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建築家やデザイナーがウェブ発信するときに知っておきたいこと
建築系ウェブメディア『アーキテクチャーフォト』を運営する後藤連平さんに、ウェブやSNSでの発信方法をより充実させるコツをうかがいました!
Haruki Makio
2018年11月5日
建築やデザイン系の翻訳・通訳・ライティング、PR等をしています。誰かに伝えたくなるようなデザインに出会うのが大好きです。
さまざまなウェブサイトやSNSを眺めて情報を得ることや、ウェブ上で情報発信していく機会が増えています。建築家やデザイナーがどのようにウェブ発信していくかということは、ブランディングやマーケティングといったビジネス面からもますます重要になっています。
この記事では、月間平均約24万超のページビューを誇る建築系ウェブメディア『アーキテクチャーフォト』を運営されており、書籍『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社、2018年)も上梓されている後藤連平さんにお話をうかがいました。ウェブ発信する際に気に留めておきたいこと、さらに、Houzzをはじめとするプラットフォームサイトでの発信を充実させるヒントについてもお聞きしています。
この記事では、月間平均約24万超のページビューを誇る建築系ウェブメディア『アーキテクチャーフォト』を運営されており、書籍『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社、2018年)も上梓されている後藤連平さんにお話をうかがいました。ウェブ発信する際に気に留めておきたいこと、さらに、Houzzをはじめとするプラットフォームサイトでの発信を充実させるヒントについてもお聞きしています。
(出典『建築家のためのウェブ発信講義』p.71)
1. 自分が継続できることを「逆算」して発信する
さまざまなSNSでリアルタイムの情報が流れてくるいま、ウェブでは常に最新の情報が出ているというイメージがあります。せっかくたどり着いたデザイナーのウェブサイトが長いあいだ更新されていなかったら、活動しているのか心配になってしまうかもしれませんね。ですからウェブ発信を行うならば、ある程度の頻度で更新・発信していくことが大前提です。では発信を継続するにはどうすればよいのでしょうか?
後藤さんのアドバイスは「ウェブ発信しよう、続けよう、と意気込んでパソコンに向かっても苦痛になってしまいますし、結果的につづかないでしょう。それよりは、『逆算』をお勧めしています。つまり、まずは自分が好きなこと、継続できるものを見つけて、それをウェブ発信していくんです。継続できることはそれぞれの人によって異なります。たとえば、模型をつくることが好きだったら、簡単なコメントとともにブログやSNSに投稿していくというのもひとつの方法でしょう。自身の性格や活動を振り返ってみてください。そこにヒントがあるはずです」
たしかに、これなら続けられそうです。まずはふだんの仕事や興味・関心から、継続できそうな方法を探してみましょう。
2.「ファンづくり」の視点を大切にする
住宅の設計やリノベーションの仕事では、住まい手の友人や知り合いといったネットワークを介して依頼されることもおおいでしょう。後藤さんご自身も、過去に設計実務に携わっておられたときに友人からの依頼で住宅を設計されたそうです。「毎日のようにいろいろな場に顔をだして友人を増やしつづけていくというのは、もしもできたら楽しそうですけれど(笑)、設計等の業務を行いながらと考えると現実的には難しいですよね。でもネットを活用すれば、広範囲での『ファンづくり』が効率的にできて、たくさんの人に親しみを感じてもらうことも可能です」
ウェブ上でのファンづくりの話になると、後藤さんはいつも卓球の福原愛選手を思いうかべるそうです。「福原選手が子どものころに泣きながら卓球をしていた姿が今でも印象に残っています。そうやって成長過程をテレビでみていた人は間違いなく多いはずで、だからこそ福原選手は大人になっても皆に親しまれているのだと思います。ネットの普及以前は大勢の人に知ってもらい応援してもらうことはテレビでないとできなかったけれど、いまはSNSなどで自分を見せていくということができるようになっています」
1. 自分が継続できることを「逆算」して発信する
さまざまなSNSでリアルタイムの情報が流れてくるいま、ウェブでは常に最新の情報が出ているというイメージがあります。せっかくたどり着いたデザイナーのウェブサイトが長いあいだ更新されていなかったら、活動しているのか心配になってしまうかもしれませんね。ですからウェブ発信を行うならば、ある程度の頻度で更新・発信していくことが大前提です。では発信を継続するにはどうすればよいのでしょうか?
