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ペットのミニブタも家族も幸せ。アート作品に囲まれた、温かみあふれる家
アートを愛するオーナーが住む、ニューヨーク・マンハッタンの19世紀築タウンハウス。実に6年の歳月をかけ、細部までこだわったリノベーションです。
Miki Anzai
2018年5月7日
マンハッタンの中心ながら、古い街並みが保存されているグラマシー・パーク地区。その閑静な住宅街に、女性オーナーが所有する19世紀に建てられたタウンハウスがある。住宅の地下(ベースメント)と地上1・2階に3人の子供たちと暮らしている。2012年に入居した際は、真っ白い部屋がやや冷たい印象だったが、6年の歳月をかけて1階部分を全面改装。今春ついに、家族や友人、知人が楽しく集う、温かい雰囲気にあふれる空間が完成した。
インテリアデザインを担当したのは、旧知のアーニャ・ステンピーさんと、グレゴリー・リッチズさん。オーナーはリノベーションにあたり、「できる限り地元のアーティストや、家具店、木材などを利用したい。格調高いデザインというより、居心地がよく、安心して人が集まれる家にしたい。そして、家族の一員であるペットのミニブタ、クィーリンちゃんも快適に過ごせるように」とリクエストした。
動きまわるペットと壊れやすいアート作品を同居させつつ、どのように美しい空間を実現したのか? ステンピーさんとリッチズさんに聞いた。
インテリアデザインを担当したのは、旧知のアーニャ・ステンピーさんと、グレゴリー・リッチズさん。オーナーはリノベーションにあたり、「できる限り地元のアーティストや、家具店、木材などを利用したい。格調高いデザインというより、居心地がよく、安心して人が集まれる家にしたい。そして、家族の一員であるペットのミニブタ、クィーリンちゃんも快適に過ごせるように」とリクエストした。
動きまわるペットと壊れやすいアート作品を同居させつつ、どのように美しい空間を実現したのか? ステンピーさんとリッチズさんに聞いた。
「家族がいつでも安心して戻ってこられる巣のような家にしたい」というオーナーの願いを、どのように実現するか? ステンピーさんは、まず玄関脇の壁に、米写真家シャロン・ビールズの作品『鳥の巣』を飾り、常にデザインの「有形的モチーフ」としたという。
温かい巣がイメージとして表現されているだけでなく、作中の卵には、オーナーが好きな色、ブルーが使われている。
その色に合わせて、2つのローズウッド製のスツール用に、青色のベルベットでクッションを作った。さりげなく置かれた3つの陶器も、作品と呼応した色味のものを選んでいる。
温かい巣がイメージとして表現されているだけでなく、作中の卵には、オーナーが好きな色、ブルーが使われている。
その色に合わせて、2つのローズウッド製のスツール用に、青色のベルベットでクッションを作った。さりげなく置かれた3つの陶器も、作品と呼応した色味のものを選んでいる。
どんなHouzz?
所在地:ニューヨーク市グラマシー歴史保存地区
住まい手:女性オーナー、娘2人、息子1人、ペットのミニブタのクィーリンちゃん
リノベーション面積:92平方メートル(1880年代築のタウンハウスの1階部分のみ)
リノベーション期間:2012年〜2018年
デザイン:アーニャ・ステンピー、グレゴリー・リッチズ
撮影:グレゴリー・リッチズ
所在地:ニューヨーク市グラマシー歴史保存地区
住まい手:女性オーナー、娘2人、息子1人、ペットのミニブタのクィーリンちゃん
リノベーション面積:92平方メートル(1880年代築のタウンハウスの1階部分のみ)
リノベーション期間:2012年〜2018年
デザイン:アーニャ・ステンピー、グレゴリー・リッチズ
撮影:グレゴリー・リッチズ
リビングのデザインをするうえで、まず初めに決めたのがラグだ。「部屋全体の色彩スキームを支配するので、いつもできる限りラグから選びます」というステンピーさん。
さまざまな色や模様のラグを試した結果、最終的にオーナーが気に入ったのが、手織りのラグ製作で有名な〈エリザベス・エーキンス〉の作品。手間のかかるハンドタフトで作られたラグを、さながらパレット代わりにして、調和する色のタペストリー、ソファ、クッションを揃えていった。
さまざまな色や模様のラグを試した結果、最終的にオーナーが気に入ったのが、手織りのラグ製作で有名な〈エリザベス・エーキンス〉の作品。手間のかかるハンドタフトで作られたラグを、さながらパレット代わりにして、調和する色のタペストリー、ソファ、クッションを揃えていった。
