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大胆なデザインでプライバシーと開放感を両立させた、都市型住宅の理想形
外に閉じ、中に開く。セキュリティ面に配慮しつつ、天窓や吹き抜け、パティオを囲む大開口で明るく伸びやかな空間を実現した、美しいコートハウス。
Miki Anzai
2018年11月14日
子どもの通学の利便性から、都内屈指の文教地区に土地を購入したオーナー。近隣住宅が間近に迫るため、防犯面からも「外から中の気配を感じさせない」家づくりを希望したという。外に対しては徹底的に閉じた建物でありながら、玄関の扉を開けると、息をのむような開放的な内部空間が広がっている。隣家の視線を気にすることなく、光と風と緑をふんだんに感じられる、都市型住宅の理想といえる住まいをご紹介する。
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:夫婦と子ども
構造:ツーバイフォー(一部ツーバイシックス)工法
居住形態:新築
設計・施工:株式会社ハウゼ
竣工:2017年3月
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:夫婦と子ども
構造:ツーバイフォー(一部ツーバイシックス)工法
居住形態:新築
設計・施工:株式会社ハウゼ
竣工:2017年3月
モダンでシックな外観。まるでRC造の建物のようだが、実は木造だ。片流れの屋根付き部分の外壁を左官仕上げにして、少し前にせり出た部分を大判タイル仕上げに。あえて2つのボリュームの仕上げ素材と配置を変えたのは、意匠性もさることながら、前面4mの道路に対し、ビルトインガレージのシャッターの圧迫感をなくすためでもある。車の運転が趣味のオーナーだけに、外車4台の駐車スペースの確保は必須条件だった。
建物の重なりの小口部分の壁は、たっぷり25cmの厚さをもたせ、アイアンゲートを設置。玄関に至る堅牢なアプローチを演出している。セキュリティを気にするオーナー夫妻のために、建物の開口は細いスリット状にし、内部の空間構成を連想できないよう工夫した。「デザインで防犯性を高めることを意識した」と、設計担当者の北條忍さんは語る。
建物の重なりの小口部分の壁は、たっぷり25cmの厚さをもたせ、アイアンゲートを設置。玄関に至る堅牢なアプローチを演出している。セキュリティを気にするオーナー夫妻のために、建物の開口は細いスリット状にし、内部の空間構成を連想できないよう工夫した。「デザインで防犯性を高めることを意識した」と、設計担当者の北條忍さんは語る。
吹き抜けのエントランスホール。視線の抜ける先は、葉の色づきが楽しめるイロハモミジのある坪庭。鏡とガラスをうまく利用し、視線の連続性を水平・垂直の両方向に生み出している。右の縦長壁の大理石の柱にも景色が写り込み、その奥のブロンズミラーを張った引き戸の裏は、駐車場とシューズクロークに続いている。直線的なラインの中にS字のカーブを描くことで、玄関にやわらかさももたらしている。
2階へと続く階段は、床から1段上げて、ワンクッション置いてからスタートさせている。「シームレスな空間に、段差を設けることで、何か別のゾーンが生まれる予感をもたさせたかった」と北條さん。
2階へと続く階段は、床から1段上げて、ワンクッション置いてからスタートさせている。「シームレスな空間に、段差を設けることで、何か別のゾーンが生まれる予感をもたさせたかった」と北條さん。
新築にあたり、多くの注文をつけなかったオーナーだが、色調はモノトーンで統一したいという要望があった。本磨きの黒の大理石の壁と、オフホワイトの大判サイズのタイルの床が、ほどよい光沢を放っている。
落ち着いた空間に、より透明感を出すため、階段手前の手すりはガラス張りにし、壁側の手すりはスチールのフラットバーで、ブラケットも特別にデザインして、シャープさを強調した。
落ち着いた空間に、より透明感を出すため、階段手前の手すりはガラス張りにし、壁側の手すりはスチールのフラットバーで、ブラケットも特別にデザインして、シャープさを強調した。
重厚感のあるダイニングキッチン。エントランスと同じ大理石がアクセントになっている。キッチンから家具に至るまで、美しいモノトーンの大空間をつくりだすためのトータルコーディネートが施されている。
キッチン:CUCINA
ダイニングチェアとラグ:カッシーナ・イクスシー
