コメント
自宅に日本庭園をつくるには?烏賀陽百合さんに聞く
旅先で訪れたお寺や旅館の庭に心が洗われるような経験をした人は多いだろう。そんな庭を自宅に取り入れるにはどうしたらいいのか、庭園デザイナーとして国内外で活躍し日本庭園の魅力を発信している烏賀陽百合さんにインタビューした。
栗原晶子|Akiko Kurihara
2019年1月30日
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。
また、エンタメ好きとして演劇や映画に関するライティングも手がけています。
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。... もっと見る
四季を通じてさまざまな表情を見せる日本庭園。京都をはじめとする寺社仏閣の名庭園には、国内外から毎年多くの観光客が訪れる。その魅力は庭の持つストーリー性や、手入れが行き届いた計算された美しさにあり、和風建築はもちろん、モダンな洋風建築との相性もいい。では、一見敷居の高い日本庭園を自宅の敷地内に作るとしたらどうすればいいのだろうか。
庭園デザイナーとして活躍し、京都の庭園に関する書籍を執筆。そして2017年3月には、ニューヨークのグランドセントラル駅構内に石庭のある空間をプロデュースし話題を呼んたことが記憶に新しい烏賀陽百合(うがやゆり)さんに聞いた。
庭園デザイナーとして活躍し、京都の庭園に関する書籍を執筆。そして2017年3月には、ニューヨークのグランドセントラル駅構内に石庭のある空間をプロデュースし話題を呼んたことが記憶に新しい烏賀陽百合(うがやゆり)さんに聞いた。
撮影:野口さとこ
大学卒業後、兵庫県立淡路景観園芸学校、カナダのナイアガラ園芸学校で園芸を学び、イギリスの王立キューガーデンでのインターンも経験した烏賀陽さん。日本庭園に目覚めたのは、本格的に園芸を学び始めた頃からだった。実家の京都に毎週末戻り、日本庭園を見て回りその魅力にひかれていった。「庭を知ると歴史や人の暮らしが見えてきます。特に京都の寺社仏閣にある庭園には、それぞれテーマがあり、それを読み解くのが楽しくて仕方がありませんでした」
やがて庭園の歴史を調べ、作庭家を調べ、どんな人が庭造りに携わっているのかを調べ、知ることでその学びを深めていった烏賀陽さん。なかでも作庭家・重森三玲が設計した京都の東福寺の本坊庭園の面白さにひかれたと言う。「歴史の古い禅寺庭園以外にもモダンな庭園があることを知りました。『井田市松(せいでんいちまつ)の庭』や『北斗七星の庭』など、石を多用した洗練されたデザインの庭を見るとその懐の深さに驚かされます」
大学卒業後、兵庫県立淡路景観園芸学校、カナダのナイアガラ園芸学校で園芸を学び、イギリスの王立キューガーデンでのインターンも経験した烏賀陽さん。日本庭園に目覚めたのは、本格的に園芸を学び始めた頃からだった。実家の京都に毎週末戻り、日本庭園を見て回りその魅力にひかれていった。「庭を知ると歴史や人の暮らしが見えてきます。特に京都の寺社仏閣にある庭園には、それぞれテーマがあり、それを読み解くのが楽しくて仕方がありませんでした」
やがて庭園の歴史を調べ、作庭家を調べ、どんな人が庭造りに携わっているのかを調べ、知ることでその学びを深めていった烏賀陽さん。なかでも作庭家・重森三玲が設計した京都の東福寺の本坊庭園の面白さにひかれたと言う。「歴史の古い禅寺庭園以外にもモダンな庭園があることを知りました。『井田市松(せいでんいちまつ)の庭』や『北斗七星の庭』など、石を多用した洗練されたデザインの庭を見るとその懐の深さに驚かされます」
撮影:烏賀陽百合
庭園デザイナーとして店舗や個人宅の庭園設計を手がけ、コーディネーターとして京都の庭園をレクチャーする活動をつづける烏賀陽さん。2017年3月、ニューヨークで開催されたジャパン・ウィークでの企画で、グランドセントラル駅に石庭をプロデュースし話題を呼んだ。