ツインのキャビネット、ソファ、そしてテーブルはすべて〈ミラ・ナカシマ〉製。2つのテーブルの間にゆったりとしたスペースを設けたのは、人間だけでなく、クィーリンちゃんも通りやすくするため。対(つい)になるテーブルは、ステンピーさんのアイデアで、「太陰大極図の陰陽マーク」をイメージしてつくらせた。
シャンデリアのペンダントは、米陶芸作家〈レスリー・アントン〉が担当。1つ電球を変えるたびに全体が揺れ動き、フォルムの変化も楽しめる。ダイニングにも、アントン作のシャンデリアを導入しているが、部屋に合わせて、長さやシェイプ、色味を変えている。
シャンデリアのペンダントは、米陶芸作家〈レスリー・アントン〉が担当。1つ電球を変えるたびに全体が揺れ動き、フォルムの変化も楽しめる。ダイニングにも、アントン作のシャンデリアを導入しているが、部屋に合わせて、長さやシェイプ、色味を変えている。
〈ミラ・ナカシマ〉製キャビネットの扉部分の檜の組子は日本で制作し、ペンシルベニア州のナカシマの工房で麻張りした。深みのある茶色のウォールナット材の本体が、見事な色彩と材質のコントラストをなしている。ミラ・ナカシマが、父ジョージのデザインを引き継いで発表している作品で、オーナーは特に「麻の障子のモチーフ」が気に入っている。
陶板レリーフ:〈エンゾ・アッセンツア〉
陶磁器ランプ:〈スーホルム社〉
陶板レリーフ:〈エンゾ・アッセンツア〉
陶磁器ランプ:〈スーホルム社〉
カーペットと同様、インテリアスタイルを決定づけるのがカーテンだというステンピーさん。選んだ色は、ラグと呼応するもの。その中の1色であるコーラルレッドは、部屋のアクセントカラーとして、クッションやシャンデリアにも採用した。
窓の高さは3mを超えるため、上質なリネンとウールを使った素材を選び、美しいドレープが出るよう心がけたという。
花瓶:〈ゴットリント・ヴァイゲル〉
絵画:〈ステファン・ペンタック〉
額装:〈ジョン・エスティ〉
窓の高さは3mを超えるため、上質なリネンとウールを使った素材を選び、美しいドレープが出るよう心がけたという。
花瓶:〈ゴットリント・ヴァイゲル〉
絵画:〈ステファン・ペンタック〉
額装:〈ジョン・エスティ〉
リビングの壁面に飾ったマホガニー製の彫刻は、オーナーの友人が紹介してくれた米彫刻家〈ウィル・クリフト〉作。作家自身がこの場所に出向き、作品のサイズや曲線の向きを決めた。当初、作家は、床の上に展示したかったそうだが、クィーリンちゃんが体当たりしないように、壁に掛けることに。支台となるウォールブラケットは、米俳優兼インテリアデザイナーだったビリー・ヘインズが40年代にデザインしたもののコピー。
対面の壁面には大きな鏡を取り付け、この彫刻とシャンデリアを、部屋のどこにいても楽しめるように工夫した。
対面の壁面には大きな鏡を取り付け、この彫刻とシャンデリアを、部屋のどこにいても楽しめるように工夫した。
アイランドキッチンの上部には、ウォールナットの平板を用いた。腰壁部分と壁面は、この家のテーマカラーであるブルーに塗装した。
この建物には直射日光が入りにくいため、以前の白一色の壁は、部屋を寒々しく見せていた。そこでステンピーさんは、各部屋の採光度合いを勘案し、リビングの壁は優しいグレーに、ファミリールームはブルーがかったグレー、トイレは淡いグレーに、それぞれ塗り替えた。オーナーも「温かみが感じられ、とても落ち着ける」と喜んでいる。
この建物には直射日光が入りにくいため、以前の白一色の壁は、部屋を寒々しく見せていた。そこでステンピーさんは、各部屋の採光度合いを勘案し、リビングの壁は優しいグレーに、ファミリールームはブルーがかったグレー、トイレは淡いグレーに、それぞれ塗り替えた。オーナーも「温かみが感じられ、とても落ち着ける」と喜んでいる。
壁の色を変えるだけでなく、ウォールナット材を、床や巾木、化粧台に採用することで、ぬくもり感を演出している。壁面には木枠を設置し、その枠の中にテーマカラーの青色のタイルと鏡を埋め込んだ。また、オーガニックな雰囲気を演出するため、洗面ボウルはホワイトブロンズ製に。ドアノブをエレガントなものに付け替えている点にも注目したい。
さらに、空間を和やかにするために〈エヴリン・アッカーマン〉作のタペストリーを購入。この場所を「静かに安らげる、小さなオアシスにしたい」と希望していたオーナーも、フォークロア風のデザインをとても気に入っている。
