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費用は抑えてもデザインは妥協しない。工業用の材料で建てた家
波形シートメタルのサイディングやポリカーボネート板。一般住宅では使われない素材を、建築家は工夫を凝らして使いこなしました。
Eva Bodenmüller
2018年12月13日
この家の持ち主である一家は、約3900万円(30万ユーロ)の予算で家を建ててほしいと、建築家に依頼をしました。そして建築家に、住宅の建築を予定しているドイツのドレスデン郊外にあるピルナという町の建築基準を手渡しました。法律では、このエリアの住宅は最小軒高が約5メートル、ガレージの最小軒高が約3メートルでなければならないとされています。
平屋根の家を建てることもできましたが、それだと周辺の環境から浮いてしまうと思われました。そこで建築家たちは節約する他の方法を模索。最終的に1平方フィート単位のコストが最も低い産業建設をヒントに、解決策を導き出しました。
多くの検討の結果、ポリカーボネートや波形シートメタルなど、予想外の材料を使い、純粋な建築費を予算内に抑えたスリー・セクション・ハウスを完成させました。
どんなHouzz?
住まい手:子どもがひとりいる家族
所在地:ドイツ、ドレスデン近郊のピルナ
広さ:約180平米
設計:Büro für Bauform
平屋根の家を建てることもできましたが、それだと周辺の環境から浮いてしまうと思われました。そこで建築家たちは節約する他の方法を模索。最終的に1平方フィート単位のコストが最も低い産業建設をヒントに、解決策を導き出しました。
多くの検討の結果、ポリカーボネートや波形シートメタルなど、予想外の材料を使い、純粋な建築費を予算内に抑えたスリー・セクション・ハウスを完成させました。
どんなHouzz?
住まい手:子どもがひとりいる家族
所在地:ドイツ、ドレスデン近郊のピルナ
広さ:約180平米
設計:Büro für Bauform
この家は、隣り合う3つの切妻セクションで構成されていて、それぞれの高さが異なるため、目を引くファサードとなっています。
左側のセクションと右側にあるガレージは波形シートメタルでできた雨よけで覆われています。リビングがある家の中央セクションの壁と屋根にはポリカーボネートを使用。サンルームのような外観に仕上げています。
木造建造物は、サーマルブレイク構造に固定された約60ミリ厚の板を支えています。サーマルブレイク構造とは、熱が逃げないように屋内と屋外を隔てる非熱伝導性材料の構造を言います。
左側のセクションと右側にあるガレージは波形シートメタルでできた雨よけで覆われています。リビングがある家の中央セクションの壁と屋根にはポリカーボネートを使用。サンルームのような外観に仕上げています。
木造建造物は、サーマルブレイク構造に固定された約60ミリ厚の板を支えています。サーマルブレイク構造とは、熱が逃げないように屋内と屋外を隔てる非熱伝導性材料の構造を言います。
ポリカーボネートは、工業用の倉庫建設でよく使われる比較的安価な材料です。「このシートは非常に軽いです。強風の中でも吹き飛ばされないようアンカーで固定しました」と話すのは、プロジェクトを担当する建築家のひとり、ユルゲン・レーメイヤーです。
中央セクションのアーチ型天井は、屋根の棟まで開放されています。「サンルームが十分な空気循環を可能にするため、換気システムを設置する必要がありませんでした」とレーメイヤーは言います。
十分な日差しがあれば、冬でも快適な温度まで空気が暖められる一方で、夏には北側に取り付けられた屋根窓により暑くなりすぎることもありません。窓は温度センサーを備えていて、換気が必要なときには自動的に開くようになっています。風雨モニターのおかげで、雨が降り始めた、あるいは風が強すぎるときには自動的に閉まります。「技術面においても、低コストで高い快適性を目指しました」とレーメイヤーは言います。
中央セクションのアーチ型天井は、屋根の棟まで開放されています。「サンルームが十分な空気循環を可能にするため、換気システムを設置する必要がありませんでした」とレーメイヤーは言います。
十分な日差しがあれば、冬でも快適な温度まで空気が暖められる一方で、夏には北側に取り付けられた屋根窓により暑くなりすぎることもありません。窓は温度センサーを備えていて、換気が必要なときには自動的に開くようになっています。風雨モニターのおかげで、雨が降り始めた、あるいは風が強すぎるときには自動的に閉まります。「技術面においても、低コストで高い快適性を目指しました」とレーメイヤーは言います。
サンルームの両脇にある2つのセクションは石造で、波形シートメタルでできた雨よけがついています。雨どいと縦どいは見えないようにファサードに組み込んでいます。建築家たちはこの2つのセクションを意図的に一体であるかのように見せました。たとえば、できるだけ統一感を出すため、波形シートメタルは同じ色でパウダーコーティングされたネジを使って取り付けました。
ガレージはサンルームの片側にあり、建物の中で最も低く、最も長い部分となっています。ガレージの扉はポリカーボネート板で覆われています。「当初、波形シートメタルに天窓を取り付けたかったのですが、あまり気に入らないことに気づきました。ガレージに日光を取り入れるために、カスタマイズが可能な標準のガレージドアにポリカーボネート板を取り付けることで、すぐに換気もできるようになりました」と建築家は話します。また、これによりコストをさらに抑えることができたのです。
ガレージセクションの通路の突き当たりにはゲスト用のバスルームがあります。
