My Houzz:豊かな自然を取り込んだ、ゆるやかにつながる大空間の家
大きなピクチャーウィンドウから、雄大な自然が眺められるリラックスした住まい。素材選びの工夫や、家具や段差の上手な利用でのびやかなスペースを自然につなげた、建築家の自邸です。
Nayo Suzuki
2016年10月6日
ライター&エディター。建築・インテリアを学んだ後、インテリアデコレーターとして働きながら、インテリアのライター業をスタート。現在はライター&エディター業に専念し、雑誌のインテリアページ、カタログ、書籍などを手がける。趣味はインテリアとアート鑑賞。
ライター&エディター。建築・インテリアを学んだ後、インテリアデコレーターとして働きながら、インテリアのライター業をスタート。現在はライター&エディター業に専念し、雑誌のインテリアページ、カタログ、書籍などを手がける... もっと見る
「隣に家がない、環境のよい土地を探していました。風の通りがよくて自然が豊かなところがいいなと思って」。住まいのための理想の地を探すこと5年あまり。ついに見つけたのは松山市から車で20分くらいの便利な立地ながら、近くに山も川もあり、何よりも風が気持ちよく吹き抜ける理想的な土地。「念のためクーラーを設置できるようにはしてありますが、今のところまったく必要性を感じません。山から涼しい風が吹き、夜は夏でも涼しすぎるくらいの日もあります」と語るのは、自邸を設計した〈ZOYA Design Office〉の宮内心さん。
プランニングにあたっては、「この自然豊かな外部環境を家の中にどれだけ取り入れられるかを考えました。ごく自然に屋外の空気感や雰囲気を、室内のどこに居ても感じたいと思い、壁をなるべく排除して、空間がゆるやかにつながるようにしています。また、せっかくゆったりとした敷地に建てた家なので、水平方向に大きくのびやかな開口を設けるなど、水平の広がりを意識して空間を考えました。家族や来客が、思い思いにくつろげたり、コーヒーを飲めるような場所があったり、敷地全体が自由に楽しめるようになっています」。
どんなHouzz?
住まい手:宮内心さん夫妻(40歳代)、12歳と10歳の子供たち、愛犬
所在地:愛媛県東温市
延床面積:178.3平方メートル
構造:木造
竣工:2014年
建築設計:ZOYA Design Office
プランニングにあたっては、「この自然豊かな外部環境を家の中にどれだけ取り入れられるかを考えました。ごく自然に屋外の空気感や雰囲気を、室内のどこに居ても感じたいと思い、壁をなるべく排除して、空間がゆるやかにつながるようにしています。また、せっかくゆったりとした敷地に建てた家なので、水平方向に大きくのびやかな開口を設けるなど、水平の広がりを意識して空間を考えました。家族や来客が、思い思いにくつろげたり、コーヒーを飲めるような場所があったり、敷地全体が自由に楽しめるようになっています」。
どんなHouzz?
住まい手:宮内心さん夫妻(40歳代)、12歳と10歳の子供たち、愛犬
所在地:愛媛県東温市
延床面積:178.3平方メートル
構造:木造
竣工:2014年
建築設計:ZOYA Design Office
敷地は150坪。ゆったりとした敷地内には、住居、オフィス、ゲストが泊まるときのための小屋が配置されている。向かって右のダークブラウン色の板張りの棟が住居。左の白いガルバリウム鋼板張りの棟は宮内さんのオフィスと、公私で外壁の色と素材を変えた。
門を入ると、庇の下に幅180cmほどのモルタル仕上げのアプローチが続く。住居棟の外壁には高知県産のスギ材を張り、ダークブラウン色に塗装した。
玄関を入って右側が階段、左には宮内さんがインナーテラスと呼ぶ空間がある。インナーテラスの床は、モルタルを着色して仕上げ、外部とのつながりをゆるやかに感じさせる素材選びで空間を演出した。窓側部分は吹き抜けとなり、ベイマツ材の梁は、一部をあえてむき出しにしている。インナーテラスの窓は、幅360cm×高さ230cmの大開口。目の前にそびえる善神山を美しく切り取る、ダイナミックなピクチャーウィンドウとなっている。
レザー張りのソファは〈MARUICHI〉の《ALBA》。長さ270cmもある一枚板のコーヒーテーブルは、材木屋で見つけたスプルース材をテーブルに仕立てたもの。リビングの床の段差は、人が集まるときに気軽に腰かけられる椅子代わりにもなっている。
