コメント
パトリシア・ウルキオラがつくる変幻自在のデザインの世界
多くの世界的ブランドで活躍を続けるスペイン出身のデザイナーに、仕事やホームデコレーションについて聞きました。
Rafael F. Bermejo
2018年5月14日
世界のデザインが一堂に会するミラノサローネ国際家具見本市。パトリシア・ウルキオラはこのサローネで、ここ10年にわたり、さまざまなメーカーから十数点もの新作デザインを発表している。この多作さがウルキオラらしいところでもあり、新たな素材や活用法を探りながら、ディテールに細心の注意を払い、テーブル、チェア、ソファ、アームチェア、ラグなど、毎年のように新作を生み出していく。ウルキオラは1961年、スペインのオビエド生まれ。ミラノで建築を学び、いまも夫と子どもたちといっしょにミラノで暮らすミラノっ子だ。
美術館に行ったことであれ、じっくり読みふけった本であれ、彼女の頭のなかではあらゆる体験がアイデアに変換される。最新作のひとつである《ヌエズ》チェアは、〈アンドリュー・ワールド〉のためにデザインした軽やかで座り心地のよいチェア。一枚の紙を畳んだ造形からヒントを得て、創作プロセスに2年間をかけて完成させたデザインだ。今回、ウルキオラに、人生や仕事、インスピレーションについての考えを伺った。
美術館に行ったことであれ、じっくり読みふけった本であれ、彼女の頭のなかではあらゆる体験がアイデアに変換される。最新作のひとつである《ヌエズ》チェアは、〈アンドリュー・ワールド〉のためにデザインした軽やかで座り心地のよいチェア。一枚の紙を畳んだ造形からヒントを得て、創作プロセスに2年間をかけて完成させたデザインだ。今回、ウルキオラに、人生や仕事、インスピレーションについての考えを伺った。
家具デザインやインテリアデザインにおいて、いちばん重要なことは何でしょうか。Houzzユーザーにもできるコツがあれば教えてください。
どんなときも、まず空間や人々に対して共感をもって取り組むことが大切です。私は実際に話を聞いてインスピレーションを探します。耳を傾け、ネットワークをつくり、ニーズを理解し、そこからさまざまな解決法を見つけていくのが好きです。現代の家は、昔の家とは機能が変わってきています。ですから限界もありますが、一般的に、住む空間と私たちを結び付けているものは何かという点について理解を深めなくてはなりません。デザインやインテリアデコレーションをするうえで、ひとつ心に留めておくべきとても大事なことは、定型の手法を繰り返してしまえば、それはもう創造ではない、ということです。
どんなときも、まず空間や人々に対して共感をもって取り組むことが大切です。私は実際に話を聞いてインスピレーションを探します。耳を傾け、ネットワークをつくり、ニーズを理解し、そこからさまざまな解決法を見つけていくのが好きです。現代の家は、昔の家とは機能が変わってきています。ですから限界もありますが、一般的に、住む空間と私たちを結び付けているものは何かという点について理解を深めなくてはなりません。デザインやインテリアデコレーションをするうえで、ひとつ心に留めておくべきとても大事なことは、定型の手法を繰り返してしまえば、それはもう創造ではない、ということです。
現在の北欧スタイルや、少し前のヴィンテージやシャビーシックなど、住まいのインテリアは一時の流行に依存しているように感じます。そろそろ、トレンドを気にせず、ただ心地よく、その人のライフスタイルに合った住まいの空間づくりをする時が来たのではないでしょうか。
私はトレンドを信じたことはありません。先ほども言ったように、それよりも重視しているのは、相手を理解する共感性、過ごす時間のコンセプトや空間における感覚です。新しいプロジェクトは、毎回まっさらな状態から始まらなくてはなりません。いま挙げたことをもとにして、ユーザーのニーズを視覚的に思い描きながらプロジェクトを進めるようにしています。
現在のインテリアデザイン界は難しい時期にあると言えます。今、人々がトレンドを取り入れたいと思う理由は、ノスタルジックな温かみや親しみを感じられるものがあるからという理由が大きいでしょうね。過去に属するものには、そのような性質があるものです。
私はトレンドを信じたことはありません。先ほども言ったように、それよりも重視しているのは、相手を理解する共感性、過ごす時間のコンセプトや空間における感覚です。新しいプロジェクトは、毎回まっさらな状態から始まらなくてはなりません。いま挙げたことをもとにして、ユーザーのニーズを視覚的に思い描きながらプロジェクトを進めるようにしています。
現在のインテリアデザイン界は難しい時期にあると言えます。今、人々がトレンドを取り入れたいと思う理由は、ノスタルジックな温かみや親しみを感じられるものがあるからという理由が大きいでしょうね。過去に属するものには、そのような性質があるものです。
〈アンドリュー・ワールド〉のためにデザインした《ヌエズ》チェアは、ラインがシンプルで多様に使える作品です。公共空間向き家具の本質を持ちながら、住まいのインテリアにもぴったりだと思います。どの空間で使うため、という意図はあったのですか? このアイテムの特別なところは何でしょう?
