築44年の空き家をリノベーション。古いものと大切に暮らす、植物室がある家
夫妻をよく知る専門家の手で平屋の中古物件をリノベーション。古家のいいところはそのままに、センスあふれる庭師の家に生まれ変わりました。
永井理恵子
2018年12月7日
神奈川県との県境に位置する、静岡県駿東郡小山町。富士山のほか、丹沢の山々を眺められるロケーションだ。オーナーで庭師の横山太一さんと奥様の直美さんは、小山町の隣町の御殿場市出身。賃貸アパートに暮らしながら、自分たちがこれから暮らす家を探していた。古いものを大切にしたいと考える夫妻は新築に興味を持てず、中古住宅を御殿場市と近隣の市町村で探し始めた。
小山町に暮らすHAPTIC HOUSEの長尾隆行さんは、移住・定住を促進する小山町のプロジェクト「ASUO・おやまで暮らそう課」が認定する住まいのパートナーとして活動をしている。夫妻は、中古住宅を探し始める前に知人の紹介で長尾さんと知り合い、キャンプという共通の趣味で意気投合。物件を決める前から、家のリノベーションを依頼するなら長尾さんしかいないと考えていた。そして、たまたま見つけた小山町にあるこの家を、長尾さんは夫妻よりも一足先に見学しており「いい家だ」と感じていた。1974年11月に完成したこの家は、大工が手をかけて建てており普請がしっかりしているうえ、以前の住まい手がメンテナンスを怠らずに住んでいた様子で、しばらくの間空き家になっていたとは思えないほど家の中の傷みが少なかった。
夫妻は、2人でこの家を見学した後、改めて長尾さんと一緒に見に行き購入を決意。リノベーションして暮らすことにした。
小山町に暮らすHAPTIC HOUSEの長尾隆行さんは、移住・定住を促進する小山町のプロジェクト「ASUO・おやまで暮らそう課」が認定する住まいのパートナーとして活動をしている。夫妻は、中古住宅を探し始める前に知人の紹介で長尾さんと知り合い、キャンプという共通の趣味で意気投合。物件を決める前から、家のリノベーションを依頼するなら長尾さんしかいないと考えていた。そして、たまたま見つけた小山町にあるこの家を、長尾さんは夫妻よりも一足先に見学しており「いい家だ」と感じていた。1974年11月に完成したこの家は、大工が手をかけて建てており普請がしっかりしているうえ、以前の住まい手がメンテナンスを怠らずに住んでいた様子で、しばらくの間空き家になっていたとは思えないほど家の中の傷みが少なかった。
夫妻は、2人でこの家を見学した後、改めて長尾さんと一緒に見に行き購入を決意。リノベーションして暮らすことにした。
どんなHouzz?
所在地:静岡県駿東郡小山町
住まい手:庭師の横山太一さん、奥様の直美さん
敷地面積:384.02㎡
延床面積:111.78㎡
規模:LDK、寝室、和室、植物室、洗面室、バスルーム、トイレ
竣工:2018年
構造:木造軸組
設計:HAPTIC HOUSEの長尾隆行さん
施工:ファースト
薪ストーブの煙突が目印の平屋の家。屋根や窓、外壁は色を塗ってあとはほとんどそのまま。新たに設置したのは、ウッドデッキと、外観のアクセントになっているブルーのドア。ブルーのドアは植物室へ続く。
所在地:静岡県駿東郡小山町
住まい手:庭師の横山太一さん、奥様の直美さん
敷地面積:384.02㎡
延床面積:111.78㎡
規模:LDK、寝室、和室、植物室、洗面室、バスルーム、トイレ
竣工:2018年
構造:木造軸組
設計:HAPTIC HOUSEの長尾隆行さん
施工:ファースト
薪ストーブの煙突が目印の平屋の家。屋根や窓、外壁は色を塗ってあとはほとんどそのまま。新たに設置したのは、ウッドデッキと、外観のアクセントになっているブルーのドア。ブルーのドアは植物室へ続く。
オーナーの横山太一さんと奥様の直美さん
横山さんは、自分が暮らすなら平屋がいいと考えていた「古いものを活かし、取り入れながら暮らしたかったんです」という通り、家の中のあちこちに、元の家の痕跡や引き継いだ家具が見られる。
横山さんは、自分が暮らすなら平屋がいいと考えていた「古いものを活かし、取り入れながら暮らしたかったんです」という通り、家の中のあちこちに、元の家の痕跡や引き継いだ家具が見られる。
