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インテリアデザインとライフスタイルの関わり、8つのトレンドキーワード
インテリアデザイナーの筆者が、今シーズンの欧州インテリア見本市で見つけた8つのキーワードから、気になるアイテムや事象を交えてこれからのインテリアを語ります。

mayumi_color_f
2018年3月29日
色の癒し効果に留意した医院や高齢者施設のコーディネートを多数手掛けています。素材とカラーをコーディネートして様々な表現ができる専門家です。海外トレンドに精通し、旬のコーディネートからオーセンティックなコーディネートまで、幅広く行います。
色の癒し効果に留意した医院や高齢者施設のコーディネートを多数手掛けています。素材とカラーをコーディネートして様々な表現ができる専門家です。海外トレンドに精通し、旬のコーディネートからオーセンティックなコーディネートまで、幅広く行います... もっと見る
年初から春にかけて、今シーズンのヨーロッパのインテリア見本市をいくつも視察してきました。ハイムテキスタイル、ケルン国際家具見本市、デコオフ、メゾン・エ・オブジェなど、これらの見本市では、家具やファブリック、壁紙などのニューアイテムが展示され、日本のライフスタイルにもフィットする旬な情報が得られます。この記事では、そこで見てきたトレンドを私なりに8つの項目にしてみました。これらのキーワードをもとに、これからのインテリアを知るひとつのヒントとしていただければと思います。
1. 都会のオアシスでリラックスチャージ
都会で生活する人口がどんどん増えていく今という時代にあって、アーバンオアシスは、身も心もリラックスさせてくれる注目のトレンドです。鬱蒼と生い茂るジャングルの緑を思わせるモチーフを使ったインテリアは、身も心もリラックスさせる都会のオアシスに。色でいえば、ダークな色合いの森を思わせるフォレストグリーンやセージグリーン。これらはスマートフォンやPCによる酷使で疲れた目にも優しい色です。そんなリラックスカラーで彩るオアシスのモチーフは、都会生活の一服の清涼剤となります。
都会で生活する人口がどんどん増えていく今という時代にあって、アーバンオアシスは、身も心もリラックスさせてくれる注目のトレンドです。鬱蒼と生い茂るジャングルの緑を思わせるモチーフを使ったインテリアは、身も心もリラックスさせる都会のオアシスに。色でいえば、ダークな色合いの森を思わせるフォレストグリーンやセージグリーン。これらはスマートフォンやPCによる酷使で疲れた目にも優しい色です。そんなリラックスカラーで彩るオアシスのモチーフは、都会生活の一服の清涼剤となります。
観葉植物をたくさん飾るインテリアも人気ですが、リアルなリーフ柄やジャングルを思わせるトロピカルな壁紙やテキスタイルを使うことも、都市生活の中にあって自然の息吹を取り込むリラックスインテリアの工夫といえそうです。
2. 温かみと遊び心のあるソフトミニマル
ミニマリズム人気にも少し変化の兆しが出てきています。ソフトミニマルとは、機能的で効率のよいミニマルな空間にソフトさが加わり、ときに無機質になりがちな空間に心地よいアクセントがプラスされたスタイル。明るく濁りのない色や、ファクトリーライクな素材などの上質でシンプルなインテリアエレメントが、機能と効率に偏りがちなインテリアに家庭的な暖かさと遊び心をもたらします。
ミニマリズム人気にも少し変化の兆しが出てきています。ソフトミニマルとは、機能的で効率のよいミニマルな空間にソフトさが加わり、ときに無機質になりがちな空間に心地よいアクセントがプラスされたスタイル。明るく濁りのない色や、ファクトリーライクな素材などの上質でシンプルなインテリアエレメントが、機能と効率に偏りがちなインテリアに家庭的な暖かさと遊び心をもたらします。
写真の〈リーン ロゼ〉のソファも、ミニマルな幾何学形状にやわらかなカラーを使った、まさにソフトミニマルなデザインです。都会の狭小空間を意識してつくられたこのソファは、背を取り外すとべッドに変身。2台を組み合わせてみんなで寝転ぶことができ、またダブルベッドとして使用することも可能です。
3. 形やイメージが変わるモジュール家具や照明
このようにパーツを組み合わせることで、スモールスペースでもフレキシブルに対応する、多機能な家具や照明にも注目です。1つの細胞が「増殖」していくように、モジュールの組み合わせやパーツのつけ外しで自在に形を変えられるソファが多く登場しています。
写真の〈カリモク ニュースタンダード〉の《エレファント ソファー》もモジュールタイプ。カーブしたアームレストでいろいろな座り方が楽しめます。張り地はウールのような質感と耐久性を兼ね備えた〈マハラム〉のリサイクルポリエステル製の高性能ファブリック。都会生活にエコな彩りで、エレガントなリラックス感をもたらします。
※写真はメーカー提供
このようにパーツを組み合わせることで、スモールスペースでもフレキシブルに対応する、多機能な家具や照明にも注目です。1つの細胞が「増殖」していくように、モジュールの組み合わせやパーツのつけ外しで自在に形を変えられるソファが多く登場しています。
写真の〈カリモク ニュースタンダード〉の《エレファント ソファー》もモジュールタイプ。カーブしたアームレストでいろいろな座り方が楽しめます。張り地はウールのような質感と耐久性を兼ね備えた〈マハラム〉のリサイクルポリエステル製の高性能ファブリック。都会生活にエコな彩りで、エレガントなリラックス感をもたらします。
※写真はメーカー提供
こういった新感覚のソファは、個性的なフォルムに合わせて、伸縮性に富むテクニカルファブリックが使用されていることも特徴のひとつです。紙を折りたたんだようなセクションで構成された〈リーン ロゼ〉のソファもまた、高性能なファブリックを使い、丸みを帯びたソフトな幾何学形状を表現しています。