ガレージはサンルームの片側にあり、建物の中で最も低く、最も長い部分となっています。ガレージの扉はポリカーボネート板で覆われています。「当初、波形シートメタルに天窓を取り付けたかったのですが、あまり気に入らないことに気づきました。ガレージに日光を取り入れるために、カスタマイズが可能な標準のガレージドアにポリカーボネート板を取り付けることで、すぐに換気もできるようになりました」と建築家は話します。また、これによりコストをさらに抑えることができたのです。
ガレージセクションの通路の突き当たりにはゲスト用のバスルームがあります。
サンルームはその隣にあります。住宅のパブリックエリアとプライベートエリアを階段で隔てています。「建物は人の動きを導くものでなければなりません」とレーメイヤーは言います。「ゲストは、入っていい場所と許可なく立ち入るべきでない場所をすぐに理解するはずです。ここでは、階段がその機能を果たしています。この階段がラウンジとつながり、ラウンジの一部になっています。実際、ここにはいつも誰かが座ったり、物を置いたりしています。」
階段は踊り場へと続き、そこから子ども部屋、ゲストルームと隣接するバスルームにつながっています。これらすべては隣のセクション(この住宅の中で最も高く、最も細長い部分)にあります。
階段は踊り場へと続き、そこから子ども部屋、ゲストルームと隣接するバスルームにつながっています。これらすべては隣のセクション(この住宅の中で最も高く、最も細長い部分)にあります。
レーメイヤーは熟練の金属加工職人で、階段は彼自身が設計しました。ステップは梁に溶接された4ミリ厚の鋼板でできています。手すりはシンプルなスチール製で、欄干には鋼線で強度を高めた物干ロープを使用しています。「階段の設計は私の趣味なんです」とレーメイヤーは言います。「この手すりはおそらく、私が設計したなかで最も安上がりなんじゃないかな」
階段の後ろにはキッチン・ダイニングルームがあります。コーナー窓(家の中にある他の窓と同様、木とアルミの枠に三重ガラスをはめ込んだもの)が二面で日光を取り入れています。
サンルームの北側は木枠でつくられた箱になっていて、階段の下にあるドアから出入りできます。そこにはバスルーム付きの主寝室とウォークイン・クローゼットがあります。ここから隣のセクションにある、キッチンのちょうど裏側に位置する寝室へとつながっています。
一見したところ、主寝室にあるバスルームはバリアフリーのシャワーブースと独立したバスタブのある、ごく一般的なバスルームに見えます。しかしここでも、見た目ほどシンプルなものは何もありません。「シャワーは家全体の中で最も複雑な部分のひとつでした」とレーメイヤーは言います。床スラブを流し込む前に、シャワートレイをどのあたりに、どの高さに設置するか、正確に決めておく必要がありました。「そこで私たちは、コンクリートフロアにプレースホルダーを打設したのです」と彼は言います。
多くの工業用建物のように、この家の床スラブは実は仕上げの床なのです。そのため、外部の型枠の内側に絶縁材を取り付けてスラブを保護しました。「ケーブル、糸、ペンキを使い、壁や配管のすべての位置に印をつけました。通常なら住宅の壁がすでにできあがっている現場にしか来ない職人たちに、この状況で作業してもらうにはかなりの説得を要しました」とレーメイヤーは話します。
多くの工業用建物のように、この家の床スラブは実は仕上げの床なのです。そのため、外部の型枠の内側に絶縁材を取り付けてスラブを保護しました。「ケーブル、糸、ペンキを使い、壁や配管のすべての位置に印をつけました。通常なら住宅の壁がすでにできあがっている現場にしか来ない職人たちに、この状況で作業してもらうにはかなりの説得を要しました」とレーメイヤーは話します。
ついに配管工と電気工も入り、コンクリートが流し込まれる前に配管、配線、床暖房を設置しました。最後には、コンクリートの表面をならして仕上げ、この家の全作業が完了するまで保護のために覆いをかけておきました。
大工たちは、プラットフォームの後壁に人工芝を接着し、プライバシーを守る不透明な目隠しをつくりました。
「これまで産業建設でしかやっていなかった多くのこと、人々が美しさをほとんど感じないことに挑戦しました」とレーメイヤーは言います。「建築家はこうした手段を美学的なものに変え、住宅建築をもっと安価にすることを学ばなければなりません」
大工たちは、プラットフォームの後壁に人工芝を接着し、プライバシーを守る不透明な目隠しをつくりました。
「これまで産業建設でしかやっていなかった多くのこと、人々が美しさをほとんど感じないことに挑戦しました」とレーメイヤーは言います。「建築家はこうした手段を美学的なものに変え、住宅建築をもっと安価にすることを学ばなければなりません」
1階の間取り図
1階の北側には窓があります。したがって、ランドリールーム、ユーティリティルーム、ゲスト用バスルームはすべてガレージセクションにあり、日中は日が差し込みます。
1階の北側には窓があります。したがって、ランドリールーム、ユーティリティルーム、ゲスト用バスルームはすべてガレージセクションにあり、日中は日が差し込みます。
2階の間取り図
サンルームで見かけた箱は、2階の図書室として機能しています。寝室2部屋の天井は屋根の高さにまで至ります。バスルーム(この2部屋の間にある)は落天井なため、追加の物入となっています。
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サンルームで見かけた箱は、2階の図書室として機能しています。寝室2部屋の天井は屋根の高さにまで至ります。バスルーム(この2部屋の間にある)は落天井なため、追加の物入となっています。
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