東日本大震災からの自宅再建【Part 2】よみがえる古民家
家族の歴史が受け継がれてきた古民家に暮らし続けたい――その想いを汲み、現代の技術で被災した家を補強・再生した住宅2例をご紹介する。
Miki Anzai
2016年6月10日
前回「東日本大震災からの自宅再建【Part 1】」では、津波の被害から家を再建した宮城県沿岸部の事例を取り上げた。【Part 2】では、地震の揺れによる被害を受けた古民家を再生した2つの事例をご紹介したい。
2011年3月11日に東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード9の地震は、関東北部でも激しい揺れや液状化現象をひきおこし、多くの家屋を倒壊させた。栃木県足利市にある昭和初期の木造住宅も、茨城県稲敷市に建つ江戸中期の木造住宅もその例外ではない。今では考えられないほどの良材が用いられ、昔の大工職人が高度な技と心を込めてつくった伝統的な建物をどうにか生き返らせたい、そんな施主と建築家の思いが一致して、みごとに再生した古民家を紹介する。
東日本大震災からの自宅再建【Part 1】海辺の土地にカフェ付き住宅を新築を読む
2011年3月11日に東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード9の地震は、関東北部でも激しい揺れや液状化現象をひきおこし、多くの家屋を倒壊させた。栃木県足利市にある昭和初期の木造住宅も、茨城県稲敷市に建つ江戸中期の木造住宅もその例外ではない。今では考えられないほどの良材が用いられ、昔の大工職人が高度な技と心を込めてつくった伝統的な建物をどうにか生き返らせたい、そんな施主と建築家の思いが一致して、みごとに再生した古民家を紹介する。
東日本大震災からの自宅再建【Part 1】海辺の土地にカフェ付き住宅を新築を読む
【事例1】部分再生に成功した昭和の日本家屋
巨大地震発生時、足利市の大地主で80歳を超える山室泰一さんは、この自宅に一人でいた。激しい揺れで、屋根の瓦が次々に落ち、母屋の内柱が折れ、窓ガラスは飛び散り、泰一さんは顔にケガを負った。普段は東京で働いている息子の文彦さんは、たまたま地元に戻ってはいたが自宅におらず、帰宅してその惨状に目を覆った。しかし、悲嘆にくれている暇はなく、すぐにこれ以上ガラスの破片などが飛び散らぬよう、雨戸を閉め、釘打ちし、比較的被害の少なかった、(渡り廊下でつながっている)別棟で避難生活をスタートさせた。
巨大地震発生時、足利市の大地主で80歳を超える山室泰一さんは、この自宅に一人でいた。激しい揺れで、屋根の瓦が次々に落ち、母屋の内柱が折れ、窓ガラスは飛び散り、泰一さんは顔にケガを負った。普段は東京で働いている息子の文彦さんは、たまたま地元に戻ってはいたが自宅におらず、帰宅してその惨状に目を覆った。しかし、悲嘆にくれている暇はなく、すぐにこれ以上ガラスの破片などが飛び散らぬよう、雨戸を閉め、釘打ちし、比較的被害の少なかった、(渡り廊下でつながっている)別棟で避難生活をスタートさせた。
新旧の融合
山室邸は、昭和10年に建てられた趣のある日本家屋だった。敷地内には立派な蔵と日本庭園もあり、1988年には、足利市建築文化賞を受賞している。母屋の再建を希望する父と、耐震性の高い鉄筋コンクリート(RC)造への建て替えを希望する息子の願いを、知人の建築家・飯井雅裕さんがうまく融合し、実現させた。
比較的被害の少なかった東側の棟(写真右)は、耐震補強・瓦屋根の補強・壁の修繕を施し、以前のままの姿で復元。半壊した西側の母屋と蔵は取り壊し、RC造の建物を新築(写真左)した。モダン住宅ながら、内部には、以前の家で使っていた70年前の良質な木材や、精巧な細工が施された建具などをできるだけ再利用している。家族が長い歴史を刻んできた空間が、随所で再現できた。
《足利の家》の概要
所在地:栃木県足利市 (緑町)
設計:飯井築設計事務所
構造・規模:RC造2階建て住宅、延床面積138.05平方メートル
竣工:2013年12月
《足利の家》の写真をもっと見る
山室邸は、昭和10年に建てられた趣のある日本家屋だった。敷地内には立派な蔵と日本庭園もあり、1988年には、足利市建築文化賞を受賞している。母屋の再建を希望する父と、耐震性の高い鉄筋コンクリート(RC)造への建て替えを希望する息子の願いを、知人の建築家・飯井雅裕さんがうまく融合し、実現させた。
