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ふたりの学生が大自然の中に建てた、26㎡の小さな木造住宅
建築の理論を学び、実践してみたくて、ウズウズしていた二人。材料を運ぶための道をつけるところから、この小さな隠れ家を作りました。
Catherine Hug
2020年11月8日
フィンランドの大自然の中で休暇を過ごしていた時、ドイツで建築を専攻する学生のティム・ベルクマンと都市計画を専攻するヨナス・ベッカーはあるアイデアを思いつきました。そのアイデアとは、ここに小さなバンガローを建ててはどうだろうか?というもの。
エネルギーに満ちあふれ、理論的知識を持った彼らは理論を実践してみたくてウズウズしていたのです。ふたりの学生は、大都市から遠く離れた地に小さな隠れ家をつくりました。図面を引くところから、現場に材料を運ぶために必要な供給路をつくり、住宅のあらゆるディテールをつくり込むところまで、すべて自分たちでやりました。その過程で、彼らは将来のキャリアに大いに役立つであろう、かけがえのない家づくりの経験を手に入れたのです。
エネルギーに満ちあふれ、理論的知識を持った彼らは理論を実践してみたくてウズウズしていたのです。ふたりの学生は、大都市から遠く離れた地に小さな隠れ家をつくりました。図面を引くところから、現場に材料を運ぶために必要な供給路をつくり、住宅のあらゆるディテールをつくり込むところまで、すべて自分たちでやりました。その過程で、彼らは将来のキャリアに大いに役立つであろう、かけがえのない家づくりの経験を手に入れたのです。
どんなHouzz?
住まい手:ティム・ベルクマン、ヨナス・ベッカー(Studio Politaire)
広さ:約26平米、離れ家付き
所在地:フィンランドの南西部にあるラビア
ベッカーとベルクマンは、フィンランドでも最も人口の少ないエリアのひとつにある、まったく開発されていない森の、湖岸からすこし下がった区画に家を建てました。「電気も水もありませんでした。区画までの道もありませんでした。建築家ヤン・カンプショフの監督の下、私たちは土壌分析を行い、その結果に基づいて設計図をつくりました」とベルクマンはいいます。
住まい手:ティム・ベルクマン、ヨナス・ベッカー(Studio Politaire)
広さ:約26平米、離れ家付き
所在地:フィンランドの南西部にあるラビア
ベッカーとベルクマンは、フィンランドでも最も人口の少ないエリアのひとつにある、まったく開発されていない森の、湖岸からすこし下がった区画に家を建てました。「電気も水もありませんでした。区画までの道もありませんでした。建築家ヤン・カンプショフの監督の下、私たちは土壌分析を行い、その結果に基づいて設計図をつくりました」とベルクマンはいいます。
ベルクマンとベッカーは何のためらいもなく飛び込み、理論から実践へとギアチェンジしながら建設に関する多くのことを学び、建設許可申請もしました。「私の母が、あの近くの土地を所有していたのです」とベルクマン。「家を建てたいエリアに土地をほんのわずかな金額で借りることができました。それでももちろん、建築許可申請を提出しなければなりませんでした」
ふたりの学生はプロジェクトのために貯金をかき集め、設計図の第一稿は卒業論文の代わりになりました。
ふたりの学生はプロジェクトのために貯金をかき集め、設計図の第一稿は卒業論文の代わりになりました。
「僕たちはふたりとも、第6学期(大学での課程の半分を終えたところ)にいて、それまで学んだ理論を全部試してみたいと思っていました。すべて大学で学んだとおりに、本当にうまくいくのかを確かめたかったのです」とベルクマンは話します。
予算をおよそ12,000ユーロ(約154万円)に収めつつも、できる限り多くの経験を得るために、ふたりはほぼすべてを自分たちの手で設計し建設しました。「自分自身が屋根の上に座り、ストーブの煙突を天井に通してから屋根を塞ぐ――これはすごいことです。ただ理論に基づいて設計するのではなく、僕たちはこうしたプロセスを経験したかったのです」とベルクマン。
予算をおよそ12,000ユーロ(約154万円)に収めつつも、できる限り多くの経験を得るために、ふたりはほぼすべてを自分たちの手で設計し建設しました。「自分自身が屋根の上に座り、ストーブの煙突を天井に通してから屋根を塞ぐ――これはすごいことです。ただ理論に基づいて設計するのではなく、僕たちはこうしたプロセスを経験したかったのです」とベルクマン。
