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土間を現代の暮らしに取り入れた、味わい深いインテリアが映える家
玄関からキッチン、ダイニングまで土間をフラットにつなげ、居住空間を田の字型に配置して回遊性と開放感を実現した心地よい住まい。
takako kawaguchi
2018年11月12日
かつて日本の民家などでよく見られた土間。玄関的な要素や作業場・炊事場などの空間であり、土足で使われることも多く、屋内外の緩衝帯というべき存在だった。今回ご紹介するオーナーが家づくりにあたってリクエストしたのは、そんな土間スタイル。オーナーの高校時代からの友人でもあるタイラヤスヒロ建築設計事務所の平泰博さんは、思い切って1階部分のおよそ半分を現代風な土間コンクリートにすることを提案。玄関からダイニングキッチンまでをフラットな土間でつなぐことで、空間を共有し、実際よりも広く感じる視覚効果を狙った。さらにリビングとの間にも廊下や壁をつくらず、玄関とLDKを合わせた4スペースを田の字型に配置。日々の暮らしで動きに無駄のない、シンプルでも回遊性と開放感のある空間づくりに成功した。
ともに柏崎出身で、結婚を機に地元へ戻り、家づくりを計画したオーナー夫妻。土地は奥様の実家所有で、農地だったところを宅地転用した。周囲は田園風景が広がる、のどかな環境。
どんなHouzz?
家族構成:30代夫婦、子ども1人
所在地:新潟県柏崎市
間取り:3LDK+シューズクローク+納戸+WIC
敷地面積:313.31平方メートル
延床面積:101.85平方メートル
構造:木造軸組
設計:タイラヤスヒロ建築設計事務所 平泰博
キッチン製作:笠原建設 下職家具屋
施工:笠原建設
竣工時期:2015年11月
どんなHouzz?
家族構成:30代夫婦、子ども1人
所在地:新潟県柏崎市
間取り:3LDK+シューズクローク+納戸+WIC
敷地面積:313.31平方メートル
延床面積:101.85平方メートル
構造:木造軸組
設計:タイラヤスヒロ建築設計事務所 平泰博
キッチン製作:笠原建設 下職家具屋
施工:笠原建設
竣工時期:2015年11月
打ち合わせ時のヒアリングで、土間というキーワードがあり、オーナーの好きな写真の中でもコンクリート床が使われていたことに注目した平さん。そこから玄関ホールや廊下、さらにはキッチンやダイニングまでも現代の土間として置き換えるイメージをふくらませていった。「土間を大々的にひとつの生活空間として捉えることで、現代の生活に違和感なく取り込めるのではないかと考えました」
次に考えたのが、廊下をなくすこと。各空間の緩衝帯ともいえる廊下がないことで、土間を取り入れた玄関とキッチン、ダイニング、それに続くリビングは互いに接する形となり、動きに無駄のない田の字型のレイアウトが可能に。スペースを分断する壁や廊下がないことは、光が届きやすく、空間の広がりを感じることにもつながる。多様なメリットのある形だ。
次に考えたのが、廊下をなくすこと。各空間の緩衝帯ともいえる廊下がないことで、土間を取り入れた玄関とキッチン、ダイニング、それに続くリビングは互いに接する形となり、動きに無駄のない田の字型のレイアウトが可能に。スペースを分断する壁や廊下がないことは、光が届きやすく、空間の広がりを感じることにもつながる。多様なメリットのある形だ。
壁や廊下がない分、それぞれのゾーニングをはっきり体感できるよう、天井や床に段差をつけ、素材感の差別化も図った。
まず玄関からキッチンへ入ると、天井は少し低めになっており、落ち着いて作業できる「こもり感」があるのがわかる。一方で、ダイニングの天井はキッチンより約20cm高く設定。キッチンからダイニング、さらにその先の庭へと目を向けたときに、高さと広がりの度合いが上がる仕掛けになっている。リビングは床を約10cm高くし、無垢板フローリングにすることで、くつろいだ優しい雰囲気を演出。
キッチン天井のダイニング側には間接照明を採用。影をつくることで奥行き感が増し、フラットで単調になりがちな天井面に変化を与えている。
