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和風? 洋風? ジレンマはミッドセンチュリーデザインで解決しよう!
アメリカの20世紀半ばのデザイン、ミッドセンチュリーデザインは、「和」と「洋」の魅力をみごとにマッチさせたスタイル。今の暮らしにも取り入れたいアイデアがたくさんあります。
杉田真理子
2016年11月16日
ライフスタイルの欧米化が進み、居住空間のデザインも洋風が主流となった昨今。しかし、和の伝統デザインへの漠然とした憧れが捨て切れなかったり、極端な欧米スタイルに戸惑いを覚えたりと、日本のインテリアはアイデンティティの混乱状態にあるといってもいいかもしれません。そんな「和風? 洋風?」のジレンマを解決するアイデアが、なんと、ミッドセンチュリーのアメリカにありました。
1. そもそも、ミッドセンチュリーデザインとは?
「ミッドセンチュリーデザイン」とは、20世紀中ごろ、主にアメリカで生まれた家具やデザイン、インテリアスタイルを指します。この時代の有名なデザイナーとして、イームズ夫妻、ジョージ・ネルソン、イサム・ノグチなど、有名な名前が並びます。
「ミッドセンチュリーデザイン」とは、20世紀中ごろ、主にアメリカで生まれた家具やデザイン、インテリアスタイルを指します。この時代の有名なデザイナーとして、イームズ夫妻、ジョージ・ネルソン、イサム・ノグチなど、有名な名前が並びます。
この時代のデザイン界の主流はモダニズムでしたが、経済性優先や合理主義が行き過ぎた結果、温かみや心地よさといった人間性が欠落しがちでした。ミッドセンチュリーモダンは、このことへの反抗から生まれます。特徴として、ムダを削ぎ落としつつも温かみのある家具のフォルム、木材などニュートラルかつ自然を意識した素材の多様があります。また、魅力的なのは大胆な窓! 屋内と屋外の一体化を意識し、住空間における窓や中庭の重要性にも注目したのがミッドセンチュリーデザインの革命です。
例えばこちらの例、今にでも外に飛び出していけそうな、内と外とが融合したリビングが特徴です。外部空間と居住空間がスムーズにつながる「縁側」などに慣れ親しんだ日本人としては、うれしいポイントではないでしょうか。
2. 日本の「和」とどんな関係にあるの?
さて、このミッドセンチュリーデザイン、日本とはどんな関係にあるのでしょうか? 実はこのデザインスタイル、アメリカで生まれた当初から、日本に非常に近しい存在でした。というのも、イームズ夫妻やイサム・ノグチなどによって和風デザインが意識的に取り入れられていたのです。今でこそ欧米スタイルを取り入れた空間作りが行われている日本ですが、20世紀中頃のアメリカで、逆の現象が起きていたと言っていいかもしれません。
さて、このミッドセンチュリーデザイン、日本とはどんな関係にあるのでしょうか? 実はこのデザインスタイル、アメリカで生まれた当初から、日本に非常に近しい存在でした。というのも、イームズ夫妻やイサム・ノグチなどによって和風デザインが意識的に取り入れられていたのです。今でこそ欧米スタイルを取り入れた空間作りが行われている日本ですが、20世紀中頃のアメリカで、逆の現象が起きていたと言っていいかもしれません。
共通する美意識として、過剰な装飾のないさりげない優美さ、無駄のない繊細さへの気配りや、温かみのある素材の使用などがあります。例えば格子柄の使用や、ラスティック素材の導入、器ひとつひとつへの配慮など。根底にあるデザイン哲学が一致すれば、日本とアメリカの距離なんて関係ありません。
3. まずはラッセル・ライトとジョージ・ナカシマからチェックしよう
なかでも20世紀中ごろに活躍したインダストリアル・デザイナーのラッセル・ライトは、日本の伝統的な家作りに大きな影響を受けました。アメリカ、ニューヨーク州マニトの、ハドソン川のほとりに佇む彼の自宅兼スタジオには、日本的なデザインが大きく取り入れられています。決して大きくきらびやかなわけでもないけれど、古い家を改装した、和とモダンが自然に調和した空間は、誰の心をもつかむ傑作です。
