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都心の高台にたたずむ、眺めのいい一人暮らしの家
ケヤキの木の緑に癒される、まるで都会の隠れ家のような小さな家。そこは、余計なものはないけれど、これでなければならない、唯一無二の拠点でした。

Mamiko Nakano
2018年12月18日
Houzz Japan Editor
高台にある見晴らしのよい都心の土地に小さな一戸建てを建てて、ひとり暮らしをしたい。そんな希望持っていたオーナーが志田茂建築設計事務所の志田茂さんに設計の相談をしたのは約10年前のこと。竣工以来DIYでメンテナンスされながら大切に住み込まれている、眺望自慢の家を訪ねた。
どんなHouzz?
住まい手:47歳男性
所在地:東京都文京区
構造:木造2階建て
敷地面積:61.6平方メートル
建築面積:44.7平方メートル
延床面積:50.5平方メートル
設計・監理:志田茂建築設計事務所
施工:(株)幹建設
竣工時期:2010年3月
住まい手:47歳男性
所在地:東京都文京区
構造:木造2階建て
敷地面積:61.6平方メートル
建築面積:44.7平方メートル
延床面積:50.5平方メートル
設計・監理:志田茂建築設計事務所
施工:(株)幹建設
竣工時期:2010年3月
2階リビングエリアとワークスペース
30代後半からインテリアに興味を持つようになったというオーナー。約10年前、住んでいた賃貸マンションでは満足行かなくなり、土地を購入して一戸建てを建てることにした。
家を建てるなら、仕事の利便性も考えて東京都心しかなかった。でも、予算は限られているので、小さな家になる。シンプルで、むしろ壁も天井も構造物がむき出しになっているような家がいい。そして、趣味の車、バイク、自転車を置ける場所を確保したい。
そんな条件で家づくりを依頼できる専門家を探す中、建築家の志田茂さんが50平方メートル程度の土地をに建てることを想定して提案していた企画住宅「LWH( ライト・ウエイト・ハウス )」を見つけた。そして、検討している土地の画像とともに、LWHを建てられるかどうか、志田さんに問い合わせをした。
床材:ウォールナット。左奥のはしご:ヒトフデハシゴ(中島鉄工建設)
30代後半からインテリアに興味を持つようになったというオーナー。約10年前、住んでいた賃貸マンションでは満足行かなくなり、土地を購入して一戸建てを建てることにした。
家を建てるなら、仕事の利便性も考えて東京都心しかなかった。でも、予算は限られているので、小さな家になる。シンプルで、むしろ壁も天井も構造物がむき出しになっているような家がいい。そして、趣味の車、バイク、自転車を置ける場所を確保したい。
そんな条件で家づくりを依頼できる専門家を探す中、建築家の志田茂さんが50平方メートル程度の土地をに建てることを想定して提案していた企画住宅「LWH( ライト・ウエイト・ハウス )」を見つけた。そして、検討している土地の画像とともに、LWHを建てられるかどうか、志田さんに問い合わせをした。
床材:ウォールナット。左奥のはしご:ヒトフデハシゴ(中島鉄工建設)
1階のダイニングキッチンから窓をのぞむ
10か所以上の都心の土地を見たというオーナーが文京区のこの土地に家を建てようと決めた理由は、高台で目の前が抜けている眺望が素晴らしかったからだ。
「見た土地はどれも狭かったです。予算の問題があるので、それはしょうがない。でも、ここは家が小さかったとしても、見晴らしがよく、開放感がありました」
10か所以上の都心の土地を見たというオーナーが文京区のこの土地に家を建てようと決めた理由は、高台で目の前が抜けている眺望が素晴らしかったからだ。
「見た土地はどれも狭かったです。予算の問題があるので、それはしょうがない。でも、ここは家が小さかったとしても、見晴らしがよく、開放感がありました」
とはいえ、ここは7メートルの石積の擁壁の上にある土地だ。崖は基礎工事が高額になることもあり、相談を受けていた志田さんも、ここに家を建てることには、当初前向きではなかった。
「崖地に家を立てる場合、擁壁が今の建築基準法にあっていないなら、擁壁を作り直さないといけないのです。もしくは擁壁の下の地盤面まで杭を打って、擁壁が崩れても家は自立する、という状況を作らなくてはいけません」(志田さん)