ソファの後ろの壁には溶岩石を張った。「均質なタイルなどとは違い、溶岩石は色も厚さもまちまち。その多彩さが気に入って選びました」と宮内さん。自然素材が空間に豊かな表情を加え、重厚感をもたらしている。壁に飾ったアートは、宮内さんの友人の作品。「子供たちが寝静まった後、ここで夫婦でコーヒーを飲み、いろいろな話をしています」。
リビングスペースは、インナーテラスから床の高さを15cmほど上げ、天井も板張りにした。床レベルを変えることで、他のスペースとゆるやかにつながりつつも区切られた印象のある、落ち着いた空間になっている。床はオーク無垢材、壁はラワンべニヤ材を柿渋で塗装した。構造上必要な筋交いも、あえて存在感のある太さにし、むき出しにすることで空間に力強さを加えている。現在はソファ代わりのマットレスやテーブルを置いて、子供たちがTVを観たり、家族みんながくつろいだりするスペースとなっている。
大の植物好きの宮内さん、現在は写真のように、たくさんの緑に囲まれて暮らしている。室内の植物から、庇の下のアプローチや庭の植物、その先の山々の景色とがつながった、緑にあふれた環境に、日々癒されているのだとか。
インナーテラスの窓辺には、9月を過ぎると床にギャッベを敷いている。ここで愛犬とゴロゴロと寝転びながら山を眺めるのは至福の時間。庇によって、太陽が高く昇る暑い季節は直射日光がさえぎられ、風だけが通り抜ける快適さだ。この空間の奥にはダイニングスペースがある。
キッチンも15cmほど床レベルを上げて設置した。料理好きな奥さまからのリクエストは「業務用のガスコンロとオーブンを設置したい。子供たちや夫婦、友人と3~4人で使える広さが欲しい」ということ。西側の壁にはハイカロリーコンロを備えたステンレス製の業務用キッチンを、中央に造作のアイランドカウンターを設置し、みんなで並んで料理ができるキッチンが完成した。
キッチンからダイニング側を望む。奥さまは料理だけでなく、パンやお菓子作りもするため、アイランドカウンターはパン生地などをこねる台としても大活躍。普段づかいの食器はアイランド上の吊り棚に収納し、それ以外の食器は壁に設置したオープン棚に収納している。ダイニングのペンダントランプは、〈谷口・青谷和紙〉の《AOYA Moon》。
リビングから玄関方向を望む。高さ250cmもある玄関扉は、室内側はラワンべニヤ材の柿渋塗装、屋外側にはわざと錆びさせた鉄板を張っている。階段下にトイレが、その奥には洗面室とバスルームが配置されている。
洗面・バスルームの壁はさわやかなブルーのタイルを選んだ。床は、当初は写真の通り、撥水性のある塗料を塗っただけで仕上げたが、現在は白いタイルを張っている。洗面とバスルームはシャワーカーテンで仕切り、レインシャワーなど水栓器具は〈TOTO〉のものを選んだ。
2階には、5畳+ロフトのある子供部屋が2つ、夫婦の寝室、さらにロフトが配置されている。ロフトは奥さまがPC作業などをするスペースとして確保した。寝室もあえて壁をつくらなかったので、ゆるやかに他のスペースとつながった、光あふれる気持ちのよい空間となっている。
写真左手前のダイニングの窓の前で、毎朝、植物の世話の後にコーヒーを飲むのが宮内さんの日課。あえて厚みを持たせた壁により、窓枠部分がカフェのカウンターのように使えるのだとか。
「この家で暮らすようになり、朝コーヒーを飲んだり、友人が来て庭でバーベキューをしたり、山を眺めたり……。そんな日常の何でもない時間に満たされ、癒されています。とにかく友人たちがよく訪ねてくれるようになりました。妻は、友人たちとここでヨガをし、その後にマクロビ料理をふるまうなど、新たな活動を始めたりもしています」と宮内さん。自然と一体となり、心地よい風が流れる家は、住まう家族はもちろんのこと、訪れる人をも癒し、惹きつけてやまないのだろう。
最後に、宮内さんが家の設計を手掛ける際の信条を聞いた。「どれだけ余白をつくるかを大切に、空間どうしのゆるやかなつながりを意識しています。空間を壁で区切るのではなく、段差だとか家具など、オーナーの生活イメージに合う手段でつなげられたらと。造作家具などでつくり込むことをなるべく少なくし、想い出の家具や植物などが取り込める、自由度の高い空間づくりを心がけています」。
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