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「ユニバーサルデザイン」の基礎知識:「バリアフリー」とどう違う?
誰もが快適に利用できる環境を目指した「ユニバーサルデザイン」。将来を見据えた住まいを考えるために、基本的なことをおさらいしておきましょう。
Taeko Ishii
2016年11月2日
フリーランスのエディター・ライター。大学で住まいについて学んだのち、コピーライター、住宅雑誌編集者を経てフリーランスに。暮らしまわりに関すること、地方での暮らしについてが主なテーマです。
フリーランスのエディター・ライター。大学で住まいについて学んだのち、コピーライター、住宅雑誌編集者を経てフリーランスに。暮らしまわりに関すること、地方での暮らしについてが主なテーマです... もっと見る
新築やリノベーションを考えるとき、「バリアフリーデザイン」というキーワードを一度は目にするのではないでしょうか。自分や家族に今すぐは必要なくても、将来を考えると必要かもしれない。そう思う一方で、好みのデザインと両立できるか不安を感じる人も多いかもしれません。
そもそも、ユニバーサルデザインとは?
「バリアフリーデザイン」と近いイメージの言葉に「ユニバーサルデザイン」がありますが、両者の意味の違いを正確に知っていますか?
障害や障壁(barrier)から自由(free)にするという意味の「バリアフリー」が高齢者や障害者などを対象にしているのに対し、「ユニバーサルデザイン」のコンセプトは “for all”(万人のため)。年齢に関係なく、幼児から高齢者まで、そして障害者から健常者まで、すべての人を対象にして住みやすく、という問題意識が原点にあります。
「バリアフリーデザイン」と近いイメージの言葉に「ユニバーサルデザイン」がありますが、両者の意味の違いを正確に知っていますか?
障害や障壁(barrier)から自由(free)にするという意味の「バリアフリー」が高齢者や障害者などを対象にしているのに対し、「ユニバーサルデザイン」のコンセプトは “for all”(万人のため)。年齢に関係なく、幼児から高齢者まで、そして障害者から健常者まで、すべての人を対象にして住みやすく、という問題意識が原点にあります。
「障害者に快適な環境とは、健常者にも快適なもの」というユニバーサルデザインの概念は、アメリカの建築家、プロダクトデザイナー、教育者であるロン・メイスの「年齢や体格、障害の度合いにかかわらず、誰もが利用できる環境を創造しよう」というメッセージから始まりました。そして1997年、メイスをリーダーとするチームが、今ではよく知られるようになった「ユニバーサルデザインの7原則」を提唱しました。以下にその内容をご紹介します。
1. 誰もが公平に使えるデザイン
すべての人にとって、差別のない公平なデザインであること。誰にでも利用できるようにつくられており、容易に入手できる。
2. 柔軟な対応ができる自由度の高いデザイン
個人の能力に応じて使用方法が選択できる、柔軟性に富んだデザインであること。使う人のさまざまな好みや能力に合うようにつくられている。
3. 直感的にすぐ使えるわかりやすいデザイン
使う人に経験や知識がなくても、単純で簡単に使えるデザインである。
すべての人にとって、差別のない公平なデザインであること。誰にでも利用できるようにつくられており、容易に入手できる。
2. 柔軟な対応ができる自由度の高いデザイン
個人の能力に応じて使用方法が選択できる、柔軟性に富んだデザインであること。使う人のさまざまな好みや能力に合うようにつくられている。
3. 直感的にすぐ使えるわかりやすいデザイン
使う人に経験や知識がなくても、単純で簡単に使えるデザインである。
4. 認識しやすく、必要な情報が効果的に伝わるデザイン
使う人の感覚能力や周囲の環境条件にかかわらず、情報がわかりやすく表示されているデザインである。
5. 誤操作をしても危険につながらない、事故の原因にならないデザイン
うっかり誤った操作をしても問題がないこと。通常の使用のしかたでは誤操作を起こしにくい、安全なデザインである。
6. 無理な姿勢をとらずにすむ、身体的負担の少ないデザイン
能率よく快適に使え、疲れないデザインであること。身体に余計な負担や労力をかけない、操作しやすいつくりである。
7. 届きやすく、操作しやすいサイズとスペースを備えたデザイン
使う人の体格や姿勢、動けるかどうかにかかわらず、使いやすいサイズや操作しやすいスペースが確保されたデザインであること。
※楢崎雄之『[図解]高齢者・障害者を考えた建築設計 改訂2版』(井上書院)の内容を参考に編集
使う人の感覚能力や周囲の環境条件にかかわらず、情報がわかりやすく表示されているデザインである。
5. 誤操作をしても危険につながらない、事故の原因にならないデザイン
うっかり誤った操作をしても問題がないこと。通常の使用のしかたでは誤操作を起こしにくい、安全なデザインである。
6. 無理な姿勢をとらずにすむ、身体的負担の少ないデザイン
能率よく快適に使え、疲れないデザインであること。身体に余計な負担や労力をかけない、操作しやすいつくりである。
7. 届きやすく、操作しやすいサイズとスペースを備えたデザイン
使う人の体格や姿勢、動けるかどうかにかかわらず、使いやすいサイズや操作しやすいスペースが確保されたデザインであること。
※楢崎雄之『[図解]高齢者・障害者を考えた建築設計 改訂2版』(井上書院)の内容を参考に編集
ユニバーサルデザインが対象とするのは、暮らしに必要な食器や家電、家具などはもちろん、住まいづくりや街づくりにも及びます。加齢や障害によって身体機能が低下した場合、視力・聴力・嗅覚・触覚・味覚・身長の変化、足腰や握力、平衡感覚、フットワーク、さらに精神力の低下などが起こり、生活行為への対応を鈍らせます。
私たちは誰しもいずれ、こうした変化を受け入れざるを得ません。ユニバーサルデザインを選んでおけば、5年後、10年後、または突然の事故や病気で身体がどんな状態になっても、障害になるものがなく安心なのです。
私たちは誰しもいずれ、こうした変化を受け入れざるを得ません。ユニバーサルデザインを選んでおけば、5年後、10年後、または突然の事故や病気で身体がどんな状態になっても、障害になるものがなく安心なのです。
ユニバーサルデザインってどんなもの?
