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映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』にみる、彩りのある豊かな暮らしとは
カナダで最も有名な画家モード・ルイスの人生を描いた『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』は、世界中の映画祭で観客賞を受賞した注目の作品。家とは、人生を豊かにしてくれる暮らしとは何か、二人から家を見直すきっかけをもらえます。
栗原晶子|Akiko Kurihara
2018年3月3日
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。
また、エンタメ好きとして演劇や映画に関するライティングも手がけています。
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。... もっと見る
3月3日から順次公開になる映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』は、カナダで最も有名な素朴派画家モード・ルイスと夫との実話をもとに描いた作品。慎ましく暮らした二人の空間に生まれた豊かなものとは何か、ヒントにしたくなる暮らし方を映画とともに紹介します。
カナダで最も有名な画家
「せまいながらも楽しい我家」と歌ったのは、1900年代初期のアメリカのスタンダードナンバー『My Blue Heaven』(訳詞:堀内敬三)だが、暮らしとはそういうものかもしれないと改めて思わせてくれる映画、それが『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』だ。
「せまいながらも楽しい我家」と歌ったのは、1900年代初期のアメリカのスタンダードナンバー『My Blue Heaven』(訳詞:堀内敬三)だが、暮らしとはそういうものかもしれないと改めて思わせてくれる映画、それが『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』だ。
モード・ルイス(演:サリー・ホーキンス)は1903年、カナダに生まれた女性。若年性リウマチを患っていたモードは、叔母の家で居心地悪く暮らしていた。ある時、この家を出る決心をして向かった先は、魚の行商をして暮らすエベレット(演:イーサン・ホーク)の家。ここで住み込みの家政婦として暮らすことになる。
暮らしの目的に合った男の一人暮らし
ここで男1人暮らしのエベレットの家をのぞいてみよう。それは3.8 × 4.4mの小さな家だ。住宅街ではなく、町はずれにあり、水道も電気も通っていない。無骨で雨風をしのげればよしとする、おそらくエベレットが自ら建てたであろう家だ。食事をとるためのテーブルがあり、階段を上がるとベッドが1台置ける程度の屋根裏がある。お世辞にもきれいとは言えず、彼が家政婦を雇うことにした理由は、食事や掃除の世話を頼みたいからだった。
ここで男1人暮らしのエベレットの家をのぞいてみよう。それは3.8 × 4.4mの小さな家だ。住宅街ではなく、町はずれにあり、水道も電気も通っていない。無骨で雨風をしのげればよしとする、おそらくエベレットが自ら建てたであろう家だ。食事をとるためのテーブルがあり、階段を上がるとベッドが1台置ける程度の屋根裏がある。お世辞にもきれいとは言えず、彼が家政婦を雇うことにした理由は、食事や掃除の世話を頼みたいからだった。
モードが家政婦として来るまでは、家には色らしきものはなかった。最低限のものがあればいいと彼は思っていたのだろうし、スペースも装飾も必要なかったのかもしれない。実際、必要以上の広さや部屋数を有していても活用しきれなかったり、そのせいでものを持ちすぎてしまったりで、コーディネートがうまくいかないと悩んでしまう人がいるくらいだから、エベレットの暮らしは理にかなっていたのだ。しかし、そんな暮らしに変化が訪れた。
まずは1ヵ所に色をつけてみる
モードは絵を描くことが大好きな女性だった。半ば強引にエベレットの家で住み込みで働くことにしたモードは、要望通りの掃除や食事の世話をする。しかし、それだけではなかった。無表情だったエベレットの家に、色をつけていくのだ。最初は飾り棚。そこに大切な写真も飾る。エベレットはモードを諌めながらも彼女との暮らしを受け入れ続けていく。モードが手を加えた空間と彼女と過ごす時間が、彼の言動を変化させていくのだが、この効果はぜひ映画を見て感じてほしい。
モードは絵を描くことが大好きな女性だった。半ば強引にエベレットの家で住み込みで働くことにしたモードは、要望通りの掃除や食事の世話をする。しかし、それだけではなかった。無表情だったエベレットの家に、色をつけていくのだ。最初は飾り棚。そこに大切な写真も飾る。エベレットはモードを諌めながらも彼女との暮らしを受け入れ続けていく。モードが手を加えた空間と彼女と過ごす時間が、彼の言動を変化させていくのだが、この効果はぜひ映画を見て感じてほしい。
壁の一面に色を用いてアクセントにする方法はよく見かけるが、絵や模様を描くことで、さらに温かみのある空間になる。階段の蹴込みに模様を加えるのも面白い。
身近なものから絵を取り入れる方法
モードに画家としての才能を見出したサンドラ(演:カリ・マチェット)は、彼女に絵を発注し、以後顧客となる。初めはポストカード、次にもっと大きな絵が見たいと依頼し、モードは木片をキャンバスにするのだが、これもまた真似したくなる。
モードに画家としての才能を見出したサンドラ(演:カリ・マチェット)は、彼女に絵を発注し、以後顧客となる。初めはポストカード、次にもっと大きな絵が見たいと依頼し、モードは木片をキャンバスにするのだが、これもまた真似したくなる。
散歩中に拾った木片や板に絵を描いたり、色をつけて飾ったりすれば、手軽に部屋を模様替えできる。あまり手をかけたくないなら、好きな画家の絵のなかから季節に合わせてポストカードを何枚か飾るだけでも、部屋に自分らしさを加えることができそうだ。
壁紙を採用したり、ウォールステッカーを貼るのも手軽でいいだろう。やがてモードは、窓や外壁にも絵を描いていくが、窓なら貼ってはがせるジェルシールなどもあるので、季節限定で窓に色や模様をつけるのも楽しい。
モードのように、壁はキャンバスと捉えて、ミラーやアートフレームを貼り付けるのもユニークだ。
有名になり、外部から多くの客が訪れるようになっても、二人は約4メートル四方の家に住み続けた。そこは悲しい過去を乗り越え、目の前の暮らしを大切にしながら二人で築き上げた、慈愛に満ちた空間。壁や窓や扉、皿や掃除道具にも描き加えられた、あたたかくてユニークなモードの絵は、その象徴でもあった。
これから新しい暮らしを始める人も、なんとなくマンネリな暮らしに物足りなさを感じている人にも、生涯を通じて愛を描いたモード・ルイスの人生と家から、幸せのヒントを見つけて欲しい。
映画公開情報
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
3月3日(土)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、東劇ほか全国ロードショー
© 2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.
配給:松竹
映画公開に合わせ、カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス映画展」が開催中。「3月に訪れたいデザイン・建築・工芸の展覧会 & イベント情報」で詳しくご紹介しています。
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
3月3日(土)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、東劇ほか全国ロードショー
© 2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.
配給:松竹
映画公開に合わせ、カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス映画展」が開催中。「3月に訪れたいデザイン・建築・工芸の展覧会 & イベント情報」で詳しくご紹介しています。
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