〈B&Bイタリア〉のためにデザインした《クリノリン》アームチェア(2009)。ポリエチレンとマニラヘンプを使用。
〈アンドリュー・ワールド〉、〈ケタル〉、〈ガン〉、〈B&Bイタリア〉、〈モローゾ〉、〈ボッフィ〉などのブランドのためにデザインをするほか、例えば〈カッシーナ〉ではアートディレクターも務めています。どうしてこれほど多様なスタイルで、多数のブランド向けにデザインすることが可能なのでしょう?
ブランドにはそれぞれ歴史があり、仕事の進め方もかなり異なります。私の場合、各ブランドとのあいだにユニークな関係性と対話を築くようにしています。協働している会社の思いを完全に共有する、というのが私の信条です。そうして彼らのクライアントとの関係やニーズを理解して、アイデアをかたちにしていくのです。それぞれの会社のアイデンティティを尊重し、その会社の進化を手助けしようと心掛けています。
〈アンドリュー・ワールド〉、〈ケタル〉、〈ガン〉、〈B&Bイタリア〉、〈モローゾ〉、〈ボッフィ〉などのブランドのためにデザインをするほか、例えば〈カッシーナ〉ではアートディレクターも務めています。どうしてこれほど多様なスタイルで、多数のブランド向けにデザインすることが可能なのでしょう?
ブランドにはそれぞれ歴史があり、仕事の進め方もかなり異なります。私の場合、各ブランドとのあいだにユニークな関係性と対話を築くようにしています。協働している会社の思いを完全に共有する、というのが私の信条です。そうして彼らのクライアントとの関係やニーズを理解して、アイデアをかたちにしていくのです。それぞれの会社のアイデンティティを尊重し、その会社の進化を手助けしようと心掛けています。
〈アンドリュー・ワールド〉のためにデザインした《ヌエズ》チェア(2017)と、パトリシア・ウルキオラ
それが、あなたのデザインが飽きられない秘訣でしょうか。
それが、あなたのデザインが飽きられない秘訣でしょうか。
世界各地で住宅やホテルの内装を手掛けられています。住宅の場合、良いインテリアは何を伝えてくれるべきでしょうか? ホテルにはなく、住宅にあるべき要素とは何でしょう?
家は日常生活のニーズから構成されています。ですから、各ニーズ間のバランスを見つければいい、というだけの場合もあります。でもホテルをデザインする場合、家から遠く離れているときに人々が何を必要としているか、ということを考えます。また、その土地の気風も私にとってはとても重要です。ホテルでは、宿泊する人たちに完璧な滞在体験をしてもらうため、素材や色彩のチョイスを通じてその土地の雰囲気を感じてほしいと思っています。
家は日常生活のニーズから構成されています。ですから、各ニーズ間のバランスを見つければいい、というだけの場合もあります。でもホテルをデザインする場合、家から遠く離れているときに人々が何を必要としているか、ということを考えます。また、その土地の気風も私にとってはとても重要です。ホテルでは、宿泊する人たちに完璧な滞在体験をしてもらうため、素材や色彩のチョイスを通じてその土地の雰囲気を感じてほしいと思っています。
〈B&Bイタリア〉のためにデザインした《タフティ・タイム》ソファ(2005)
色がデザインの決め手になっています。どのように使っていますか?
色はとても役に立つツールです。全部ではありませんが、いくつかのプロジェクトでは、色が主役になっています。プロジェクト次第です。例えば、コモ湖沿岸にあるイル・セレーノ・ホテルでは、風景のなかにある色彩がインスピレーションの鍵になっています。
色がデザインの決め手になっています。どのように使っていますか?
色はとても役に立つツールです。全部ではありませんが、いくつかのプロジェクトでは、色が主役になっています。プロジェクト次第です。例えば、コモ湖沿岸にあるイル・セレーノ・ホテルでは、風景のなかにある色彩がインスピレーションの鍵になっています。
〈B&Bイタリア〉のためにデザインした《ハスク》チェア(2012)高密度ポリウレタン樹脂を使用。
ミゲル・ミラは、彼にとって「快適さこそ最大の贅沢である」と言っています。インテリアに関して、あなたにとって最大の贅沢とは?
私にとって本当の贅沢とは、時間です。もっと正確に言うと、時間にコントロールされるのではなく、時間をコントロールできること。
ミゲル・ミラは、彼にとって「快適さこそ最大の贅沢である」と言っています。インテリアに関して、あなたにとって最大の贅沢とは?
私にとって本当の贅沢とは、時間です。もっと正確に言うと、時間にコントロールされるのではなく、時間をコントロールできること。
ご自身の住まいはどのような感じですか?
自宅に欠かせないものは?
本です。私はいつだってリサーチや読書をしていますから。
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