玄関の三和土も元の家のまま。床は針葉樹合板に張り替え、壁は白く塗った。時間が止まったままのアンティークの時計と古いミシン台がよく似合う。
玄関にある緑色のドアを開けると、アウトドアギアが収納されている。元々は、外から出入りできるボイラー室と、廊下から出し入れする押入れという2つのスペースの間にあった壁を抜いて、ひとつの空間に。色の違う板をランダムに張った正面の壁は、横山さん自身がDIYしたものだ。外へと通じる右奥のガラスがはめ込まれたドアは、購入時のまま。
横山さんは一人で、奥様と、そして友人たちともキャンプに出かける。キャンプ道具を頻繁に使うからこそ、玄関や外から直接片付けられるスペースがあるのはとても便利だという。
横山さんは一人で、奥様と、そして友人たちともキャンプに出かける。キャンプ道具を頻繁に使うからこそ、玄関や外から直接片付けられるスペースがあるのはとても便利だという。
玄関の正面にある部屋は、寝室。床を張り替え、壁と天井を白く塗り、クローゼットをしつらえた。ナチュラルな雰囲気の空間は、直美さんの狙い通りに仕上がった。天井を白く塗ったら、元々あった天井の模様がはっきりと浮き出たのは嬉しい誤算。「レトロな感じがかわいくて、とても気に入っています」と直美さん。
リビングから玄関へと続く廊下を眺める。左奥から洗面室、バスルーム、トイレが並び、右奥から寝室、和室がある。
和室の建具は、明治時代に建てられた古い家を解体すると聞きつけ、買い取ったもの。「実際にはめ込んでみたら、シンデレラフィット。全く同じサイズだったことに驚きました」と長尾さん。
洗面脱衣室の洗濯機置き場は、元々トイレだった場所。よく見ると、洗濯機本体の下のタイルに、便器の取り付け跡が。また、洗濯機の上部の壁には、削れたような跡が残る。あえて埋めずに傷跡を残した。さらにどの部屋のコンセントも、リノベーション時に新しくせず、この家の新築当時のまま。「この家に元々あった痕跡を残しておきたかったんです」と横山さん。まるでこの家の歴史を慈しむかのようだ。同じように家のあちこちに、日々の営みの名残のような痕跡が残っている。
トイレの位置を変えたのは、窓から差し込む光を洗面台まで届けるため。改修前はトイレ(現洗濯機置き場)と洗面台の間に壁と扉があり、窓から光が差すトイレは明るいが、洗面台は昼でも電気をつけずにはいられないほど暗かった。1日の始まりである朝の身支度が楽しくなるよう、トイレの場所を変更して壁と扉をなくし、洗面脱衣室全体に陽の光が届くようにした。
洗面台は造作。一枚板に琺瑯の洗面ボウルをセッティングした。鏡は長尾さんからの新築祝いのプレゼント。
トイレの位置を変えたのは、窓から差し込む光を洗面台まで届けるため。改修前はトイレ(現洗濯機置き場)と洗面台の間に壁と扉があり、窓から光が差すトイレは明るいが、洗面台は昼でも電気をつけずにはいられないほど暗かった。1日の始まりである朝の身支度が楽しくなるよう、トイレの場所を変更して壁と扉をなくし、洗面脱衣室全体に陽の光が届くようにした。
洗面台は造作。一枚板に琺瑯の洗面ボウルをセッティングした。鏡は長尾さんからの新築祝いのプレゼント。
トイレは、以前は収納スペースだったLDK近くに移動した。ドアはアクセントウォールと同じラベンダー色。新たに入れたステンドグラスのガラスの色から一色を選んで決めた。
玄関から見て廊下の正面にある扉を開けると、LDKが広がる。真っ先に目に入るのは、タイルが印象的なキッチンと、パレットとガラス天板を組み合わせたダイニングテーブルだ。
直美さんが一目惚れして選んだキッチンのタイルは平田タイルのもの。ダイニングテーブルは、工場や倉庫などで使われる木製パレットに長尾さんが何かの役に立つかもしれないと考え保管していた古道具の脚を取り付けた。カウンターの形状に合わせて加工した木製パレットにピッタリ合うようにオーダーしたガラス天板を乗せて、ダイニングテーブルにした。カウンターとダイニングテーブルの位置関係やデザインは、奥様がイメージした通りの仕上がり。ダイニングチェアは、元々この家にあったものを受け継いで使っている。
キッチンは造作。シンクの下はゴミ箱置き場になっている。ガスコンロはハーマンの『プラス・ドゥ』を選んだ。長尾さんの自邸で同じものを取り入れており、掃除がしやすいと勧められて決めた。