なかでも20世紀中ごろに活躍したインダストリアル・デザイナーのラッセル・ライトは、日本の伝統的な家作りに大きな影響を受けました。アメリカ、ニューヨーク州マニトの、ハドソン川のほとりに佇む彼の自宅兼スタジオには、日本的なデザインが大きく取り入れられています。決して大きくきらびやかなわけでもないけれど、古い家を改装した、和とモダンが自然に調和した空間は、誰の心をもつかむ傑作です。
ペンシルヴァニアの家具作家、ジョージ・ナカシマも「和 x ミッドセンチュリー」を提唱したデザイナーの一人です。チェリーウッドの艶やかなテーブル、ポツンと佇む小さめのウッドチェアなど、一つ一つに生命を吹き込むかのような家具作りが特徴。彼の自邸も、日本の古民家のようなデザインです。
4. 木材の多用と渋い家具
1960年にアメリカの『ハウス・ビューティフル』誌が、「shibui (渋い)」というキーワードを特集しました。さり気なさと大人の深みを感じさせる最高の美意識として、この言葉を取り上げたのです。これは、ミッドセンチュリーモダンの哲学と繋がる価値観です。写真に写っているイームズのプライウッドラウンジチェアを代表として、色味・装飾を抑えた、さり気ない美しさを誇る家具は「渋み」の極みであるといっても過言ではありません。木製のアイテムが多いのも、ホッとするデザインのポイントです。
1960年にアメリカの『ハウス・ビューティフル』誌が、「shibui (渋い)」というキーワードを特集しました。さり気なさと大人の深みを感じさせる最高の美意識として、この言葉を取り上げたのです。これは、ミッドセンチュリーモダンの哲学と繋がる価値観です。写真に写っているイームズのプライウッドラウンジチェアを代表として、色味・装飾を抑えた、さり気ない美しさを誇る家具は「渋み」の極みであるといっても過言ではありません。木製のアイテムが多いのも、ホッとするデザインのポイントです。
木材を多用した「渋い」家具は、伝統的な日本の家具職人達の得意分野でもあります。ソファや大きめのテーブルなど、現代のライフスタイルに合わせてデザインをアップデートさせている日本の伝統家具メーカーのプロダクトは、ミッドセンチュリーデザインに非常にマッチします。
5. 照明やカーテンも大きなポイント
大がかりな作業をせずにこのスタイルを試したいなら、照明や窓まわりなどから始めることも可能です。ポイントは、和を意識しつつ屋内と屋外が一体化した心地よい空間をつくること。和紙で包まれた少し古風なペンダントライトを吊るした後は、外の景色を隠さないように、窓からカーテンやブラインドを取り外す。これだけで和風ミッドセンチュリーモダンの雰囲気が生まれます。
大がかりな作業をせずにこのスタイルを試したいなら、照明や窓まわりなどから始めることも可能です。ポイントは、和を意識しつつ屋内と屋外が一体化した心地よい空間をつくること。和紙で包まれた少し古風なペンダントライトを吊るした後は、外の景色を隠さないように、窓からカーテンやブラインドを取り外す。これだけで和風ミッドセンチュリーモダンの雰囲気が生まれます。
大きな窓がないという場合も、照明使いで解決しましょう。シンプルだけれど、フォルムや質感に存在感のあるアイテムを選ぶのがコツです。
「洋風」「和風」は区別しないでブレンドする
最後のポイントとして、「美しい融合」が重要になってきます。「和風」と「洋風」の区別を気にしすぎることなく、楽しみにながらごちゃまぜにしてしまうのもいいかもしれません。ただし、一点一点に存在感のある、質のよいもののみ組み合わせることを忘れずに。
最後のポイントとして、「美しい融合」が重要になってきます。「和風」と「洋風」の区別を気にしすぎることなく、楽しみにながらごちゃまぜにしてしまうのもいいかもしれません。ただし、一点一点に存在感のある、質のよいもののみ組み合わせることを忘れずに。
日本からの影響も受けつつアメリカで発祥したミッドセンチュリーモダン、21世紀の今では日本への(逆!?)輸入も盛んです。和風洋風、どちらか決めきれないのであれば、どちらも取り入れてしまいましょう。
いかがでしたか? 海を越えて融合するデザインの魅力、ミッドセンチュリーアメリカ×日本で感じてみませんか?「和風?洋風?」のジレンマが、鮮やかに解消すること間違いなしです。
ミッドセンチュリースタイルの空間写真をもっと見る
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