「京都の職人さんとの共同作業でした。庭園に使う大きな石を現地で調達するのが大変で、最終的には17世紀の採石場で見つけることができました。出来上がった石庭を長時間眺めていたり、何度も訪れてくださったりする外国の方の姿がありました。改めて日本庭園の魅力をもっとたくさんの人に伝えたいという気持ちが芽生えました」
そんな庭園の魅力を知りつくした烏賀陽さんに、日本庭園のある家づくりのために必要なことを聞いた。
庭園デザイナーとして店舗や個人宅の庭園設計を手がけ、コーディネーターとして京都の庭園をレクチャーする活動をつづける烏賀陽さん。2017年3月、ニューヨークで開催されたジャパン・ウィークでの企画で、グランドセントラル駅に石庭をプロデュースし話題を呼んだ。
「京都の職人さんとの共同作業でした。庭園に使う大きな石を現地で調達するのが大変で、最終的には17世紀の採石場で見つけることができました。出来上がった石庭を長時間眺めていたり、何度も訪れてくださったりする外国の方の姿がありました。改めて日本庭園の魅力をもっとたくさんの人に伝えたいという気持ちが芽生えました」
そんな庭園の魅力を知りつくした烏賀陽さんに、日本庭園のある家づくりのために必要なことを聞いた。
家を建てるときに理想の庭も考える
庭のある暮らしをイメージしているなら、必ず設計段階から庭のある家を作りたいと建築家や施工担当者に伝えることが必要だという。「庭はどうしてもオプション的扱いになりがちです。最初の段階でご相談いただけていたらもっと可能性が広がったのに……ということもよくあります」
庭のある暮らしをイメージしているなら、必ず設計段階から庭のある家を作りたいと建築家や施工担当者に伝えることが必要だという。「庭はどうしてもオプション的扱いになりがちです。最初の段階でご相談いただけていたらもっと可能性が広がったのに……ということもよくあります」
好きな風景や好きな理由を切り取る
庭づくりのためにより具体的なイメージを担当者に伝えるためには、カタログから飛び出すことを烏賀陽さんは提案する。「イメージを伝えるときに役に立つのは、好きな風景を探しに公園や植物園に行ってみることです。好きな景色を写真に撮るのもいいですね」
植物そのものの価格や育てやすさなど情報を先に入れてしまいがちだが、「葉の枝垂れ方や、木陰の雰囲気が好みなど、好きな理由にフォーカスすることで、デザインに反映しやすくなります」と烏賀陽さん。またホームセンターや園芸店で実際の植物を間近で見てみるのも大事だ。「感触やサイズ感はカタログだけではわからないことも多いので実物に触れてほしいです」
庭づくりのためにより具体的なイメージを担当者に伝えるためには、カタログから飛び出すことを烏賀陽さんは提案する。「イメージを伝えるときに役に立つのは、好きな風景を探しに公園や植物園に行ってみることです。好きな景色を写真に撮るのもいいですね」
植物そのものの価格や育てやすさなど情報を先に入れてしまいがちだが、「葉の枝垂れ方や、木陰の雰囲気が好みなど、好きな理由にフォーカスすることで、デザインに反映しやすくなります」と烏賀陽さん。またホームセンターや園芸店で実際の植物を間近で見てみるのも大事だ。「感触やサイズ感はカタログだけではわからないことも多いので実物に触れてほしいです」
たとえ具体的なデザインイメージがなかったとしても、庭のある暮らしを思い描くきっかけや理由を伝えよう。「昔大好きだったおじいちゃんの家に庭があったから」「窓から庭を眺めるあの映画のシーンが忘れられない」など、ちょっとした印象が庭のある暮らしの実現につながるからだ。
無難から脱却して専門家にオーダーする