比較的被害の少なかった東側の棟(写真右)は、耐震補強・瓦屋根の補強・壁の修繕を施し、以前のままの姿で復元。半壊した西側の母屋と蔵は取り壊し、RC造の建物を新築(写真左)した。モダン住宅ながら、内部には、以前の家で使っていた70年前の良質な木材や、精巧な細工が施された建具などをできるだけ再利用している。家族が長い歴史を刻んできた空間が、随所で再現できた。
《足利の家》の概要
所在地:栃木県足利市 (緑町)
設計:飯井築設計事務所
構造・規模:RC造2階建て住宅、延床面積138.05平方メートル
竣工:2013年12月
《足利の家》の写真をもっと見る
難航した地盤整備
古民家再生のプロセスで予想外の出来事は、取り壊し工事が始まって直後におこった。家の土台のコンクリートの高さが想像を超える70cmもあったのだ。特別に大型機を調達し、やっと解体が終わると、その次には岩や、(写真の)松杭が大量に出現。地盤改良工事だけで予算を約500万円も超過してしまったという。
「昔はこの周辺が沼であったと聞いており、必要以上に強固な土台が組まれていた可能性はある。事実、足利市の中でもこの周辺の被害が多く、ブルーシートの掛かった民家が多かった」と語る文彦さん。
古民家再生のプロセスで予想外の出来事は、取り壊し工事が始まって直後におこった。家の土台のコンクリートの高さが想像を超える70cmもあったのだ。特別に大型機を調達し、やっと解体が終わると、その次には岩や、(写真の)松杭が大量に出現。地盤改良工事だけで予算を約500万円も超過してしまったという。
「昔はこの周辺が沼であったと聞いており、必要以上に強固な土台が組まれていた可能性はある。事実、足利市の中でもこの周辺の被害が多く、ブルーシートの掛かった民家が多かった」と語る文彦さん。
和室の復元
RC造の躯体の中にあるとは思えないほど自然な仕上がりの8畳の和室。神棚や欄間、障子の腰板は、以前の家のものを再利用。その他にも木材で使えるものは、できる限り使用している。
家族の思い出がつまったこの部屋は、現在、泰一さんが寝室として利用している。目が覚めると外の美しい日本庭園を眺め、四季の移り変わりを楽しんでいるという。
RC造の躯体の中にあるとは思えないほど自然な仕上がりの8畳の和室。神棚や欄間、障子の腰板は、以前の家のものを再利用。その他にも木材で使えるものは、できる限り使用している。
家族の思い出がつまったこの部屋は、現在、泰一さんが寝室として利用している。目が覚めると外の美しい日本庭園を眺め、四季の移り変わりを楽しんでいるという。
古材の利用
この階段ホールと納戸をつなぐ扉も、以前の家のものを取り付けた。昔のサイズのため高さは低目だが、家紋彫刻が施された扉は、まさに家の面影、記憶を残す大切な建具だ。扉の奥にも、壁面いっぱいに意匠を極めた昔ながらの箪笥が置かれている。
この階段ホールと納戸をつなぐ扉も、以前の家のものを取り付けた。昔のサイズのため高さは低目だが、家紋彫刻が施された扉は、まさに家の面影、記憶を残す大切な建具だ。扉の奥にも、壁面いっぱいに意匠を極めた昔ながらの箪笥が置かれている。
蔵の思い出
手の込んだ仕事がしてある重厚な蔵の扉も、廊下から泰一さんの寝室につながる「和風ウォーキングクローゼット」の入口の扉として再利用している。
手の込んだ仕事がしてある重厚な蔵の扉も、廊下から泰一さんの寝室につながる「和風ウォーキングクローゼット」の入口の扉として再利用している。
スタイリッシュな書斎兼寝室
古民家再生を意識しながらも、新しいデザインと快適性を高める設備の導入を希望した息子の文彦さんの部屋は、コンクリートの打ち放しだ。2階の天井と同じ高さにした吹き抜けが、開放感を演出している。
将来的なリフォームも視野に入れ、左の壁の中央部分は、打ち抜くと隣の父の寝室につなげられるように、木下地の壁にして、調湿機能のあるリクシル社のタイルエコカラットをはっている。その上には、30cm間隔で金具(スガツネ工業、フルクス)をつけ、自由自在にフックや棚を取り付けられるようにしてある。最上部は照明用のライティングダクトで、スポット照明をつけるとエコカラットの凹凸に陰影ができ、壁の表情がより豊かになる。