カウンター上シャンデリア:トーヨーキッチンスタイル クランカーボックス120
キッチン:CUCINA
ダイニングチェアとラグ:カッシーナ・イクスシー
カウンター上シャンデリア:トーヨーキッチンスタイル クランカーボックス120
ダイニングとリビングの間に設けた天井高2.4mのフリースペース。手前のダイニング(天井高は最高4.8m)と、奥のリビング(天井高3.6m)に比べ、ぐっと高さを抑えた空間だ。「外に開いていない建物だけに、あえて室内は居心地の変化をつけることで、開放感を得やすくしています」と北條さん。また、ここだけ天井を低くすることで、屋上が捻出でき、そこからダイニングに十分な光を取り込める構造にもなっている。
リビングとの境には、2段のステップを設け、大人数を招いてのパーティーの際は、ゲストがここに腰掛けることもできる。この階段上の天井にはロールスクリーンが隠されており、スクリーンを下げると、奥のリビングが完全に独立したシアタールームになる。
リビングとの境には、2段のステップを設け、大人数を招いてのパーティーの際は、ゲストがここに腰掛けることもできる。この階段上の天井にはロールスクリーンが隠されており、スクリーンを下げると、奥のリビングが完全に独立したシアタールームになる。
パティオのシンボルツリー(シマトネリコ)に視線が抜けるリビング。3mの大きな開口は、ステンレス製の特注品。ブラインドも設置しているが、ツリーの左側に高い外壁を設けたので、隣家と目線が交差せず、ブラインドを下げる必要はないという。パティオを挟んだ奥は、奥様と子どもたちの寝室だが、安全第一で下部の窓はFIXに、上部の窓のみ開閉できるようにした。リビングの収納棚は、十字型の窓と合わせてデザインしたもの。スリットやクロスのデザインは、外観とインテリアの共通したテーマになっている。
ソファ:ARFLEX JAPAN
ソファ:ARFLEX JAPAN
日が沈むと、リビングはウォールウォッシャー(壁面に美しい光を広げるダウンライト)などの間接照明の効果もあり、ぐっと大人の雰囲気に。150インチのスクリーンとプロジェクターも完備されている。
プロドライバーの佐藤琢磨さんが、インディ500のレースでアジア人初の優勝を果たしたとき、大画面で観戦していたというオーナーも、「さすがに臨場感は抜群でした」と満足げだ。
オーディオステレオ:バング&オルフセン ジャパン
プロドライバーの佐藤琢磨さんが、インディ500のレースでアジア人初の優勝を果たしたとき、大画面で観戦していたというオーナーも、「さすがに臨場感は抜群でした」と満足げだ。
オーディオステレオ:バング&オルフセン ジャパン
1階のご主人専用のキッチン付き寝室。仕事で夜遅く帰宅しても、2階にいる家族を起こすことなく、ここで料理をしたり、お酒のグラスを傾けたりしているそう。パティオを挟んで、愛車をほどよい距離感で眺めることもできる、男性にとって憧れの隠れ家的空間だ。
ベッド・ソファ:BoConcept Japan
ベッド・ソファ:BoConcept Japan
JAXSONの浴槽を組み込んだ自由設計のシステムバスは、ニッコー株式会社の「バンクチュール」。オーナーが軽井沢に建てた別荘の浴室は、全面ガラス張りでパノラマの自然を取り込めるが、それは都内では叶わぬ夢。代わりに大きめのガラス窓から、バルコニーに植えたクロチクが見えるように工夫した。
自然を楽しむために「外に開く」コンセプトで建てた軽井沢の別荘とは対照的に、この家は「外に閉じ、中に開く」ことで、都内とは思えない開放感と快適性、セキュリティー上の安心感を実現している。全体のプランは「田の字型」で、その中央に吹き抜けを配し、2つのパティオを設置することで、プライバシーを守りながら、明るく伸びやかな空間を創出している。
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自然を楽しむために「外に開く」コンセプトで建てた軽井沢の別荘とは対照的に、この家は「外に閉じ、中に開く」ことで、都内とは思えない開放感と快適性、セキュリティー上の安心感を実現している。全体のプランは「田の字型」で、その中央に吹き抜けを配し、2つのパティオを設置することで、プライバシーを守りながら、明るく伸びやかな空間を創出している。
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