まず玄関からキッチンへ入ると、天井は少し低めになっており、落ち着いて作業できる「こもり感」があるのがわかる。一方で、ダイニングの天井はキッチンより約20cm高く設定。キッチンからダイニング、さらにその先の庭へと目を向けたときに、高さと広がりの度合いが上がる仕掛けになっている。リビングは床を約10cm高くし、無垢板フローリングにすることで、くつろいだ優しい雰囲気を演出。
キッチン天井のダイニング側には間接照明を採用。影をつくることで奥行き感が増し、フラットで単調になりがちな天井面に変化を与えている。
奥様はアクセサリー関係の仕事をしており、家具や雑貨選びのセンスも抜群なオーナー夫妻。夫妻が所有する家具は事前にすべて把握し、好きな雑貨類も「意匠的な手掛かりになるので」と、自宅打ち合わせの際に注意深く観察した、と平さんは語る。そのためインテリア全体が調和し、心地よい空間に仕上がっている。
約10畳のリビングは南に面しており、明るい自然光が空間を満たしている。フローリングは無垢材。触れたときの温かみや感触、素材のよさを感じてもらうため、肌に触れる部分は極力、自然素材や無垢のものを使うのがタイラヤスヒロ建築設計事務所の方針。無垢材であれば傷がついても下地が見えることなく、メンテナンスも少しの傷なら紙やすりなどで容易にできる。
約10畳のリビングは南に面しており、明るい自然光が空間を満たしている。フローリングは無垢材。触れたときの温かみや感触、素材のよさを感じてもらうため、肌に触れる部分は極力、自然素材や無垢のものを使うのがタイラヤスヒロ建築設計事務所の方針。無垢材であれば傷がついても下地が見えることなく、メンテナンスも少しの傷なら紙やすりなどで容易にできる。
ダイニングの広さは約8畳、キッチンは約4畳。土間部分のコンクリート床は、目地を入れず、ひび割れを防止するため100mmの厚さに。普段はルームシューズを履いて過ごしているが、夏場は素足の感触がとても気持ちいいそう。
螺旋階段が庭へと通じる開口部の間にあり、空間に躍動感を与えている。2階から降り注ぐ光が陰影を与え、さりげなくも美しいオブジェのような存在だ。素材は鉄と木材のコンビネーション。鉄の武骨な表情と木の落ち着いた風合いが絶妙である。鉄部材は規格品をうまく活用することで、コストダウンも叶えている。
「鉄や木は弊所のデザインを表現する要素としてよく使っています。階段以外の部分でも、白い壁と天井とのバランスを見ながら、色味や木を見せる面や量を、ディテールやデザインと合わせて慎重に検討しました」
「鉄や木は弊所のデザインを表現する要素としてよく使っています。階段以外の部分でも、白い壁と天井とのバランスを見ながら、色味や木を見せる面や量を、ディテールやデザインと合わせて慎重に検討しました」
キッチンは、アイランドも壁面側もオリジナルで設計し、製作した。アイランドは幅2000×奥行き750mm、壁面側は幅2750×奥行き650mm。天板は4mmのステンレス無垢板にした。カウンター下部の扉と引き出しは、ラワン材の防水ウレタン塗装仕上げ。
この家が完成してから、自宅でホームパーティーを開くことも増えたというオーナー夫妻。オープン感があって機能的なキッチンが大変役立っている。
この家が完成してから、自宅でホームパーティーを開くことも増えたというオーナー夫妻。オープン感があって機能的なキッチンが大変役立っている。
こだわりの調理器具やキッチン道具を、見せながら収納できる飾り棚も設置。幅1750×奥行き330mmの棚は、収納量もたっぷり。
「土間は冬場は底冷えすることなく、夏は涼しく快適です。窓からの自然の景色や太陽の光をたくさん感じられ、とても気持ちがいいです」とオーナー夫妻。ガスコンロ前などは油はねで汚れやすいので、マットを敷いたりして対応しているそう。
掃き出し窓の先はカーポートへつながる通路。買い物した荷物をここから搬入でき、とても重宝している。
掃き出し窓の先はカーポートへつながる通路。買い物した荷物をここから搬入でき、とても重宝している。
こちらは玄関扉を入ったところ。外と内の緩衝帯となる土間スペースだ。右はリビングへ入る引き戸で、手前のマットでルームシューズに履き替え、室内へ入る。