また、ウォーキングクローゼット部分も、後から容易にキッチンに変更できるようになっている。「実際にリフォームをするかどうかはわからないが、この部屋をリビング・ダイニングに改造したくなったときのことを考えて計画されている」と文彦さんはいう。
古民家再生を意識しながらも、新しいデザインと快適性を高める設備の導入を希望した息子の文彦さんの部屋は、コンクリートの打ち放しだ。2階の天井と同じ高さにした吹き抜けが、開放感を演出している。
将来的なリフォームも視野に入れ、左の壁の中央部分は、打ち抜くと隣の父の寝室につなげられるように、木下地の壁にして、調湿機能のあるリクシル社のタイルエコカラットをはっている。その上には、30cm間隔で金具(スガツネ工業、フルクス)をつけ、自由自在にフックや棚を取り付けられるようにしてある。最上部は照明用のライティングダクトで、スポット照明をつけるとエコカラットの凹凸に陰影ができ、壁の表情がより豊かになる。
また、ウォーキングクローゼット部分も、後から容易にキッチンに変更できるようになっている。「実際にリフォームをするかどうかはわからないが、この部屋をリビング・ダイニングに改造したくなったときのことを考えて計画されている」と文彦さんはいう。
風情のある中庭
渡り廊下(写真奥)を挟んで、昭和初期の木造住宅(写真右)と、愛着ある古材を組み込んだRC造のモダン住宅(写真左)が、みごとにドッキングした山室邸。新築棟は、より丈夫な構造にしただけでなく、外断熱工法で、寒さの厳しい冬にはありがたい暖かい建物にもなっている。
母屋を解体し新築中、浴室もない家屋(写真右)で生活していた山室親子。以前の渡り廊下にトイレを設置していた場所が、今は清々しい石庭として生まれ変わり、渡り廊下からも静謐な景色が眺められる。「ここは震災前は日本庭園の一部で、雑草が生えると処理が大変だった。綺麗に石を敷き詰めてもらってありがたい」と、手入れの面でのメリットもあると話す文彦さん。
渡り廊下(写真奥)を挟んで、昭和初期の木造住宅(写真右)と、愛着ある古材を組み込んだRC造のモダン住宅(写真左)が、みごとにドッキングした山室邸。新築棟は、より丈夫な構造にしただけでなく、外断熱工法で、寒さの厳しい冬にはありがたい暖かい建物にもなっている。
母屋を解体し新築中、浴室もない家屋(写真右)で生活していた山室親子。以前の渡り廊下にトイレを設置していた場所が、今は清々しい石庭として生まれ変わり、渡り廊下からも静謐な景色が眺められる。「ここは震災前は日本庭園の一部で、雑草が生えると処理が大変だった。綺麗に石を敷き詰めてもらってありがたい」と、手入れの面でのメリットもあると話す文彦さん。
写真:震災をきっかけに、東京から地元に戻り、母親の介護と不動産賃貸業に専念することにした文彦さん(写真左)と、息子の経営手腕に目を細める父・泰一さん。
熊本地震の被災者にも心を痛める文彦さんからのアドバイスは、「行政の各種支援制度を細かくチェックし、きちんと申請をすること」「そしてもし地震保険に加入していても、被害状況を査定する鑑定人に任せきりにせず、細かい破損も見逃さない」とのこと。
山室邸は、自邸の他に、周辺地域に賃貸アパートや貸家を多数所有しており、それらには地震保険をかけていた。しかし、自宅は保険に未加入だったため、保険金は当然ながらおりていない。震災後、罹災証明は取得できたため、義援金などは受け取れたが、建物再建・新築のための支援金は一切でておらず、全て手元資金でまかなったという。
さまざまな苦労の末、みごとに再生した伝統的な日本家屋と、古民家の要素を取り入れたRC造の家屋は、新材と古材が調和し、住む人の生き方がそのままあらわれる空間となっていた。
熊本地震の被災者にも心を痛める文彦さんからのアドバイスは、「行政の各種支援制度を細かくチェックし、きちんと申請をすること」「そしてもし地震保険に加入していても、被害状況を査定する鑑定人に任せきりにせず、細かい破損も見逃さない」とのこと。
山室邸は、自邸の他に、周辺地域に賃貸アパートや貸家を多数所有しており、それらには地震保険をかけていた。しかし、自宅は保険に未加入だったため、保険金は当然ながらおりていない。震災後、罹災証明は取得できたため、義援金などは受け取れたが、建物再建・新築のための支援金は一切でておらず、全て手元資金でまかなったという。