直美さんが一目惚れして選んだキッチンのタイルは平田タイルのもの。ダイニングテーブルは、工場や倉庫などで使われる木製パレットに長尾さんが何かの役に立つかもしれないと考え保管していた古道具の脚を取り付けた。カウンターの形状に合わせて加工した木製パレットにピッタリ合うようにオーダーしたガラス天板を乗せて、ダイニングテーブルにした。カウンターとダイニングテーブルの位置関係やデザインは、奥様がイメージした通りの仕上がり。ダイニングチェアは、元々この家にあったものを受け継いで使っている。
キッチンは造作。シンクの下はゴミ箱置き場になっている。ガスコンロはハーマンの『プラス・ドゥ』を選んだ。長尾さんの自邸で同じものを取り入れており、掃除がしやすいと勧められて決めた。
リビングは勾配天井になっており、開放感にあふれる。元はダイニングスペースと同じ天井高だったが、高さを求めて天井を取り去ったら立派な梁が姿を現した。ソファは静岡県富士市にある比奈家具で選んだ。
床には、壁材として製材された木材をあえて使った。夫妻ともに、少しざらつきがある質感が気に入ったからだ。「感触が良くて、床に寝そべっていると気持ちがいいんです」と横山さん。「うとうとしながらずっと手で床を撫でているんですよ」と直美さんが教えてくれた。
設置するかどうか悩み、予算内に収めるため屋根の葺き替えを諦めて選んだ薪ストーブは、ネクターのキッチンストーブ『ピキャンオーブン』。ストーブ本体には上下に2つのボックスがあり、上段で薪を燃やし、下段とストーブトップで調理ができるようになっている。下段には、温度計もついている。炉台は、重さ約600kgもある巨大な石。横山さんがストーブを固定できるよう石を削って加工し、設置した。
リビングにある格子窓の向こう側は、植物室になっている。客間として使われていた和室を植物室にリノベーションしたのだ。20年の修行を経て庭師として独立し、HITOTOKIという屋号で活躍する横山さんが希望した空間。
格子窓の一部が突き出し窓になっている。開閉すれば、植物室の温度調整をしたり、風を通したりできる。
新たに設置した鮮やかな青の扉を開けると、ウッドデッキに出られる。
父親に勧められるがまま、造園の仕事に就いた横山さん。数年後、苔玉やテラリウムに夢中になったことをきっかけに植物と仕事が大好きになった。植物室には、横山さんが日々丹精して育てる植物が並ぶ。ここで過ごす時間は至福のひととき。
父親に勧められるがまま、造園の仕事に就いた横山さん。数年後、苔玉やテラリウムに夢中になったことをきっかけに植物と仕事が大好きになった。植物室には、横山さんが日々丹精して育てる植物が並ぶ。ここで過ごす時間は至福のひととき。
リビングの反対側には、和室がある。リビングとの間仕切りの建具も床脇に設えた収納の建具も、廊下に面した建具と同じ家から買い取った。こちらもサイズがピッタリ同じだった。
床の間の壁は、群青色。横山さんが育てる大きなビカクシダや流木が映える。床柱や床框、落し掛けなど、床の間を構成する木材は、ありのままを活かした。
座卓と左奥に置かれた茶箪笥は、この家にあったものを受け継いで使っている。アンティークの照明には鳥がのびのびと飛ぶ様子が描かれていて、植物室があるこの家によく似合う。
同じ小山町に暮らし、同じ趣味を持つ横山夫妻と長尾さん。日当たりがいいウッドデッキでは、植物や薪ストーブ、キャンプやこれからの家づくりの話に花が咲く。リノベーションを終えた今もいい関係が続いており、横山夫妻と長尾さんファミリーのほか、共通の友人たちを交えてキャンプに出かけることが度々あるという。
共通の趣味をきっかけに意気投合した関係が家づくりを通じて発展し、より深い関係を築けたことに、夫妻も建築家も満足げな表情を浮かべていたのが印象的だった。
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はじめまして
素敵ですこのお宅、私も同じように古くていい物件を探してリノベーション後住みたいです
真由美伊藤さん。コメント有難うございます!こまめに不動産情報をチェックしたり、知り合いの建築家、設計士に具体的に、住みたい場所、住みたい家の大きさなど伝えておくと、良い情報が入り次第教えてくれるかもです!