リビング引き戸はインドの鉄道の線路の枕木をリユースしたもの。サイズやディテールを決め、都内インテリアショップで特注製作したこだわりのアイテム。
北側にある玄関に、南からの明るい光が通るようにと、小窓も設置。光だけでなく空気の循環にも役立っている。ガラスはシャビーなインテリア小物とも相性のいいチェッカーガラス。
左手、キッチンへの扉は洗練されたブルーグレイに。ガラスは小窓と同じチェッカーガラス、ドアノブは真鍮製。
リビング引き戸はインドの鉄道の線路の枕木をリユースしたもの。サイズやディテールを決め、都内インテリアショップで特注製作したこだわりのアイテム。
北側にある玄関に、南からの明るい光が通るようにと、小窓も設置。光だけでなく空気の循環にも役立っている。ガラスはシャビーなインテリア小物とも相性のいいチェッカーガラス。
左手、キッチンへの扉は洗練されたブルーグレイに。ガラスは小窓と同じチェッカーガラス、ドアノブは真鍮製。
北側とは思えないほど、明るい玄関。明るさの理由はドアの左右・上部をフロストガラスにしていること。採光は確保しながらプライバシーにも配慮した素材選びで、さらに断熱のため、ペアガラス仕様となっている。
玄関扉はオーナーの提案により、タモ材無垢板を斜めに貼り付けて表情をつけたデザインに。オイルでやや濃い目のブラウンに塗装して仕上げている。下部は雨などによる色あせを防ぐため、ステンレスプレートを巻き付けて劣化を防止。
玄関扉はオーナーの提案により、タモ材無垢板を斜めに貼り付けて表情をつけたデザインに。オイルでやや濃い目のブラウンに塗装して仕上げている。下部は雨などによる色あせを防ぐため、ステンレスプレートを巻き付けて劣化を防止。
約3畳の広さの1階洗面所では、オーナー支給の古材木枠付き鏡を主役に、周囲の棚の木材や塗料などを選定した。そうした素材が持つ強い印象に負けないよう、照明は個性のある真鍮製アームランプをチョイス。他にもダウンライトや高窓によって十分な採光を確保している。
洗面所の天井には室内干しができる物干し金物を設置。天候の悪い日や冬場などに大活躍している。
1階のトイレは、キッチン扉と同じブルーグレイ。何パターンかのサンプルを用意し、オーナーと微妙な色味を確認しながら決定した。
オープンな1階とは対照的に、2階は廊下を設け、各居室を独立させた静かな空間。主寝室と子ども部屋、納戸、トイレが並んでいる。この部分の天井の高さは最大5m。高い窓から白い壁に光が降り注ぎ、ギャラリーのようにしっとり落ち着いた雰囲気が漂っている。
リビングの大きな窓の外には、室内と外を自然につなぐウッドデッキがある。このデッキや庭を使って、友人とBBQをしたり、キャンプをしたりして楽しんでいるそう。
玄関上の庇は壁から1.2m張り出した作り。雪の加重を考慮し、構造躯体と一体化させ、複雑に梁を組んで下地をつくっている。構造材はほぼすべての部分に新潟県産の越後杉を使用。「ふるさと越後の家づくり事業」の補助金を受けられ、地産地消の地域経済活性化に少しでもつながればとの平さんの考えからだ。
土台部分にはヒノキ材、化粧大梁には木目の落ち着いた米マツ材も使用している。
土台部分にはヒノキ材、化粧大梁には木目の落ち着いた米マツ材も使用している。
外壁は耐久性に優れていることからガルバリウム鋼板に。鋼板の裏には断熱材を吹き付け、断熱性と防音性をアップ。オーナーの好きなブルーグレイの外壁は、豊かな田園風景の中で落ち着いた佇まいを見せている。
一部、大きく突出した部分は2階廊下の細長い窓部分。シンプルな中に個性が光る、ひねりのきいたデザインである。
一部、大きく突出した部分は2階廊下の細長い窓部分。シンプルな中に個性が光る、ひねりのきいたデザインである。
土間を現代風に、快適で機能的な空間として取り入れた家。家を引き渡した後、実際に住んでいる様子を見せてもらった平さんは、「住まいは完成したところが終点ではなく、住まい手さんとの暮らしの中で、どんどんと素敵に成長していくんだな」と感じたという。
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