さまざまな苦労の末、みごとに再生した伝統的な日本家屋と、古民家の要素を取り入れたRC造の家屋は、新材と古材が調和し、住む人の生き方がそのままあらわれる空間となっていた。
【事例2】江戸時代の古民家を完全再生
こちらは、利根川下流、茨城県稲敷市に建つ築250年の古民家である。震災で、この地域一帯は、液状化の被害を受け、軒並み全壊扱いとなった。昔は農業を営んでいた施主家族は、広大な敷地に、この伝統木造建築と、近年建てた数軒のプレハブ住宅を所有しており、普段はコンパクトに住める鉄骨造の家屋に住み、古民家は来客時に利用していた。驚いたことに、杭を打ち、コンクリート基礎の上に建てた近年の建物は、液状化の被害がひどく、地盤整備がほぼ不可能で、再建を断念。一方、この母屋だけが、社寺仏閣などの伝統建築にみられる「石場建て」という、自然石の上に柱をのせた構法が使われていたため、再生できることがわかった。
写真は、昔の趣を忠実に復元した建物の正面。左側が今ではほとんど見かけることのなくなった「式台玄関」。以前は、主人と客だけが利用できた。右側の手前アプローチに石が敷いてある玄関が、一般の家族が使用した「大戸口」(土間に通ずる勝手口)。震災後、土間は取り払い、広い廊下を設えた玄関(次の写真)に改修し、家族全員で利用している。
《継承する家》の概要
所在地:茨城県稲敷市
設計:けやき建築設計事務所
構造・規模:規模:木造軸組工法・石場建て平屋住宅、延床面積199.64平方メートル
竣工:2014年12月
《継承する家》の写真をもっと見る
こちらは、利根川下流、茨城県稲敷市に建つ築250年の古民家である。震災で、この地域一帯は、液状化の被害を受け、軒並み全壊扱いとなった。昔は農業を営んでいた施主家族は、広大な敷地に、この伝統木造建築と、近年建てた数軒のプレハブ住宅を所有しており、普段はコンパクトに住める鉄骨造の家屋に住み、古民家は来客時に利用していた。驚いたことに、杭を打ち、コンクリート基礎の上に建てた近年の建物は、液状化の被害がひどく、地盤整備がほぼ不可能で、再建を断念。一方、この母屋だけが、社寺仏閣などの伝統建築にみられる「石場建て」という、自然石の上に柱をのせた構法が使われていたため、再生できることがわかった。
写真は、昔の趣を忠実に復元した建物の正面。左側が今ではほとんど見かけることのなくなった「式台玄関」。以前は、主人と客だけが利用できた。右側の手前アプローチに石が敷いてある玄関が、一般の家族が使用した「大戸口」(土間に通ずる勝手口)。震災後、土間は取り払い、広い廊下を設えた玄関(次の写真)に改修し、家族全員で利用している。
《継承する家》の概要
所在地:茨城県稲敷市
設計:けやき建築設計事務所
構造・規模:規模:木造軸組工法・石場建て平屋住宅、延床面積199.64平方メートル
竣工:2014年12月
《継承する家》の写真をもっと見る
石場建ての威力
もちろん液状化の被害により、母屋も大きく不同沈下(水平ではなく傾斜して沈下)し、屋根瓦は崩落、壁なども大きな損傷を受けた。しかし、瓦が落ちた分、建物は軽くなり、ジャッキで躯体を上げる作業は1日で済んだという。建物を空中にあげた後の地盤整備も、沈下して戻らない部分は、土台となる石を背の高いものに交換し、石の下に固化材を注入するなどの作業はわずか数日で終了。レーザーで水平基準を図りながら、建物を簡単に土台に戻すことができた。
「現在の建築では、耐震性強化というと、杭を打ち、建物をコンクリートでしっかり留めることを考えるが、昔の建物は、災害にどう耐えるかというより、災害を受け入れながら、どのように直していくかという考え方で建てられている」と語るのは、石場建て住宅を得意とし、この家の再生を成功させたけやき建築設計の畔上順平さん。「もしまた巨大地震が起きたら、同じような被害にあうかもしれないが、石場建てのように基礎がないと、逆に足元が下がってしまっても、比較的容易に戻せる」という。
もちろん液状化の被害により、母屋も大きく不同沈下(水平ではなく傾斜して沈下)し、屋根瓦は崩落、壁なども大きな損傷を受けた。しかし、瓦が落ちた分、建物は軽くなり、ジャッキで躯体を上げる作業は1日で済んだという。建物を空中にあげた後の地盤整備も、沈下して戻らない部分は、土台となる石を背の高いものに交換し、石の下に固化材を注入するなどの作業はわずか数日で終了。レーザーで水平基準を図りながら、建物を簡単に土台に戻すことができた。
