コメント
エクステリアに溶け込んだ美しいガレージ
エクステリアに隠された美しいガレージをみてみましょう。
Eric Reinholdt
2018年10月14日
車は形ある所有物の中でも物理的にもっとも大きい部類に入る。それもあって、自宅や家の敷地で車のためにかなりのスペースを割くのはしかたないと考えがちだ。物理的に大きいため、見た目の美しさを実現するのは容易ではない。ガレージに必要とされるかなりの広さの空間をどう組み込むか、建築家やデザイナーは常に知恵をしぼってきた。家から独立させる、ひと続きにする、格子で囲む、家の脇に、裏手に、下に配置するなど、いずれにしても何らかの策が必要だ。
住宅におけるガレージの進化は、私たちの生活の中で車の位置づけがどう変化してきたかを映し出している。かつて、ガレージは敷地の奥に独立して立つ小さな小屋で、馬車を納めておく場所だった。やがて、実用面と便利さを考えて敷地の前面へ移動し、家と通りに近い場所に設けられるようになった。家の正面である玄関ポーチがガレージになったとするとらえ方もある。訪れた人を最初に迎える、新たな正面玄関の形だ。
車の出し入れのしやすさを確保し、車という大きな物体を隠しつつ、表の顔としてふさわしい外観を維持する――このバランスをどうとることができるのだろうか。ガレージを外観に溶け込ませた、すぐれた工夫を凝らしたガレージの例を紹介する。
住宅におけるガレージの進化は、私たちの生活の中で車の位置づけがどう変化してきたかを映し出している。かつて、ガレージは敷地の奥に独立して立つ小さな小屋で、馬車を納めておく場所だった。やがて、実用面と便利さを考えて敷地の前面へ移動し、家と通りに近い場所に設けられるようになった。家の正面である玄関ポーチがガレージになったとするとらえ方もある。訪れた人を最初に迎える、新たな正面玄関の形だ。
車の出し入れのしやすさを確保し、車という大きな物体を隠しつつ、表の顔としてふさわしい外観を維持する――このバランスをどうとることができるのだろうか。ガレージを外観に溶け込ませた、すぐれた工夫を凝らしたガレージの例を紹介する。
居住空間の下に配置
都市部や傾斜のある敷地など、出入口より高い位置に居住空間をおくメリットがある場合に取り入れやすい方法だ。ただ、居住空間を上階におくと、道路面に位置するガレージの扉は一層目につきやすい。写真の例は、シダーの板を縦張りにした一面の壁とガレージ扉を一体化させてうまく目立たなくしている。ガレージの扉は壁面に引き込むつくりが一般的だが、ここでは壁と同じ平面にし、壁に溶け込んでいるため、扉を閉めた状態ではほとんどわからない。
都市部や傾斜のある敷地など、出入口より高い位置に居住空間をおくメリットがある場合に取り入れやすい方法だ。ただ、居住空間を上階におくと、道路面に位置するガレージの扉は一層目につきやすい。写真の例は、シダーの板を縦張りにした一面の壁とガレージ扉を一体化させてうまく目立たなくしている。ガレージの扉は壁面に引き込むつくりが一般的だが、ここでは壁と同じ平面にし、壁に溶け込んでいるため、扉を閉めた状態ではほとんどわからない。
1階の大部分がガレージのため、2階の居住空間へ続く玄関は明確にそれとわかるようにしたい。ここでは玄関扉を引き込んだ位置に設け、壁面より奥にすることで、入口が陰の中にたたずむ形に。このわずかな違いが「入口はこちら」というメッセージになる。
前述より規模は小さくなるが、こちらも同様のコンセプト。羽目板をモチーフにしたファサードのデザインにガレージの扉を溶け込ませている。この素材は家のほかの場所にも使われ、家全体をまとめている。
ガレージ扉部分を下見張りの外装材と同じ素材で張ると、開口部も扉というより壁に近い感覚になる。ガレージ頭上に張り出したオーバーハングが陰をつくり、ガレージ扉はさらに存在感を消している。
この家の場合、ガレージは明らかに家のエントランスを構成する要素のひとつだが、あくまでも脇役だ。エントランスの各要素は車ではなく人を中心に、心地よく感じられるように設計されている。
道路からガレージまでのアプローチも、ふたつの「歩道」に分けられ、何を重視したのかが明確だ。玄関扉の輪郭によって、すぐ横がガレージなのだとわかるが、玄関扉を主役にしている。
道路からガレージまでのアプローチも、ふたつの「歩道」に分けられ、何を重視したのかが明確だ。玄関扉の輪郭によって、すぐ横がガレージなのだとわかるが、玄関扉を主役にしている。
目につかない地下階へ
住まい手が何を重視するかをよく表しているのがこのガレージ。車はエントランス周辺から完全に除外されている。この写真を一見しただけではわからないが、車4台分のガレージが右手に隠れている。
