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映画『フジコ・ヘミングの時間』で知る世界的ピアニストが愛する家と暮らし
魂のピアニストが語る過去、現在、未来からは、愛するものや大切にしたい暮らしが見えてきます。
栗原晶子|Akiko Kurihara
2018年6月3日
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。
また、エンタメ好きとして演劇や映画に関するライティングも手がけています。
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60代後半で世界から喝采を浴び始めた奇跡のピアニスト、フジコ・ヘミング。世界中で演奏を続ける彼女の現在とこれまでの人生を追ったドキュメンタリー映画『フジコ・ヘミングの時間』がまもなく公開される。ピアノとともに生きる人生のなかでの愛猫との暮らし、インテリアへのこだわりや楽しみ方に注目した。
アートや骨董品に囲まれたパリでの暮らし
ピアニストだった日本人の母と、ロシア系スウェーデン人でデザイナーだった父を持つフジコは、5歳からピアノを始めた。20代でドイツ留学を経験し、その後ヨーロッパでキャリアを積み、60代後半にデビュー。ヨーロッパ、日本、北米、南米と世界を股にかけて年間60本のコンサートを行う。
パリの自宅では、伴侶のような存在だと語る大好きな猫とともに暮らす。部屋の壁には、たくさんのアートが飾られている。デザイナーだった父の血も受け継ぎ、彼女は幼い頃から絵を描くことを好んだ。日本画家だった叔母から絵の手ほどきも受けている。映画では彼女の絵日記を振り返りながら、幼き日をたどる。
ピアニストだった日本人の母と、ロシア系スウェーデン人でデザイナーだった父を持つフジコは、5歳からピアノを始めた。20代でドイツ留学を経験し、その後ヨーロッパでキャリアを積み、60代後半にデビュー。ヨーロッパ、日本、北米、南米と世界を股にかけて年間60本のコンサートを行う。
パリの自宅では、伴侶のような存在だと語る大好きな猫とともに暮らす。部屋の壁には、たくさんのアートが飾られている。デザイナーだった父の血も受け継ぎ、彼女は幼い頃から絵を描くことを好んだ。日本画家だった叔母から絵の手ほどきも受けている。映画では彼女の絵日記を振り返りながら、幼き日をたどる。
手を加え続ける楽しみ
パリといえば蚤の市が有名だ。フジコもパリで数多くの骨董品を集め、部屋に飾っている。整然とした雰囲気より雑多な空間で過ごすほうが心地よいとばかりに、多くのモノに囲まれている。飾りつけは10年かけていろいろ試してきたといい、壁や棚にディスプレイした小物や、手作りした窓際のガラス細工などに目を奪われる。手を加えながら居心地のよい場所をつくることが上手なフジコ。特にパリの自宅でクリスマスの飾り付けをする姿は、少女のようにキラキラとした表情を見せる。
パリといえば蚤の市が有名だ。フジコもパリで数多くの骨董品を集め、部屋に飾っている。整然とした雰囲気より雑多な空間で過ごすほうが心地よいとばかりに、多くのモノに囲まれている。飾りつけは10年かけていろいろ試してきたといい、壁や棚にディスプレイした小物や、手作りした窓際のガラス細工などに目を奪われる。手を加えながら居心地のよい場所をつくることが上手なフジコ。特にパリの自宅でクリスマスの飾り付けをする姿は、少女のようにキラキラとした表情を見せる。
京都の古民家から流れる音色
古いものを愛するフジコは、京都にも家を持つ。宮大工にリフォームを依頼した古い町家は、箱階段や古材の深い色、そのまま生かした床や柱の傷も美しい。世界中どこにいても1日4時間のピアノ練習を欠かなさいフジコ。当然、京都の家にも演奏するためのピアノがある。日本情緒あふれる京都の町の、とある一軒から聴こえるピアノの音色が、フジコ・ヘミングによるものであるかもしれないとは、なんと贅沢なことだろう。
古いものを愛するフジコは、京都にも家を持つ。宮大工にリフォームを依頼した古い町家は、箱階段や古材の深い色、そのまま生かした床や柱の傷も美しい。世界中どこにいても1日4時間のピアノ練習を欠かなさいフジコ。当然、京都の家にも演奏するためのピアノがある。日本情緒あふれる京都の町の、とある一軒から聴こえるピアノの音色が、フジコ・ヘミングによるものであるかもしれないとは、なんと贅沢なことだろう。
愛する猫や犬との暮らし
フジコ・ヘミングは、過酷な人生を生きてきた。10代で右耳の聴力を失い、ヨーロッパでのリサイタル直前に左耳の聴力も失うというアクシデントに見舞われる。そこから治療とともに地道な音楽家生活を続けていくフジコは、社会的弱者や動物に深い愛情を注ぐ人でもある。特にパリでは猫と犬を飼い、母が残した東京の自邸では、25匹の猫を世話している。
フジコ・ヘミングは、過酷な人生を生きてきた。10代で右耳の聴力を失い、ヨーロッパでのリサイタル直前に左耳の聴力も失うというアクシデントに見舞われる。そこから治療とともに地道な音楽家生活を続けていくフジコは、社会的弱者や動物に深い愛情を注ぐ人でもある。特にパリでは猫と犬を飼い、母が残した東京の自邸では、25匹の猫を世話している。
アメリカ、カリフォルニア州にもフジコの家はある。空港からほど近い海沿いの街、サンタモニカの家は、スパニッシュコロニアルリヴァイバル様式。緑がつたうスタッコ仕上げの白い外壁とテラコッタの瓦屋根が、サンタモニカの青空に美しく映える。リスや鳥も住む自然に囲まれたこの家はフジコのお気に入りだ。
ピアノの音色を家具やデザインに例えると
映画には、フレデリック・ショパンの「別れの曲」やルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「月光」、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「トルコ行進曲」など多くの演奏シーンが映し出される。魂を揺さぶる演奏、全身全霊で奏でる姿と共に注目したいのは、フジコが身に着けている衣装だ。
映画には、フレデリック・ショパンの「別れの曲」やルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「月光」、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「トルコ行進曲」など多くの演奏シーンが映し出される。魂を揺さぶる演奏、全身全霊で奏でる姿と共に注目したいのは、フジコが身に着けている衣装だ。
細かい刺繍が施されたドレスや、着物をイメージさせるデザインの衣装など、鮮やかな色や柄は、オリジナリティに溢れている。洋服からインテリアまで、身のまわりのもの一つ一つが、彼女の精神性を表している。美を愛し、芸術に生きるフジコの姿からは、暮らしや家づくりに役立つインスピレーションを受けることができるだろう。
「絵と同じで音には色がある」とフジコは言う。ひとつひとつの音に気持ちを込めて、色を付けるように弾くことを心がけながら、音を奏でる。そして自分のピアノの音色を、家具や家のデザインに例えた。「直線的でクールなものでなく、温かみのあるクラシックなスタイル。流行のものではないかもしれませんが、そこにはストーリーがあります」と。
これは、フジコ・ヘミングの自宅に招かれ、彼女のリサイタルに足を運んだような気持ちに浸れるドキュメンタリー映画だ。フジコ・ヘミングの代名詞ともいえる、フランツ・リストの「ラ・カンパネラ」。そのメロディーを聴いて思い浮かぶ色とは? 映画を観ながら、その美しく深い音色に耳を傾け、家具やデザインを想像してみて欲しい。
映画公開情報
『フジコ・ヘミングの時間』
出演:フジコ・ヘミング
監督:小松莊一良
6月16日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給・宣伝:日活
©2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ
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