「ご相談やご要望としてよく伺うのは、ローメンテナンスであるか否かです。だからシンボルツリーになるものが一種か二種植えてあればいい、と画一的になりがちです。たしかにメンテナンスは必要ですが、自分で選んだ植物なら興味も愛着も湧いて、意外とメンテナンスも苦ではなくなります。」家づくりの担当者が必ずしも庭木に詳しいわけではないこともあるので、無難を避けたいなら庭園デザイナーや造園業、ガーデニング会社など専門家を探したり、設計者に紹介してもらったりしよう。専門家にオファーすると希望したデザインや植物のいい点だけでなく、リスクも教えてくれるし代案も出やすいという。「作庭後、年月が経過してからでも剪定時期や方法を相談しやすいという利点もあります」
「ご相談やご要望としてよく伺うのは、ローメンテナンスであるか否かです。だからシンボルツリーになるものが一種か二種植えてあればいい、と画一的になりがちです。たしかにメンテナンスは必要ですが、自分で選んだ植物なら興味も愛着も湧いて、意外とメンテナンスも苦ではなくなります。」家づくりの担当者が必ずしも庭木に詳しいわけではないこともあるので、無難を避けたいなら庭園デザイナーや造園業、ガーデニング会社など専門家を探したり、設計者に紹介してもらったりしよう。専門家にオファーすると希望したデザインや植物のいい点だけでなく、リスクも教えてくれるし代案も出やすいという。「作庭後、年月が経過してからでも剪定時期や方法を相談しやすいという利点もあります」
内からの延長を楽しむ
「家づくり当初から作庭をオファーしてほしい理由はほかにもあります。それは庭を内からの延長として設計するからです。寺院の部屋から障子や廊下を隔てた向こうに広がる庭の景色を見たことはあるでしょう。日本庭園は座った時の目線から庭を考え、つど内からの景色を確認しながら作っていきます。家づくりにおいても、窓の位置、リビングやダイニングから見える景色、光の差し込み方や壁の色やテクスチャなど内装デザインと調和することで、その家だけの特別な景色を作り出すことができます」
例えば京都の泉涌寺雲龍院「悟りの間」からの借景のように、座った時の目線から庭を考えた日本庭園独特の作り方を取り入れたい。
「家づくり当初から作庭をオファーしてほしい理由はほかにもあります。それは庭を内からの延長として設計するからです。寺院の部屋から障子や廊下を隔てた向こうに広がる庭の景色を見たことはあるでしょう。日本庭園は座った時の目線から庭を考え、つど内からの景色を確認しながら作っていきます。家づくりにおいても、窓の位置、リビングやダイニングから見える景色、光の差し込み方や壁の色やテクスチャなど内装デザインと調和することで、その家だけの特別な景色を作り出すことができます」
例えば京都の泉涌寺雲龍院「悟りの間」からの借景のように、座った時の目線から庭を考えた日本庭園独特の作り方を取り入れたい。
座った時の目線に合わせた美しい中庭
石の魅力に注目する
烏賀陽さんが庭の魅力を語るときに欠かせないのが石だという。「庭というと植栽だけをイメージする人も多いですが、空間を立体的にデザインする庭づくりにおいて、石の存在にもぜひ注目していただきたいと思います。日本庭園における石というと、手水鉢や灯篭を真っ先に思い浮かぶでしょう。日本家屋にしか似合わないとか、灯篭を置くほどの広さはないと考えがちですが、サイズも種類もいろいろあります。高さが30~50センチ程度の置き灯篭やモダンなデザインの手水鉢などもあり、洋風の家にも合う石を見つけることもできます」
烏賀陽さんが庭の魅力を語るときに欠かせないのが石だという。「庭というと植栽だけをイメージする人も多いですが、空間を立体的にデザインする庭づくりにおいて、石の存在にもぜひ注目していただきたいと思います。日本庭園における石というと、手水鉢や灯篭を真っ先に思い浮かぶでしょう。日本家屋にしか似合わないとか、灯篭を置くほどの広さはないと考えがちですが、サイズも種類もいろいろあります。高さが30~50センチ程度の置き灯篭やモダンなデザインの手水鉢などもあり、洋風の家にも合う石を見つけることもできます」