住まい手が何を重視するかをよく表しているのがこのガレージ。車はエントランス周辺から完全に除外されている。この写真を一見しただけではわからないが、車4台分のガレージが右手に隠れている。
車を4台停められるガレージにはどうしても広い面積が必要になる。このプロジェクトではガレージを建物の基礎のように利用した。土地を掘り下げ、広範囲におよぶ基礎のようにガレージを配置し、そこから建物が構造的に展開する。
ガレージの駐車スペースを前面道路の入口に対して90度に配置したため、さらに外から見えにくい。こうした仕様を考える場合は、車庫入れに必要なスペースや車のサイズについて、事前に十分な検討が必要になる。
愛車と暮らす家づくり
ガレージの駐車スペースを前面道路の入口に対して90度に配置したため、さらに外から見えにくい。こうした仕様を考える場合は、車庫入れに必要なスペースや車のサイズについて、事前に十分な検討が必要になる。
愛車と暮らす家づくり
横に配置
現在、住居スペースに繋がるタイプのガレージが主流なのは、便利だからにつきる。写真の例の場合、ガレージと建物との関係が成功している理由として、ふたつの特徴が挙げられる。まず、外装材を家と同じにした点。今回の記事で取り上げたガレージも同様の例が多い。
ふたつめは、ガレージの屋根を陸屋根にしてルーフトップデッキにしたこと。人が集まれる空間をつくり、ガレージのボリュームを小さく抑えた。建物を前にしたとき、2階建ての建物の玄関部分とガラスを使ったファサードに自然と視線が引きつけられる。このふたつの効果で、使いやすいガレージを設けながら、正面エントランスが明確に示されたファサードが成立した。
現在、住居スペースに繋がるタイプのガレージが主流なのは、便利だからにつきる。写真の例の場合、ガレージと建物との関係が成功している理由として、ふたつの特徴が挙げられる。まず、外装材を家と同じにした点。今回の記事で取り上げたガレージも同様の例が多い。
ふたつめは、ガレージの屋根を陸屋根にしてルーフトップデッキにしたこと。人が集まれる空間をつくり、ガレージのボリュームを小さく抑えた。建物を前にしたとき、2階建ての建物の玄関部分とガラスを使ったファサードに自然と視線が引きつけられる。このふたつの効果で、使いやすいガレージを設けながら、正面エントランスが明確に示されたファサードが成立した。
ランドスケープと考え抜かれたデザインの相乗効果で2台分のガレージは正面からはほとんど見えない。植栽と低い壁が訪れた人をエントランスへ導き、左側にある車庫までのドライブウェイはあくまで脇役の印象を受ける。
平面図上部(左側が道路)、横に長いスペースを2台分のガレージが占めているのがわかる。(図面の9.)駐車スペースに左右両側からアクセスできる場合、またこの例のように駐車スペースまで奥行きのあるドライブウェイがある場合は、2台を縦列駐車する方法がいい。この条件がそろわない場合は、設計段階でガレージ内にもう少しゆとりをもたせ、バックしやすいようにするといい。
急斜面の土地に立つこちらの住宅では、左側の壁に見える突出した薄いスチール板が、ガレージ入口の目印だ。この例もほかと同様、人と車それぞれの動線を明確に、かつ意識的に区切った。オープンでランダムにうねるようなアプローチは歩いてくる人を迎え入れ、車の出入りとは完全に分けている。ガレージのドアを閉めた状態は、扉がずらりと並ぶよくある光景とは違い、どっしりと立つ壁と一体化している。
向きをずらす
ガレージ扉を通りから見えないように向ければ、必然的にメインの入口から見たガレージの存在感は小さくなる。ただし、駐車のためによりドライブウェイが必要があるので、それに伴う玄関まわりへの影響は考慮しなくてはいけない。
ガレージ扉を通りから見えないように向ければ、必然的にメインの入口から見たガレージの存在感は小さくなる。ただし、駐車のためによりドライブウェイが必要があるので、それに伴う玄関まわりへの影響は考慮しなくてはいけない。
ガレージの扉部分も下見張りにして壁面とフラットにした例。オーダーメイドだが、プロの施工会社であれば必ず応じてもらえるはずだ。ガレージを斜めに向けると、道路からの入庫はしやすくなる一方、バックは難しくなる。
隠して溶け込ませる
どこまでが塀でどこからがガレージなのか見分けるのが難しいのが、こちらの家。デザインを広範囲にわたって取り入れている点が、このコンセプトを成功させた鍵だ。塀は公共の空間と私的な空間を隔てるのに最適だ。塀の高さをガレージに必要な高さとそろえ、両者がシームレスに溶け込む。
