を広げることを忘れずに
浴室内で気を付けるべきは、やはり転倒防止です。脱衣室と浴室に段差がある場合には、その段差での躓きがあります。浴室内では手摺の設置と、滑り難い床材の選定が大切ですが、ユニットバスが増えている近年は、どちらに対しても比較的容易に対応できると思います。
また車椅子を利用されるご家族を、ご自宅で入浴させたいとリフォームを考えるには、椅子に座らせたまま、洗い場から浴槽内へと手動で移動させる製品もあります。これは一定の補強が必要なため、ユニットバスを新設しなければなりませんが、介助する側の負担は格段に減ります。つまり介助される側の精神的な負担も、減ることになります。
浴室内で気を付けるべきは、やはり転倒防止です。脱衣室と浴室に段差がある場合には、その段差での躓きがあります。浴室内では手摺の設置と、滑り難い床材の選定が大切ですが、ユニットバスが増えている近年は、どちらに対しても比較的容易に対応できると思います。
また車椅子を利用されるご家族を、ご自宅で入浴させたいとリフォームを考えるには、椅子に座らせたまま、洗い場から浴槽内へと手動で移動させる製品もあります。これは一定の補強が必要なため、ユニットバスを新設しなければなりませんが、介助する側の負担は格段に減ります。つまり介助される側の精神的な負担も、減ることになります。
トイレに設置する手摺は便器から立ち上がる時に、しっかりと掴まれる位置に設置することが大切です。車椅子での利用を考えるなら、洗面器の位置と高さへの配慮が必要ですし、車椅子が回転できる広さがあれば理想的です。
「住まいのバリアフリー」を目指して
こうして「バリアフリー住宅」をあらためて見直すと、手摺の設置や段差の解消、扉や廊下の幅と言った具合に、建物に設置する部品や形状に関して、ご説明する点が多かったことに気付きます。また室内にだけ注目してご紹介しましたが、そもそも家に入るための道路や駐車場からのスロープの設置なども必要ですね。
ですがなによりも大切なことは「バリアフリー住宅」を造ることが目的ではなく、「住まいのバリアフリー」を考えることだと思います。それは手摺や段差の解消と言ったものの設置は勿論大切ですが、その前に家族に配慮した部屋の配置や動線計画、水廻りの使い勝手と言った基本的なコンセプトから配慮しなければ、本当の意味でのバリアフリー住宅にはならないと言うことです。
バリアフリー住宅へのリフォーム工事においては、補助金制度や固定資産税の減額措置をしてくれる行政庁もあるので、その辺りも含めて建築家とジックリご相談の上、あなたとあなたのご家族に優しい「バリアフリー住宅」を、ご検討下さい。
「ユニバーサルデザイン」の基礎知識:「バリアフリー」とどう違う?
こうして「バリアフリー住宅」をあらためて見直すと、手摺の設置や段差の解消、扉や廊下の幅と言った具合に、建物に設置する部品や形状に関して、ご説明する点が多かったことに気付きます。また室内にだけ注目してご紹介しましたが、そもそも家に入るための道路や駐車場からのスロープの設置なども必要ですね。
ですがなによりも大切なことは「バリアフリー住宅」を造ることが目的ではなく、「住まいのバリアフリー」を考えることだと思います。それは手摺や段差の解消と言ったものの設置は勿論大切ですが、その前に家族に配慮した部屋の配置や動線計画、水廻りの使い勝手と言った基本的なコンセプトから配慮しなければ、本当の意味でのバリアフリー住宅にはならないと言うことです。
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情報をいただき、ありがとうございます。実例があり、見て、触れることが出来れば、スケール感を理解し、計画の参考になることでしょう。私も機会があれば見てみたいです。