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アンティークチェアの背もたれのデザインを知る:後編
アンティークチェアを見るのが楽しくなる、伝統的な椅子の背のデザインの数々。時代背景とともにさまざまな「チェアバック」をご紹介する記事の後編をお届けします。
西谷典子|Noriko Nishiya
2018年10月8日
前編に続き、家具デザインの歴史を紐解きながら、椅子の背(チェアバック)の呼び名とその由来、ストーリーを解説します。
椅子の背の透かし彫り「フレットワーク」
椅子の背板に、凝った透かし彫りが施されているデザインがありますが、この透かし彫りの部分を「フレットワーク」と呼びます。18世紀、キューバやホンジュラス産の高級マホガニー材がイギリスに輸入されましたが、これらを使った椅子には、フレットワークが多く採用されています。その代表といえるのがトーマス・チッペンデールの椅子で、ゴシック柄やロココ柄などその当時の流行をもとに、彼独自のデザインをつくり出しました。
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リボンバックチェア
その中でも、シルクのリボンを十字にかたどったロココスタイルのデザインは「リボンバックチェア」として名前が残っています。マホガニーに施した繊細な彫刻のあるチッペンデールのリボンバックチェアは、実際は数台しか現存していません。現代では写真のようにその繊細さや優美さはやや簡素化されているものの、愛らしいデザインが長い人気を誇る定番の椅子です。
その中でも、シルクのリボンを十字にかたどったロココスタイルのデザインは「リボンバックチェア」として名前が残っています。マホガニーに施した繊細な彫刻のあるチッペンデールのリボンバックチェアは、実際は数台しか現存していません。現代では写真のようにその繊細さや優美さはやや簡素化されているものの、愛らしいデザインが長い人気を誇る定番の椅子です。
スパイダーバックチェア
他にチッペンデールの活躍した時代につくられたものでは、「スパイダーバックチェア」があります。蜘蛛の巣をイメージさせるやや低めの背もたれが特徴で、18世紀に生まれた椅子のクラシックデザインのひとつです。
他にチッペンデールの活躍した時代につくられたものでは、「スパイダーバックチェア」があります。蜘蛛の巣をイメージさせるやや低めの背もたれが特徴で、18世紀に生まれた椅子のクラシックデザインのひとつです。
ホイールバックチェア
また、スパイダーバックをさらに小さくした丸い輪がいくつも連なったデザインは「ホイールバック(車輪)」と呼ばれます。「ウィンザーチェア」をはじめとするカントリーチェアの定番デザインです。
また、スパイダーバックをさらに小さくした丸い輪がいくつも連なったデザインは「ホイールバック(車輪)」と呼ばれます。「ウィンザーチェア」をはじめとするカントリーチェアの定番デザインです。
ライアバック(ハープバック)チェア
18、19世紀に生まれたネオクラシック時代のデザインは、古くギリシャ・ローマのデザインの影響を受けたものです。ネオクラシックを代表する椅子のデザインのひとつに、背板が古代ギリシャの竪琴(ライア)の形をしたものがあり、これを「ライアバック」といいます。現代ではシンプルに「ハープバック」と呼ばれており、ライアバックは古典的で少々気取った呼び方です。
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シェラトンチェア
背もたれが低めの四角形をしたシンメトリックデザインで、写真のようなドレープや竪琴、壺の彫刻があるものは、ネオクラシック時代の人気デザイナー、トーマス・シェラトンがヒットさせたデザインです。これらは総称して「シェラトンチェア」と呼び、18世紀イギリスの家具の歴史の黄金期のデザインでもあります。
背もたれが低めの四角形をしたシンメトリックデザインで、写真のようなドレープや竪琴、壺の彫刻があるものは、ネオクラシック時代の人気デザイナー、トーマス・シェラトンがヒットさせたデザインです。これらは総称して「シェラトンチェア」と呼び、18世紀イギリスの家具の歴史の黄金期のデザインでもあります。
シールドバック(キャメルバック)チェア
その黄金期に流行した盾の形の椅子の背もたれは通常「シールド(盾)バック」と呼ばれますが、トップがラクダのこぶのように見えるため「キャメルバック」と呼ばれることもあります。この椅子もまた、華奢なフレームとその繊細な木彫りの彫刻などが特徴の、18世紀を代表するデザインです。
その黄金期に流行した盾の形の椅子の背もたれは通常「シールド(盾)バック」と呼ばれますが、トップがラクダのこぶのように見えるため「キャメルバック」と呼ばれることもあります。この椅子もまた、華奢なフレームとその繊細な木彫りの彫刻などが特徴の、18世紀を代表するデザインです。
ヘッペルホワイトの代表デザイン、ウィートシーフバック
このシールドバックは、チッペンデールと同じ時代に活躍したデザイナー、トーマス・ヘッペルホワイトがよく用いたモチーフです。フレットワークに小麦のの透かし彫りを入れたデザインがのちに彼の代表作となります。現代では、盾の形をした背もたれで小麦をイメージした彫刻があり、脚がまっすぐの椅子はすべて「ヘッペルホワイトチェア」と呼ばれるほど、彼の代表的なデザインとして定着しています。
このシールドバックは、チッペンデールと同じ時代に活躍したデザイナー、トーマス・ヘッペルホワイトがよく用いたモチーフです。フレットワークに小麦のの透かし彫りを入れたデザインがのちに彼の代表作となります。現代では、盾の形をした背もたれで小麦をイメージした彫刻があり、脚がまっすぐの椅子はすべて「ヘッペルホワイトチェア」と呼ばれるほど、彼の代表的なデザインとして定着しています。
小麦の穂を束ねたようなデザインを「ウィートシーフバック」と呼び、ヘッペルホワイトがよく用いた透かし彫りのデザインとして知られます。ヘッペルホワイトは〈ギロー社〉で家具職人として多くを学びましたが、彼のデザインはチッペンデールとは違い、簡素化されたラインをもち、モチーフも小麦という、気取りのないデザインが多いようです。
バルーンバックチェア
後ろが風船のような楕円を描く背もたれのデザインは「バルーンバック」と呼ばれます。1830年頃登場し、1860年代にフランスのロココスタイルともに流行しました。この写真の背もたれのような風船を若干つぶした形のバルーンバックは、「ハートバック」というラブリーな別名もついています。
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バルーンバックの椅子にはたいてい、マホガニーやウォールナットなどの高級な木材が使用されています。産業革命や植民地政策で潤っていた19世紀のイギリスでは、高級素材を使い、凝った装飾を施したハイグレードな椅子がたくさん作られました。家具製作のバブル期ともいえるこの時代につくられたダイニングチェアは、華奢に見えて実は頑丈で座り心地もよく、素晴らしい仕上がりのものが多く見られます。
椅子の顔ともいえる背もたれのデザイン。この部分でだいたいの製作年代がわかり、その椅子がつくられた時代の背景やストーリーが見えてきます。この前後編で解説したチェアバックは、アンティークチェアに多く用いられる代表的なデザインなので、ぜひ覚えていただき、さらにアンティークに親しみを持っていただければと思います。
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