後藤さんのアドバイスは「ウェブ発信しよう、続けよう、と意気込んでパソコンに向かっても苦痛になってしまいますし、結果的につづかないでしょう。それよりは、『逆算』をお勧めしています。つまり、まずは自分が好きなこと、継続できるものを見つけて、それをウェブ発信していくんです。継続できることはそれぞれの人によって異なります。たとえば、模型をつくることが好きだったら、簡単なコメントとともにブログやSNSに投稿していくというのもひとつの方法でしょう。自身の性格や活動を振り返ってみてください。そこにヒントがあるはずです」
たしかに、これなら続けられそうです。まずはふだんの仕事や興味・関心から、継続できそうな方法を探してみましょう。
2.「ファンづくり」の視点を大切にする
住宅の設計やリノベーションの仕事では、住まい手の友人や知り合いといったネットワークを介して依頼されることもおおいでしょう。後藤さんご自身も、過去に設計実務に携わっておられたときに友人からの依頼で住宅を設計されたそうです。「毎日のようにいろいろな場に顔をだして友人を増やしつづけていくというのは、もしもできたら楽しそうですけれど(笑)、設計等の業務を行いながらと考えると現実的には難しいですよね。でもネットを活用すれば、広範囲での『ファンづくり』が効率的にできて、たくさんの人に親しみを感じてもらうことも可能です」
ウェブ上でのファンづくりの話になると、後藤さんはいつも卓球の福原愛選手を思いうかべるそうです。「福原選手が子どものころに泣きながら卓球をしていた姿が今でも印象に残っています。そうやって成長過程をテレビでみていた人は間違いなく多いはずで、だからこそ福原選手は大人になっても皆に親しまれているのだと思います。ネットの普及以前は大勢の人に知ってもらい応援してもらうことはテレビでないとできなかったけれど、いまはSNSなどで自分を見せていくということができるようになっています」
(出典『建築家のためのウェブ発信講義』p.81)
3. 信頼される発信を心がける
ファンとして親しみを感じてもらうだけでなく、そこからビジネスに展開する場面では、信頼されることもとても大切です。後藤さんは、その鍵となるのは「有用な情報を発信できるかどうか」だと言います。
「建築やデザインの業界では全てが教科書に載っているわけではなく、経験の中で学んできている部分が大きいですよね。たとえば住宅をつくるときの建材の選び方なども、それぞれの設計者が独自のノウハウを持っていて、広く共有されていなかったりします。
建築家やデザイナーたちが自分のなかにストックしているようなことも、隠しているよりも発信することでメリットを得られる時代になってきました。そのような有益な情報をウェブなどの場で書いて提供していくことによって信頼を得ることにつながります。そして、自分の知識に対して誰かからアクションがあり、結果的には仕事につながっていくということですね。加えて言うと、単純に数だけを追うのではなく、将来的に依頼者が増えるような、狭くても深い発信を心がけるべきだと思います」
4.情報は受け手にあわせて編集する
継続的に発信し、それがファンづくり、信頼につながっていく……。建築家やデザイナーにとっての良いウェブ発信の形が見えてきました。すこし上級編として、情報をどのように編集するかについても触れておきましょう。ここでは「編集」といっても特別に難しいことではなく、発信の先にどのような人がいるかを具体的に想定するだけでも、発信がぐっと効果的になります。
単純な例でいうと、専門的なデザイン言語で説明するような「あこがれの対象としてのデザイナー」、あるいは悩みを気軽に相談できるような「身近な存在としてのデザイナー」、どちらが自身の活動イメージに合っているでしょうか? 実際の状況と発信方法があっていないと、チグハグな印象になってしまいますね。
後藤さんによれば、「どういう人が自分のお客さんになってくれたかだけでなく、これからどういう人とお仕事をしていきたいかというビジョンも明確にすると、未来に向けての見せ方もはっきりしていく」そうです。
3. 信頼される発信を心がける
ファンとして親しみを感じてもらうだけでなく、そこからビジネスに展開する場面では、信頼されることもとても大切です。後藤さんは、その鍵となるのは「有用な情報を発信できるかどうか」だと言います。
「建築やデザインの業界では全てが教科書に載っているわけではなく、経験の中で学んできている部分が大きいですよね。たとえば住宅をつくるときの建材の選び方なども、それぞれの設計者が独自のノウハウを持っていて、広く共有されていなかったりします。
建築家やデザイナーたちが自分のなかにストックしているようなことも、隠しているよりも発信することでメリットを得られる時代になってきました。そのような有益な情報をウェブなどの場で書いて提供していくことによって信頼を得ることにつながります。そして、自分の知識に対して誰かからアクションがあり、結果的には仕事につながっていくということですね。加えて言うと、単純に数だけを追うのではなく、将来的に依頼者が増えるような、狭くても深い発信を心がけるべきだと思います」
4.情報は受け手にあわせて編集する
継続的に発信し、それがファンづくり、信頼につながっていく……。建築家やデザイナーにとっての良いウェブ発信の形が見えてきました。すこし上級編として、情報をどのように編集するかについても触れておきましょう。ここでは「編集」といっても特別に難しいことではなく、発信の先にどのような人がいるかを具体的に想定するだけでも、発信がぐっと効果的になります。
単純な例でいうと、専門的なデザイン言語で説明するような「あこがれの対象としてのデザイナー」、あるいは悩みを気軽に相談できるような「身近な存在としてのデザイナー」、どちらが自身の活動イメージに合っているでしょうか? 実際の状況と発信方法があっていないと、チグハグな印象になってしまいますね。