ユニバーサルデザインというと、ちょっと堅苦しいもの、特別なものという印象を抱くかもしれませんが、実は意外と身近な場所にあるのです。一例をご紹介しましょう。
・目を閉じていてもシャンプーとリンスを区別できる容器ボトルの突起
・左右両開きの冷蔵庫
・公共スペースの車イス使用者用トイレにベビーシートなどを設置した「多目的トイレ」
・少ない力で操作できる水道のカラン
・誰もが歩きやすいように電柱を地下に埋設した道路
・多言語表記のわかりやすいサイン
どれも身近な存在です。また、今では当たり前になっているものの中にも、ユニバーサルデザインはあります。たとえば長い靴べらは、リウマチなどの人が腰をかがめなくても自力で靴が履けるように考え出されたものですし、ライターは1853~1856年のクリミア戦争のときに、片手を失ってマッチを使えない傷痍軍人のために開発されたのが原点となり、一般化したものです。
ユニバーサルデザインというと、ちょっと堅苦しいもの、特別なものという印象を抱くかもしれませんが、実は意外と身近な場所にあるのです。一例をご紹介しましょう。
・目を閉じていてもシャンプーとリンスを区別できる容器ボトルの突起
・左右両開きの冷蔵庫
・公共スペースの車イス使用者用トイレにベビーシートなどを設置した「多目的トイレ」
・少ない力で操作できる水道のカラン
・誰もが歩きやすいように電柱を地下に埋設した道路
・多言語表記のわかりやすいサイン
どれも身近な存在です。また、今では当たり前になっているものの中にも、ユニバーサルデザインはあります。たとえば長い靴べらは、リウマチなどの人が腰をかがめなくても自力で靴が履けるように考え出されたものですし、ライターは1853~1856年のクリミア戦争のときに、片手を失ってマッチを使えない傷痍軍人のために開発されたのが原点となり、一般化したものです。
住宅で事故を起こす原因を知る
実際にユニバーサルデザインの住まいを考える前に、住宅内で高齢者の死亡事故の理由の上位4つを見てみましょう。
1位 浴槽での溺死
手すりがない、浴槽をまたぐ段差が高い、浴槽の床が滑りやすいなどが原因。
2位 フラットな床での転倒による死亡
滑りやすい床材で滑る、カーペットのめくれなどにつまずく、また階段や玄関の上がり框など段差が分かりやすいところは緊張感を持って上り下りするものの、平らだと思って歩いているところに小さな段差があってつまずくと、かなり大きく転倒してしまいます。
3位 階段からの転落による死亡
手すりがないなどのためにステップから滑ったり、蹴込みにつま先を引っ掛けたりしての転倒・転落。特に回り階段(踊り場にも段を設けた階段)からの転落が多数。
4位 建物からの墜落など
出典:厚生労働省「人口動態統計調査」(平成21年)
実際にユニバーサルデザインの住まいを考える前に、住宅内で高齢者の死亡事故の理由の上位4つを見てみましょう。
1位 浴槽での溺死
手すりがない、浴槽をまたぐ段差が高い、浴槽の床が滑りやすいなどが原因。
2位 フラットな床での転倒による死亡
滑りやすい床材で滑る、カーペットのめくれなどにつまずく、また階段や玄関の上がり框など段差が分かりやすいところは緊張感を持って上り下りするものの、平らだと思って歩いているところに小さな段差があってつまずくと、かなり大きく転倒してしまいます。
3位 階段からの転落による死亡
手すりがないなどのためにステップから滑ったり、蹴込みにつま先を引っ掛けたりしての転倒・転落。特に回り階段(踊り場にも段を設けた階段)からの転落が多数。
4位 建物からの墜落など
出典:厚生労働省「人口動態統計調査」(平成21年)
具体的な「危険要素」を見ていくと、気をつけるべきポイントが浮かび上がってきます。もちろん、ユニバーサルデザインという機能性だけではなく、家族が豊かな気持ちで暮らせる好みのデザインを取り入れることも大切。将来的な可変性も視野に入れつつ、暮らしやすい家をかなえましょう。
今回は、ユニバーサルデザインの基本的なコンセプトについてお伝えしました。次回以降は、実際の居室や水まわりのプランニングのポイントなど、テーマごとに掘り下げて考えていきたいと思います。
Houzzで日本の住まいの専門家を探す
今回は、ユニバーサルデザインの基本的なコンセプトについてお伝えしました。次回以降は、実際の居室や水まわりのプランニングのポイントなど、テーマごとに掘り下げて考えていきたいと思います。
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