「増殖していく細胞のような」アイテムは、照明にも見られます。写真のシャンデリアは、細長いパーツの集合体ですが、1つだけでも照明として使える優れもの。ボヘミアングラスを使ったチェコの照明ブランド〈ブロッキス〉(〈TISTOU〉扱い)で、アートディレクターを務めるプロダクトデザイナーのルーシー・コルドバがケルンの見本市で発表しました。
同じデザインでも、ひとつだけ使った場合といくつか集めた場合とでは、雰囲気がまったく変わります。たとえば写真は、フランス〈DCW éditions〉(日本では〈ロイヤルファニチャーコレクション〉扱い)の《HERE COMES THE SUN》という名前のペンダントライトですが、1灯だけ下げると、シンプルで美しいデザインのストイックさが際立って見えます。
こちらは、同じデザインをミニサイズにして、高さを変えながらたくさん下げたところです。上の写真と比べると、受ける印象がまったく違うのではないでしょうか? 川面に沈む夕日からインスピレーションを受けてデザインされたといわれるこの照明の、ロマンチックで叙情的な表情が強く表れているように思います。球体のスリットからの光が、太陽の光の移ろいを表すような幻想的な照明の魅力が際立ちます。
4. ジュエリーのような光で飾る私的空間
たくさんの小さな光で彩られたこのバスルームは、先述のルーシー・コルドバがケルンの見本市で発表した部屋の展示のひとつ。センシュアルかつミニマリスト的アプローチで構築したプライベート空間です。宝石のような照明で飾られた自分だけの部屋は詩的かつ叙情的で、視覚から人を癒すリラックスチャージの場所にもなります。
たくさんの小さな光で彩られたこのバスルームは、先述のルーシー・コルドバがケルンの見本市で発表した部屋の展示のひとつ。センシュアルかつミニマリスト的アプローチで構築したプライベート空間です。宝石のような照明で飾られた自分だけの部屋は詩的かつ叙情的で、視覚から人を癒すリラックスチャージの場所にもなります。
5. 部屋をSNS発信する「ショールーム」的発想
一方で、自分のコレクションをショールームのように飾り立て「インスタ映え」ポイントをつくること、つまり部屋の「ショールーム化」も、見逃せないキーワードです。写真は、今年のメゾン・エ・オブジェでの「顔のあるモチーフ」というトレンドに関するインスピレーション展示で、来場者が実際に撮影してインスタグラムなどで発信できるようになっていました。展示のタイトルは、マスクやお面を示す「マスカレード」。鏡と一緒のディスプレイで、きっとナルシシズムの象徴でもあるのでしょうね。
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6. 民族スタイル、顔のあるモチーフ
その「顔のあるモチーフ」です。世界各地の民族のモチーフを取り入れるトライバルスタイルの人気は続いていますが、今年気になったのはネイティブアメリカン。彼らのヘッド飾りや顔にインスパイアされた、深く豊かな色の壁紙やファブリックが今シーズンの新作に華を添えています。
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写真の《ピエール・フレイ》(日本では〈トミタ〉扱い)のファブリックの手刺繍に見られるような、手作りへの礼賛や不揃いであることの美しさが、アートのような壁紙やテキスタイルに表現され、トレンドのインテリアエレメントとして登場しています。
※写真はメーカー提供
※写真はメーカー提供
7. テクノロジーで蘇る名作デザイン
過去から伝わる素材やデザインの、テクノロジーとの融合による進化にも注目です。写真は、ベントウッドチェアで知られる〈トーネット〉(日本では〈アイデック〉扱い)で古くから伝わるデザインのひとつ《チェア118》に、現代の技術でさらに一歩進んだ開発を加えたもの。デザイナーのセバスチャン・ヘルクナーがこだわったつや塗装が、同社の遺産《チェア118》を深いブルーの現代的でエレガントな椅子に蘇らせました。
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イタリアの照明器具メーカー〈LCI〉のクラシックコレクションを代表する、写真の《クアドロ》も、過去から蘇った名作デザインです。フランス・モダニズムの第一人者、ジャック・アドゥネが1929年にデザインした、アールデコの香り漂う美術品のような照明は、激動の20世紀を超えて今また、LEDを光源として新たな輝きを放っています。
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8. 太陽が似合う豊かな色彩のリゾートテイスト
テキスタイルや壁紙では他に、心をほっとさせる豊かな色彩を華やかに取り入れたものが印象的です。上の写真は、英国の壁紙ブランド〈コール&サン〉(日本では〈テシード〉扱い)の新しいデザイナー、折衷スタイルで知られるマーチン・ローレンスによる、エキゾチックなタイル柄に得意のパームツリーの模様を組み合わせたもの。独特な世界観でリゾート気分にいざなう壁紙を創り出しました。
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デジタルプリントで大胆なフローラル柄を表現した〈ハーレクイン〉(イギリスのブランド。日本では〈マナトレーディング〉扱い)のパネル壁紙を、窓辺のフォーカルポイントに。元気の出る華やかな色の花々を、トレンドカラーのグリーンや紫と組み合わせています。
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こちらは、ドイツのブランド〈JAB〉(日本では〈ナショナルインテリア〉扱い)の新作のオリエンタルな柄で、タイルの色彩がモロッコのパティオで陽光を浴びてくつろぐリゾートを思わせます。リゾート気分の壁紙やアウトドアファブリックが演出するリラックス空間は、アーバンオアシスという1つめのキーワードにも通じてきます。
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