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スウェーデン式終活「死のお片付け」。その究極の断捨離方法とは?
残される人のためにも、自分の家は自分で片付ける。そんなスウェーデンの「終活」が話題です。
Janet Dunn
2018年9月15日
北欧には、デンマークの「ヒュッゲ」など、ライフスタイルの概念を語る数々の素晴らしい言葉があります。最近英語圏を中心に話題を集めているのが、スウェーデン発の「死のお片付け(death cleaning )」です。スウェーデン語で「死」と「掃除」を意味する「döstädning」という言葉からきているこの概念は、自分の死後に残された人のことを考えて家を片付ける「終活」のことです。
成熟した「片付け」
「片付け」という言葉が1950年代に初めて『ヴォーグ』誌に登場してから、2015年に『オックスフォード英語辞典』の新語リストに掲載されるまで、より良い生活のために片付けをするという考え方は世界中に広がりました。今回ご紹介するスウェーデンの人生経験豊富な女性は、片付けにはそれだけでなく、この世からの旅立ちを自分自身にとっても家族や友だちにとっても、より落ち着いた意味深いものにする力があることを教えてくれます。
「片付け」という言葉が1950年代に初めて『ヴォーグ』誌に登場してから、2015年に『オックスフォード英語辞典』の新語リストに掲載されるまで、より良い生活のために片付けをするという考え方は世界中に広がりました。今回ご紹介するスウェーデンの人生経験豊富な女性は、片付けにはそれだけでなく、この世からの旅立ちを自分自身にとっても家族や友だちにとっても、より落ち着いた意味深いものにする力があることを教えてくれます。
Image: Scribe Publications
マルガレータ・マグヌセンさんとは
『人生は手放した数だけ豊かになる』(三笠書房)の原著者、マルガレータ・マグヌセンさんは、「80歳と100歳のあいだ」になったので、“自分の経験を語っておく責任があると感じます” と書いている。この本の原書には「一生分の物の山から自分と家族を解放するには」という意味の副題がついていますが、マグヌセンさんは自らの死について一風変わった楽しい本を書くという離れわざに成功しています。淡々と、でもユーモアたっぷりに、この究極の片付けに取り組んでいるのです。
マルガレータ・マグヌセンさんとは
『人生は手放した数だけ豊かになる』(三笠書房)の原著者、マルガレータ・マグヌセンさんは、「80歳と100歳のあいだ」になったので、“自分の経験を語っておく責任があると感じます” と書いている。この本の原書には「一生分の物の山から自分と家族を解放するには」という意味の副題がついていますが、マグヌセンさんは自らの死について一風変わった楽しい本を書くという離れわざに成功しています。淡々と、でもユーモアたっぷりに、この究極の片付けに取り組んでいるのです。
なぜ終活をするのか?
マグヌセンさんは、終活の動機づけは2つあると強調する。1つめとして “親が片づけなかったものの後始末のために、若い人がよろこんで時間を割いてくれると思うのは間違っています。どれほど愛情ある間柄でも、それに甘えて、後始末の負担を押しつけてはなりません ” “わたしはこれまでの人生で何度も、ほかの人の残したものを片づけてきましたから、自分の始末を誰かに押しつけることになったら、悔やんでも悔やみきれない気がします” と書いています。
マグヌセンさんは、終活の動機づけは2つあると強調する。1つめとして “親が片づけなかったものの後始末のために、若い人がよろこんで時間を割いてくれると思うのは間違っています。どれほど愛情ある間柄でも、それに甘えて、後始末の負担を押しつけてはなりません ” “わたしはこれまでの人生で何度も、ほかの人の残したものを片づけてきましたから、自分の始末を誰かに押しつけることになったら、悔やんでも悔やみきれない気がします” と書いています。