後藤さんによれば、「どういう人が自分のお客さんになってくれたかだけでなく、これからどういう人とお仕事をしていきたいかというビジョンも明確にすると、未来に向けての見せ方もはっきりしていく」そうです。
(出典『建築家のためのウェブ発信講義』p.13)
5. プラットフォームサイトを有効活用する
後藤さんの著書にも、Houzzのようなプラットフォームサイトがいくつか挙げられています。建築家やデザイナーがウェブ発信をしていくうえで、プラットフォームサイトを有効活用するヒントについてもうかがってみました。
「これまであまり考えたことはなかったんですが……改めて考えてみると、自分のウェブサイトとは雰囲気を変えて、一般の人に分かりやすい表現でプレゼンするのがよさそうですね」
「建築家やデザイナーのウェブサイトって同業者が見るケースも多く、その慣習に沿ってつくってあることが多いんです。たとえば『Works』(過去の作品など)、『About』(事務所やデザイナーの概要)……といった、同業者を意識した見せ方は、実は一般の方には分かりにくいことも多いと言えます」とのこと。
自分のウェブサイトとプラットフォームサイトというように明確に場が分かれていれば、表現方法が異なっていても違和感はありません。自分のウェブサイトでは空間構成や考え方について専門的な表現で伝えている場合でも、プラットフォームサイトでは一般の方々にも伝わりやすいように表現や視点を変えることが有効でしょう。
「一般層向けのプラットフォームサイトは、お施主さんに近い立場の人たちがたくさん閲覧していることは明らかです。自分のサイト以外にもアーカイブ的に発信できる場があるのは、流入経路が増えるという点でも、かなりの意味があることです。あとは、ちょっとした言葉の書きかたで、見てもらえるか、クリックされるかどうかが変わってくるので、プロフィールの書き方も大事ですね」と後藤さん。プロフィールの書き方については、こちらの記事も参考になるかもしれません。
5. プラットフォームサイトを有効活用する
後藤さんの著書にも、Houzzのようなプラットフォームサイトがいくつか挙げられています。建築家やデザイナーがウェブ発信をしていくうえで、プラットフォームサイトを有効活用するヒントについてもうかがってみました。
「これまであまり考えたことはなかったんですが……改めて考えてみると、自分のウェブサイトとは雰囲気を変えて、一般の人に分かりやすい表現でプレゼンするのがよさそうですね」
「建築家やデザイナーのウェブサイトって同業者が見るケースも多く、その慣習に沿ってつくってあることが多いんです。たとえば『Works』(過去の作品など)、『About』(事務所やデザイナーの概要)……といった、同業者を意識した見せ方は、実は一般の方には分かりにくいことも多いと言えます」とのこと。
自分のウェブサイトとプラットフォームサイトというように明確に場が分かれていれば、表現方法が異なっていても違和感はありません。自分のウェブサイトでは空間構成や考え方について専門的な表現で伝えている場合でも、プラットフォームサイトでは一般の方々にも伝わりやすいように表現や視点を変えることが有効でしょう。
「一般層向けのプラットフォームサイトは、お施主さんに近い立場の人たちがたくさん閲覧していることは明らかです。自分のサイト以外にもアーカイブ的に発信できる場があるのは、流入経路が増えるという点でも、かなりの意味があることです。あとは、ちょっとした言葉の書きかたで、見てもらえるか、クリックされるかどうかが変わってくるので、プロフィールの書き方も大事ですね」と後藤さん。プロフィールの書き方については、こちらの記事も参考になるかもしれません。
この記事では、建築家やデザイナー向けメディアのプロである後藤連平さんに、ウェブ発信のコツについてうかがいました。ご興味を持たれたかたは、書籍『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)もぜひ手にとってみてください。施主候補との信頼関係を築くコミュニケーションについて、そして読者の目的にあった情報発信の方法など、SNS時代ならではの新しい行動戦略本となっています。この記事でもご紹介した項目のほかにも、ワード検索やタグの話、藤村龍至さん(RFA)や豊田啓介さん(noiz)をはじめとするウェブを使いこなしている建築家やデザイナーの実例もあります。これからのウェブ発信のヒント満載です。
【後藤連平(ごとう・れんぺい)さんプロフィール】
architecturephoto.net編集長。2002年京都工芸繊維大学卒業。2004年同大学大学院修了。組織系設計事務所勤務の後、2007年に設計事務所に勤務しながら『アーキテクチャーフォト』を立ちあげる。ひと月の訪問者数12,000人以上の建築系求人情報サイト「アーキテクチャーフォト・ジョブボード」、古書・雑貨のオンラインストア「アーキテクチャーフォトブックス」の運営までも手がける。
Photo©️長谷川健太
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architecturephoto.net編集長。2002年京都工芸繊維大学卒業。2004年同大学大学院修了。組織系設計事務所勤務の後、2007年に設計事務所に勤務しながら『アーキテクチャーフォト』を立ちあげる。ひと月の訪問者数12,000人以上の建築系求人情報サイト「アーキテクチャーフォト・ジョブボード」、古書・雑貨のオンラインストア「アーキテクチャーフォトブックス」の運営までも手がける。
Photo©️長谷川健太
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