さらに、空間を和やかにするために〈エヴリン・アッカーマン〉作のタペストリーを購入。この場所を「静かに安らげる、小さなオアシスにしたい」と希望していたオーナーも、フォークロア風のデザインをとても気に入っている。
ダイニングの壁に掛けている風景画は、NY在住の〈ドロシー・ロビンソン〉作。テーブル中央の陶器は、同じくNY在住の〈ジュリー・ハドリー〉作。オーナーは、まだ無名ながら才能あふれる地元のアーティストを多数支援している。
テーブルは、ステンピーさんの夫が経営する〈スコット・ジョーダン・ファニチャー〉製。ペンシルベニア州産のカーリー・チェリーを使用している。3m超の長い壁面に取り付けたキャビネットは、ステンピーさんがデザインし、テーブルと同じ木で製作した。椅子は、〈テッド・ベルナー〉製で、テーブルやキャビネットと、あえて違う素材(ウォールナット)を組み合わせた。
テーブルは、ステンピーさんの夫が経営する〈スコット・ジョーダン・ファニチャー〉製。ペンシルベニア州産のカーリー・チェリーを使用している。3m超の長い壁面に取り付けたキャビネットは、ステンピーさんがデザインし、テーブルと同じ木で製作した。椅子は、〈テッド・ベルナー〉製で、テーブルやキャビネットと、あえて違う素材(ウォールナット)を組み合わせた。
ファミリースペースでも、ラグが効果的に使われている。ヴィンテージのパキスタン製絨毯を軽く漂白した後に上染めしたもの。広いLDKの中に、快適な団らん空間をもたらしている。
写真手前のソファ、左の肘付き椅子とスツールは、〈リッツウェル〉製。コーヒーテーブルの上に置かれたターコイズブルーのプレートも、アクセントになるよう意識して置かれている。
写真手前のソファ、左の肘付き椅子とスツールは、〈リッツウェル〉製。コーヒーテーブルの上に置かれたターコイズブルーのプレートも、アクセントになるよう意識して置かれている。
壁面に飾っている作品群も、熟慮して選び抜いたものばかりだ。オーナーが大好きな〈マイラ・カルマン〉の可愛い女の子の絵は、いちばん右下に配置した。実はこの壁は、階段下のため影ができやすく、隣のダイニングのシャンデリアからの反射も受けやすい。そのため、ガラス入りの額装が必要な絵は、この1点のみにしている。右上の紫がかった作品は、布の上に写真を印刷したもので、デザイナー兼フォトグラファーでもあるリッチズさん作。
中央のターコイズ色のレリーフは、「初めは色に飛びついたのですが、よく見ると木と鳥が彫られており、我々のモチーフとも合致するので歓喜しました。デザインの神様が舞い降りて来た瞬間でした」とリッチズさん。
またいちばん上のカットスチールも、オーナーから「何か違った材質で、形もエッジが不均等のものを」というリクエストを受け、ハイチの伝統工芸を見つけた。偶然なことにこれも「鳥のモチーフ」だったので、「再びデザインの神様が現れてくれた気がしました」。
またいちばん上のカットスチールも、オーナーから「何か違った材質で、形もエッジが不均等のものを」というリクエストを受け、ハイチの伝統工芸を見つけた。偶然なことにこれも「鳥のモチーフ」だったので、「再びデザインの神様が現れてくれた気がしました」。
クィーリンちゃん、大のお気に入りのソファの上で興奮中。うれしくて、よく体をこすりつけるため、オリジナルのソファはボロボロに。そこでステンピーさんは、ソファの枠組みを、汚れが目立たない焦げ茶色の合成皮革張りにした。「汚れがついても濡れた布で簡単に拭き取れます」。
さらに、アームとクッション部分も、一見ウールのフランネル素材に見えるが、実は汚れがつきにくく、水洗いできる、特殊加工の〈クリプトン〉®ファブリック製に。実用性の追求だけでなく、クッションを本物のウール素材にすることで、全体的に洗練されたデザインに仕上げた。
こうして、クィーリンちゃんと家族全員がハッピーになれる空間ができ上がり、オーナーも「納得のいくまで待った甲斐があった」とご満悦だ。
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さらに、アームとクッション部分も、一見ウールのフランネル素材に見えるが、実は汚れがつきにくく、水洗いできる、特殊加工の〈クリプトン〉®ファブリック製に。実用性の追求だけでなく、クッションを本物のウール素材にすることで、全体的に洗練されたデザインに仕上げた。
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