2つめに、片付けが自分自身のためになるのを忘れてはいけません。まだずっと元気なうちに、整理整頓され、安全で手のかからない家が手に入る……というように、終活には多くの利点があります。また、“品物が宿している意味や思い出ともう一度出会うこと” が、「死のお片付け」のとても重要な部分だというマグヌセンさん。“その品物が自分にとってどんな価値があったか振り返り、味わうのです。意味を思い出せなかったり、なぜ捨てずに残しておいたかわからなかったりしたら、簡単に手放せるでしょう”と説明しています。
意識的に暮らしを小さくする
「死のお片付け」の目的は、生活を楽しくしてくれたり快適にしてくれたりするものまで捨ててしまうことではありません。ベビーブーム世代の人や仕事を退職した人たちの間で暮らしを小さくすることが流行っていますが、今より小さな家に引っ越すために持ち物を減らすのは、しっかり計画を立てておかないと、混乱する結果になってしまう可能性があります。マグヌセンさんは、あたたかみがなく人生の思い出を捨て去ったようなつまらない部屋でこれから生きていくのではなく、快適な生活に不可欠なものは何か、単に多すぎるものは何かをゆっくり判断しようと提案しています。
「死のお片付け」の目的は、生活を楽しくしてくれたり快適にしてくれたりするものまで捨ててしまうことではありません。ベビーブーム世代の人や仕事を退職した人たちの間で暮らしを小さくすることが流行っていますが、今より小さな家に引っ越すために持ち物を減らすのは、しっかり計画を立てておかないと、混乱する結果になってしまう可能性があります。マグヌセンさんは、あたたかみがなく人生の思い出を捨て去ったようなつまらない部屋でこれから生きていくのではなく、快適な生活に不可欠なものは何か、単に多すぎるものは何かをゆっくり判断しようと提案しています。
自分にとって感情を揺さぶられる物が、ほかの人にとってもそうであるとは限りません。情緒的価値が心の中で大きな場所を占めていることもあるので、時間をかけて思い出を振り返ってから、その品物をどこに持っていけばほかの誰かがすてきな思い出をつくるのに役立ちそうか考えてみましょう。マグヌセンさんは、いつもの客観的なふるまいで、生きているあいだに積み重ねてきた「もの」をきちんと処分した後に “小さく暮らしていくのは心が穏やかになって、いいものですよ” といいます。
一緒に片付けをする
家族や友だちには、自分が終活をしている理由を必ず知らせておきましょう。希望を伝え、人にあげたいものがあれば相手と話し合いましょう。こうしておけば、相手が欲しくないものを礼儀で受け取ってしまう心配はなくなります。大切な人にこの大事なプロジェクトを手伝ってもらうときは、率直さと思いやりの気持ちを忘れずに。
家族や友だちには、自分が終活をしている理由を必ず知らせておきましょう。希望を伝え、人にあげたいものがあれば相手と話し合いましょう。こうしておけば、相手が欲しくないものを礼儀で受け取ってしまう心配はなくなります。大切な人にこの大事なプロジェクトを手伝ってもらうときは、率直さと思いやりの気持ちを忘れずに。
あわてない
終活をすると決めたら、がむしゃらに取り掛かってはいけません。これは必要な、思いやりをもってすべき仕事なのだと考えましょう。作業をしていると悲しくなるときも、純粋に楽しいときもあるでしょう。まずは持ち物をいくつかのカテゴリーに分け、扱いやすいと思うカテゴリーから手をつけます。それは人によって違いますが本、リネン、掃除道具、あるいはアウトドア用品かもしれません。
マグヌセンさんは、荷物のなかから衣類だけをまとめ、それをさらに分類しています。大きすぎるもの、小さすぎるもの、今後出席することはない行事のためのもの、衝動買いしたものは、手放すべき服。“クローゼットの中に入れておく服は、合わせやすく着回しがしやすいものだけにするべきです” といいます。
必要なアイテムだけで快適に暮らす、ワードローブの整理法・決定版!