どこまでが塀でどこからがガレージなのか見分けるのが難しいのが、こちらの家。デザインを広範囲にわたって取り入れている点が、このコンセプトを成功させた鍵だ。塀は公共の空間と私的な空間を隔てるのに最適だ。塀の高さをガレージに必要な高さとそろえ、両者がシームレスに溶け込む。
塀はガレージ扉へと移行する。ガレージ扉はスライドして頭上に納まるオーバーヘッドドアのタイプ。ガレージの屋根はプライベートプールがある左側のエリアまで一部かかっているため、どこまでがガレージでどこからがプールなのかの境界はあいまいだ。
そのほかの工夫
視線を頭上に向ける
エントランス部分でガレージの印象を和らげる方法はほかにもある。頭上に意匠を施すと視線が集まり、ガレージが目立たなくなる。格子状の屋根が効果的に使われ、階段から玄関までの道をさりげなく示している。
視線を頭上に向ける
エントランス部分でガレージの印象を和らげる方法はほかにもある。頭上に意匠を施すと視線が集まり、ガレージが目立たなくなる。格子状の屋根が効果的に使われ、階段から玄関までの道をさりげなく示している。
カーポート
ガレージが生まれたのは、屋根のなかった初期の自動車を風雨から守る手段が必要だったからだ。やがて、ガレージは単に車を置くだけの場所から、大型の収納庫兼作業スペースとして進化していく。使い勝手のいい収納が家のほかの場所に確保でき、あくまで単に車を保護できる場所があればいいのなら、カーポートはとくに建築の観点からみると魅力ある選択肢だ。見た目の存在感は最小限ながら、車を手軽に風雨から守り、屋根の下を通って家まで行くこともできる。あらかじめ考慮すれば、写真のようにちょっとした収納も備えられる。
ガレージが生まれたのは、屋根のなかった初期の自動車を風雨から守る手段が必要だったからだ。やがて、ガレージは単に車を置くだけの場所から、大型の収納庫兼作業スペースとして進化していく。使い勝手のいい収納が家のほかの場所に確保でき、あくまで単に車を保護できる場所があればいいのなら、カーポートはとくに建築の観点からみると魅力ある選択肢だ。見た目の存在感は最小限ながら、車を手軽に風雨から守り、屋根の下を通って家まで行くこともできる。あらかじめ考慮すれば、写真のようにちょっとした収納も備えられる。
車を停めていないとき、カーポートの使い道はじつに多彩だ。屋根の下でピクニックをしてもいいし、屋外での作業や遊び場として、くつろぐ場所として使ってもいい。
ここで紹介したどの例も、私たちが家の玄関ポーチをあきらめることなく車の恩恵にあずかれることを示してくれている。
ガレージ・カーポート施工の専門家を探す
エクステリア・外構の専門家を探す
世界の美しいガレージ50選
ガレージをモノの逃げ場にしない8つの方法
室内から愛車を眺めるビルトインガレージ11選
ここで紹介したどの例も、私たちが家の玄関ポーチをあきらめることなく車の恩恵にあずかれることを示してくれている。
ガレージ・カーポート施工の専門家を探す
エクステリア・外構の専門家を探す
世界の美しいガレージ50選
ガレージをモノの逃げ場にしない8つの方法
室内から愛車を眺めるビルトインガレージ11選
おすすめの記事
世界の家
スタイリッシュなスタジオに変貌を遂げたガレージ
倉庫として利用されていたガレージがどのようにしてアート、エクササイズ、おもてなしの時間を楽しむことのできる、明るく、気持ちの良い空間に変貌したかを見ていきましょう。
続きを読む
部屋別
ガレージをモノの逃げ場にしない8つの方法
車やバイク以外に、ガレージに何を置いていますか? シャッターをおろせば見えないからといって、隠してしまうのはもったいない! 収納のルールを決めて人に自慢できるおしゃれなガレージに変身させましょう。
続きを読む
写真特集
愛車のある暮らしにカスタマイズされた、10のガレージハウス
車好きに根強い人気を誇るガレージハウス。Houzzで見つけた事例を手がけた専門家たちに、工夫したポイントや留意点を聞きました。
続きを読む
イベント
2017年 Houzz日本版ユーザーが選んだ人気写真10選:ガレージ・車庫編
Houzz日本版のユーザーが2017年に最も多くのアイデアブックに保存した写真を空間別にご紹介。ガレージ・車庫編を発表します!
続きを読む
家づくりのヒント
愛車と暮らす家づくり
愛車のそばで暮らしたい、それは車好きにとって最高の贅沢。ときに眺め、ときに整備し、ときに車好きの友人と語らう、カーライフが充実する日本の家をご紹介します。
続きを読む
イベント
2016年 ハウズ日本版ユーザーが選んだ人気写真ベスト10:ガレージ・車庫編
ハウズ日本版のユーザーが2016年に最も多くのアイデアブックに保存した写真を空間別にご紹介。ガレージ編ベスト10を発表します!
続きを読む