彼らの設計は複雑ですが、その効果はシンプルで、ミニマリズムを感じさせます。「この家は互い違いになっているため、それぞれの窓から見える景色が違います」とベッカーは言います。わずかに斜めになった4つの部屋が、たった26平米ほどの総面積に広がり、その周りは印象的な自然の景観に包まれています。
部屋はそれぞれの使いやすさを考えて配置されています。キッチンは小さなリビングにつながり、そこから寝室とサウナに続いています。4つの部屋は同一でありながら、互いとの関連で循環させています。
「背の高い側には常に壁があり、もう一方の側には二重窓があります。フィンランドではこれらの窓を『サマーハウス・ウィンドウ』とも呼びます。この二重ガラス窓があれば、(室内を暖かく保つのに)十分ですし、頑丈な木枠のおかげで作業は簡単でした」とベッカーは話します
「背の高い側には常に壁があり、もう一方の側には二重窓があります。フィンランドではこれらの窓を『サマーハウス・ウィンドウ』とも呼びます。この二重ガラス窓があれば、(室内を暖かく保つのに)十分ですし、頑丈な木枠のおかげで作業は簡単でした」とベッカーは話します
ふたりは建設中に繰り返し設計図の見直しを行いました。「アイデアや変更は、建設が始まって初めて思いつくこともあります」とベッカーは言います。
「すべて自分たちの手でつくることで、コストを削減するだけでなく途中で変更することもできました。その結果、テラスを拡張し、最終的には当初の計画とは矛盾して自分たちで屋根をつくり、ストーブの煙突も自分たちで通しました」とベルクマンは話します。
「すべて自分たちの手でつくることで、コストを削減するだけでなく途中で変更することもできました。その結果、テラスを拡張し、最終的には当初の計画とは矛盾して自分たちで屋根をつくり、ストーブの煙突も自分たちで通しました」とベルクマンは話します。
ふたりは、ベルクマンの祖父母がかつて暮らしていた家に、ベースキャンプのようなものを設営しました。そこには電気と水道が通っているため、天候に左右されることなく、バンガローのできるだけ多くの部材を先につくっておくためのインフラがありました。
「この家にはモジュラーフレームを使用しています。全部で17本の角材を骨組みに設置しました。18ミリ厚の合板で剛性を高め、その合板は他の木材と互いに連結されています」とベルクマンは言います。
とはいえ、この現場までは小道も道路もなかったため、本格的に建設を始める前に、材料を現場に運ぶための道も自分たち自身でつくる必要がありました。「建設現場までの湿地帯を抜けて建築資材を運ぶためには、桟橋のような歩道が必要でした」とベルクマンは言います。
そういうわけで、ふたりは現地滞在の最初の4週間を、長さ約200メートルある木造の歩道をつくる作業に費やしました。トラクターを使い、ベースキャンプから約3キロの森の小道を抜けて部材をひとつひとつ運んでから、最後の200メートルは徒歩で渡りました。
とはいえ、この現場までは小道も道路もなかったため、本格的に建設を始める前に、材料を現場に運ぶための道も自分たち自身でつくる必要がありました。「建設現場までの湿地帯を抜けて建築資材を運ぶためには、桟橋のような歩道が必要でした」とベルクマンは言います。
そういうわけで、ふたりは現地滞在の最初の4週間を、長さ約200メートルある木造の歩道をつくる作業に費やしました。トラクターを使い、ベースキャンプから約3キロの森の小道を抜けて部材をひとつひとつ運んでから、最後の200メートルは徒歩で渡りました。
これは体力と時間を消耗する作業でしたが、ベルクマンとベッカーはほぼすべてを自分たちだけで行いました。「ほぼすべてを自分たちでつくりましたが、建設中は時々ドイツから友人たちがやってきて手伝ってくれました」とベルクマン。そのお礼として、ボランティアで手伝った人には、バンガローに無制限で滞在できる権利が与えられました。
ふたりは亜鉛めっき加工の水道管の基礎の上にバンガローを配置しました。「地元の請負業者が、水道管をまとめて溶接してくれました」とベルクマンは話します。「それ以外は、できるだけ天然の素材を使うこと、そして不要なものを最小限に抑えるようにしました」