オーナーはこの土地を一時は候補から外した。でも、塾考した結果、崖地というデメリットを差し引いたら、ベストな場所だと気づいた。そして依頼を受けた志田さんたちは、10メートルの杭を打つところから家の建設を始めた。
「崖地に家を立てる場合、擁壁が今の建築基準法にあっていないなら、擁壁を作り直さないといけないのです。もしくは擁壁の下の地盤面まで杭を打って、擁壁が崩れても家は自立する、という状況を作らなくてはいけません」(志田さん)
オーナーはこの土地を一時は候補から外した。でも、塾考した結果、崖地というデメリットを差し引いたら、ベストな場所だと気づいた。そして依頼を受けた志田さんたちは、10メートルの杭を打つところから家の建設を始めた。
こちらがLWHをベースにカスタマイズされた、この家の図面。1階はキッチンとダイニング、バス・トイレ。2階はリビングと寝室、ワークスペース。これに加えて、収納スペースとなっているロフトがある。コンパクトで、必要十分、余計なものはない。
上の写真は、8年前の建ったばかりの頃の2階の様子だ。窓ができる限り大きくとられているのが、よくわかる。向かって右の白い壁はオーナーが塗ったしっくい壁だ。かなりシンプルに仕上げられた家だったので、DIYをしながら住み続けるのを楽しみにしていたオーナー。工事が完了したから終わり、という感慨は特になかったそう。むしろ「キッチンのタイルはいつ頃貼ろうか、と思ったりしていた」と回想する。
こちらは、入居から8年経過した同じ2階の窓辺の写真。向かって右手の壁は、オーナーが最近、漆喰を塗り直してグレー(鈍色)になっている。明るすぎず、つやのない質感が部屋全体に心地よい陰影のある雰囲気を作り出している。
今年からこの家にはグレー色の猫(シャルトリュー)も居候している。窓の外を見たり、走り回ったりして過ごしている。
ふたつの階をつなぐ階段の上の部分はスノコ状になっている。その形状ゆえなのか、猫のいる今はキャットウォークとして利用されることもしばしば。
階段の手すりは建った当初の明るい色の集成材から、濃い色のウォールナットと黒い金具にDIYでカスタマイズされている。
スノコの間からは照明が吊り下げられ、階段まわりをふわっと照らす。
スノコの間からは照明が吊り下げられ、階段まわりをふわっと照らす。
こちらは1階のキッチンとダイニングスペース。キッチンは、オーナーが発注したステンレスフレームのもの。ミニマルですっきりとした印象だ。
1階の窓の外にはデッキスペースがある。半年に一度、オイルを塗りながらメンテナンスしている。隣家のケヤキの木の緑はとても近く、都心というより森の中にいるような気分にさえさせてくれる。
こちらは玄関ドアの前のスペース。バイクと自転車が置けるようになっている。「通勤が自転車で。都内移動はバイク。もっと遠く行くときは車」なのだそう。
ガルバリウム鋼板の外壁の家の前には、愛車を置いておける駐車スペース。ガレージを作るスペースは確保できなかったが、生活に欠かせない、車、バイク、自転車が家の敷地内にすべて置けるようになっている。
右手前にある小さな庭エリアも、さりげないながら手入れがされている。
右手前にある小さな庭エリアも、さりげないながら手入れがされている。
賃貸から持ち家に移った後の心境の変化について、オーナーに尋ねると、「掃除が苦じゃなくなったのが大きな違い」との答えがかえってきた。
「賃貸マンションに住んでいるときは掃除が面倒で嫌いでした。でも、今はくまなく掃除するのが、苦にならない。自分が好きで建てた家なので、それを手入れするのは面倒とか嫌とか思わないのだと思います」
8年経った今も、その感覚は変わらないようだ。
「今」を精一杯楽しむために。一人暮らしの家づくりとは?
「賃貸マンションに住んでいるときは掃除が面倒で嫌いでした。でも、今はくまなく掃除するのが、苦にならない。自分が好きで建てた家なので、それを手入れするのは面倒とか嫌とか思わないのだと思います」
8年経った今も、その感覚は変わらないようだ。
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