「形がユニークな自然石を用いてデザインを楽しむのもおすすめです。さらに敷石や砂利は庭の質感を面白くする効果があります。」植物だけだと雑草対策や剪定など維持管理に手間がかかるが、石を用いることで実はメンテナンス範囲を減らせるという効果も期待できるという。
日本庭園はなぜフランスや北欧に人気なのか
日本庭園は海外からの注目度が高く、世界各国で日本庭園を模した庭が人気を呼んでいる。「フランスや北欧、なかでもデンマークの方からの人気が高いです。古い建物に手を加えながら暮らすことが多い人たちにとって、庭園のメンテナンスも暮らしの愉しみとして捉えられているからだと思います。北欧は夏が短いので、その時期に植物を家の中にも外にも取り入れ、存分に楽しみます。そうした人たちにとって四季と共に庭の変化を楽しめる日本庭園は憧れや文化的価値を感じられるものなのではないでしょうか」
日本庭園は海外からの注目度が高く、世界各国で日本庭園を模した庭が人気を呼んでいる。「フランスや北欧、なかでもデンマークの方からの人気が高いです。古い建物に手を加えながら暮らすことが多い人たちにとって、庭園のメンテナンスも暮らしの愉しみとして捉えられているからだと思います。北欧は夏が短いので、その時期に植物を家の中にも外にも取り入れ、存分に楽しみます。そうした人たちにとって四季と共に庭の変化を楽しめる日本庭園は憧れや文化的価値を感じられるものなのではないでしょうか」
北欧の家具は畳との相性がよく、和室のコーディネートに用いられる例も多い。北欧スタイルの家に日本庭園がなじむ理由がわかる。
コンパクトな庭にも適している
広い敷地や和風建築という固定観念にとらわれず、限られた面積に日本庭園を設けることも可能だという。「中庭や玄関アプローチに日本庭園の要素を用いてみるのはどうでしょう。石に苔が生えたり、紅葉したりするのを楽しめる庭が暮らしに溶け込み、自然と心が癒されます」
庭に関する記事を読む
広い敷地や和風建築という固定観念にとらわれず、限られた面積に日本庭園を設けることも可能だという。「中庭や玄関アプローチに日本庭園の要素を用いてみるのはどうでしょう。石に苔が生えたり、紅葉したりするのを楽しめる庭が暮らしに溶け込み、自然と心が癒されます」
庭に関する記事を読む
おすすめの記事
造園・ガーデニング
季節ごとの庭づくりやメンテナンス、どうすればいい?1年のガーデニングまとめ
文/藤間紗花
季節によって、必要となる庭の手入れや、植え付けられる植物などは異なります。シーズンごとのガーデニングについて、これまでご紹介した記事をまとめてお届けします。
続きを読む
造園・ガーデニング
庭づくりをプロに依頼する前に知っておきたい、コストとメリット
文/藤間紗花
庭づくりをプロに依頼するのには、どのようなメリットあるのでしょう?また、どのくらいの費用が必要になるのでしょう?4人の専門家の方々にインタビューしました。
続きを読む
造園・ガーデニング
お手入れが楽な庭をつくるには?
文/舩村佳織
忙しいと、ついつい後回しになってしまう庭のお手入れ。育てやすい植物や、水まきのアイテムなど、お手入れを少しでも楽にするためのアイデアをご紹介します。
続きを読む
植物
冬にしかできない作業を忘れずに行い、来春に備えよう【12月のガーデニング】
文/舩村佳織
庭仕事の中でも大切な剪定や土づくりの時期。地味な作業をしっかり行って来春の景色をより良いものにしましょう。
続きを読む
造園・ガーデニング
専門家が教える、来年の庭を劇的に変える秋の庭仕事
文/舩村佳織
庭づくりを始めるのに、秋は遅すぎると思っていませんか? 秋の庭仕事は、来年の庭を美しく演出してくれます。
続きを読む
植物
バスルームで観葉植物を育てるポイント
文/舩村佳織
一日の始まりや終わりにリラックスするバスルーム。浴室の環境でも育てやすい観葉植物を取り入れて、より充実したバスタイムを楽しんでみましょう。
続きを読む