ふたりは亜鉛めっき加工の水道管の基礎の上にバンガローを配置しました。「地元の請負業者が、水道管をまとめて溶接してくれました」とベルクマンは話します。「それ以外は、できるだけ天然の素材を使うこと、そして不要なものを最小限に抑えるようにしました」
この家には電気がありませんが、小型で金属製の薪ストーブとサウナストーブが設置されています。
この家には水道もありません。彼らいわく、現時点では堆積物の多い水ですが「現在、専用のろ過システムを構築中です。湖の水は飲用に適しています。将来的には、水がシンプルな沈殿物ろ過フィルターでろ過され、サウナに組み込まれた30リットルのタンクで加熱されます」
それまでの間、ふたりはボトル詰めされた水を持ち込んでいます。コンポストトイレは離れにあります。
この家には水道もありません。彼らいわく、現時点では堆積物の多い水ですが「現在、専用のろ過システムを構築中です。湖の水は飲用に適しています。将来的には、水がシンプルな沈殿物ろ過フィルターでろ過され、サウナに組み込まれた30リットルのタンクで加熱されます」
それまでの間、ふたりはボトル詰めされた水を持ち込んでいます。コンポストトイレは離れにあります。
合板で覆われた部屋のインテリアはシンプルで控え目です。「テーブル、アームチェア、ソファ、たんすは年代物です」とベルクマンは言います。これらの家具は彼の祖父母の家で使われていたもので、この小さな家を快適で居心地のよいものにしてくれます。
「実は、家具の寸法にモジュールを合わせました」とベルクマンは話します。「この空間は、すべてが完璧に収まるようにつくられました。たとえば、寝室のユニットはきっちり2.02メートル幅にして、マットレスが置けるようにしています。また、部屋の大きさを決める前にたんすの計測もしました」
「実は、家具の寸法にモジュールを合わせました」とベルクマンは話します。「この空間は、すべてが完璧に収まるようにつくられました。たとえば、寝室のユニットはきっちり2.02メートル幅にして、マットレスが置けるようにしています。また、部屋の大きさを決める前にたんすの計測もしました」
特注品――キッチンのベンチと寝室のクローゼット――も、ふたりの学生が自分たちでつくりました。
「家は大きいものである必要がないことを示したかったのです」とベルクマン。「美しいものを建てるのに、お金をかける必要はありません」とベッカーが付け加えます。ふたりは自分たちの持つ価値観をデザインで伝え、豊富な実務経験がなくても家を建てるのは可能だということを示したのです。
「家は大きいものである必要がないことを示したかったのです」とベルクマン。「美しいものを建てるのに、お金をかける必要はありません」とベッカーが付け加えます。ふたりは自分たちの持つ価値観をデザインで伝え、豊富な実務経験がなくても家を建てるのは可能だということを示したのです。
この家がフィンランドの建築局の検査に合格する2017年の秋まで、ふたりは3度の夏を作業に費やしました。「時間が決定的要因でした」とベルクマンは言います。「最初の夏が過ぎて、家は冬に耐えられる仕様でしたが、内装と天井の断熱はまだありませんでした」
ふたりは、今度はクライアントのために、クラスメイト数名と協力してすでに次のプロジェクトを計画しています。フィンランドのサウナ付きゲストハウスと、ポツダムに建てるこの家よりも広いサマーハウスです。まもなくふたりは大学を卒業し、それぞれのキャリアに進みます。それでも、ベルクマンいわく、この湖のほとりの家は「釣りや読書、ベリーの収穫のための」とても個人的な隠れ家であり続けるそうです。
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ふたりは、今度はクライアントのために、クラスメイト数名と協力してすでに次のプロジェクトを計画しています。フィンランドのサウナ付きゲストハウスと、ポツダムに建てるこの家よりも広いサマーハウスです。まもなくふたりは大学を卒業し、それぞれのキャリアに進みます。それでも、ベルクマンいわく、この湖のほとりの家は「釣りや読書、ベリーの収穫のための」とても個人的な隠れ家であり続けるそうです。
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