終活をすると決めたら、がむしゃらに取り掛かってはいけません。これは必要な、思いやりをもってすべき仕事なのだと考えましょう。作業をしていると悲しくなるときも、純粋に楽しいときもあるでしょう。まずは持ち物をいくつかのカテゴリーに分け、扱いやすいと思うカテゴリーから手をつけます。それは人によって違いますが本、リネン、掃除道具、あるいはアウトドア用品かもしれません。
マグヌセンさんは、荷物のなかから衣類だけをまとめ、それをさらに分類しています。大きすぎるもの、小さすぎるもの、今後出席することはない行事のためのもの、衝動買いしたものは、手放すべき服。“クローゼットの中に入れておく服は、合わせやすく着回しがしやすいものだけにするべきです” といいます。
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台所用品の選別
たいていの人は、長年の間に大量の調理道具や食器類を溜め込んでいます。引越先の小さな家の収納スペースや、これから料理を作る相手の人数を考えましょうとマグヌセンさんは書いています。“今後もお客様を迎える機会があるのなら、テーブルに着席できる人数に合わせて、お皿のセットを取っておくのがいいでしょう。ナイフ、フォーク、グラス、コップも同じです”
たいていの人は、長年の間に大量の調理道具や食器類を溜め込んでいます。引越先の小さな家の収納スペースや、これから料理を作る相手の人数を考えましょうとマグヌセンさんは書いています。“今後もお客様を迎える機会があるのなら、テーブルに着席できる人数に合わせて、お皿のセットを取っておくのがいいでしょう。ナイフ、フォーク、グラス、コップも同じです”
写真や手紙、思い出の品に手をつけるのは最後にしましょう。マグヌセンさんは、これらはいちばん時間がかかるといいます。古い思い出に引きこまれ、落ち込んだり、悲しみに襲われたりする場合もあるからです。また、自分が隠しておきたい「悪いクセ」の証拠は処分しておきましょうと、いたずらっぽいアドバイスもしています。クローゼットの奥に隠したこっそり飲んだ空の酒びんや、引き出しに隠した誰かに見られたら恥ずかしいものを、自分がいなくなったあとに家族が見つけてショックを受けないように。
家族写真をセンスよく飾るには?
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ペットのために備える
マグヌセンさんは、ペットのために本の1章を割いています。ペットのほうが自分より長生きする可能性を考えて、世話を頼んでおきましょう。自分のペットが引き取り手のないままシェルターで最後を迎えたり、安楽死させられたりする可能性がないとわかれば、安心できますね。寄り添ってくれる動物のいない生活は考えられないという人には、自分と同じくらい高齢の動物を迎えることをすすめています。
ペットに関する記事を読む
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スタートは早めに
マグヌセンさんは、生と死について楽観的な見方をする一方で、「歯止めの利かない消費」については大変憂慮しています。生涯を通じて節度なく物を手に入れ続けることを抑制すれば、年を取ってから大量の片付けをしなくて済むはずです。不要品を捨てる代わりに、必要に応じて再利用や修理、リサイクル、転売、寄付、贈与などの方法を考えて頭を使うのは、すでに物があふれている地球のためにもなるでしょう。
マグヌセンさんは、生と死について楽観的な見方をする一方で、「歯止めの利かない消費」については大変憂慮しています。生涯を通じて節度なく物を手に入れ続けることを抑制すれば、年を取ってから大量の片付けをしなくて済むはずです。不要品を捨てる代わりに、必要に応じて再利用や修理、リサイクル、転売、寄付、贈与などの方法を考えて頭を使うのは、すでに物があふれている地球のためにもなるでしょう。
前もって考える
コンパクトにまとまったマグヌセンさんの手引き書は、簡単に読めて、一通り網羅されていて実践的です。決して読んでいて暗い気持ちになるものではなく、ひねりのあるイラストと、活動的で充実した生活から得られた視点がちりばめられています。まだ終活を自分自身のこととして実感できない人は、歳を重ねた親に話をもちかけてみてはどうかというマグヌセンさん。ただし、思いやりをもって、伝え方を工夫する必要があります。すぐには乗り気にならなくても、そのうちにあなたがこれを勧め、愛情を持って手伝おうとしていることを喜んでくれるかもしれません。
『人生は手放した数だけ豊かになる』(三笠書房)
原著:マルガレータ・マグヌセン、訳:上原裕美子、解説:下重暁子
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