「現在の建築では、耐震性強化というと、杭を打ち、建物をコンクリートでしっかり留めることを考えるが、昔の建物は、災害にどう耐えるかというより、災害を受け入れながら、どのように直していくかという考え方で建てられている」と語るのは、石場建て住宅を得意とし、この家の再生を成功させたけやき建築設計の畔上順平さん。「もしまた巨大地震が起きたら、同じような被害にあうかもしれないが、石場建てのように基礎がないと、逆に足元が下がってしまっても、比較的容易に戻せる」という。
縁側にみる古来の知恵
震災直後から、現場の調査を始め、実際の竣工までには4年近くの歳月を要した。そのほとんどは、施主が慎重に設計プランを吟味していた期間だという。畔上さんは、施主の一番の願いである「代々住み継がれてきた家の趣を再生すること」と「寒さ対策」を両立させることに腐心したと語る。
例えば、この2つの表玄関の間をつなぐ縁側(廊下)。建物正面に面しているため、外観重視の意味もあり、気密性の高いサッシは使用していない。しかし、ここにも昔の人の知恵や工夫が隠されている。「縁側のガラス1枚1枚1は断熱効果はないが、中にもう1つ建具があることで、バッファーゾーン(=通気層)ができ、断熱効果的役割を果たしている」という。
震災直後から、現場の調査を始め、実際の竣工までには4年近くの歳月を要した。そのほとんどは、施主が慎重に設計プランを吟味していた期間だという。畔上さんは、施主の一番の願いである「代々住み継がれてきた家の趣を再生すること」と「寒さ対策」を両立させることに腐心したと語る。
例えば、この2つの表玄関の間をつなぐ縁側(廊下)。建物正面に面しているため、外観重視の意味もあり、気密性の高いサッシは使用していない。しかし、ここにも昔の人の知恵や工夫が隠されている。「縁側のガラス1枚1枚1は断熱効果はないが、中にもう1つ建具があることで、バッファーゾーン(=通気層)ができ、断熱効果的役割を果たしている」という。
現代技術も導入
一方、オープンキッチン奥の母親の寝室(写真奥、東側)には、サッシ窓を入れ、床や壁にも現代の素材や技術を使い、気密性を高めている。また、北側の浴室や水廻りの部屋も、機能性を重視した仕上がりになっている。
「古民家にこだわり過ぎると、使わない部屋が多すぎたり、暗かったり、不便だったりする場所も出て来て、結局、以前のように広い敷地内にプレハブの別棟を建ててしまうことにもなりかねない。平屋に家族4人が快適に住めるように、プライベートの空間を設けつつ、現代生活にしっかりとマッチさせた設備を備えた」と語る畔上さん。
一方、オープンキッチン奥の母親の寝室(写真奥、東側)には、サッシ窓を入れ、床や壁にも現代の素材や技術を使い、気密性を高めている。また、北側の浴室や水廻りの部屋も、機能性を重視した仕上がりになっている。
「古民家にこだわり過ぎると、使わない部屋が多すぎたり、暗かったり、不便だったりする場所も出て来て、結局、以前のように広い敷地内にプレハブの別棟を建ててしまうことにもなりかねない。平屋に家族4人が快適に住めるように、プライベートの空間を設けつつ、現代生活にしっかりとマッチさせた設備を備えた」と語る畔上さん。
写真:震災で北側の瓦屋根が完全に崩落。土壁や野地板も破壊し、立派な小屋組みがだけ残された。
古民家改修費用は、決して安くはない。延床面積が199.64平方メートルもあるこの茨城県稲敷市の建物の改修工事には、約5,000万円かかっており、その内、1/5はこの瓦屋根の補修に費やされている。しかし、再生された家に対する最終的な満足度は、計り知れないものがあるという。
東日本大震災からの自宅再建【Part 1】海辺の土地にカフェ付き住宅を新築を読む
古民家改修費用は、決して安くはない。延床面積が199.64平方メートルもあるこの茨城県稲敷市の建物の改修工事には、約5,000万円かかっており、その内、1/5はこの瓦屋根の補修に費やされている。しかし、再生された家に対する最終的な満足度は、計り知れないものがあるという。
東日本大震災からの自宅再建【Part 1】海辺の土地にカフェ付き住宅を新築を読む
今回紹介した震災から再建した2つの古民家は、いずれも未曾有の災害で甚大な被害にあった。しかし、住む人たちの伝統的な建物を継承したいという思いと、経験豊かな建築家・工務店の知恵と技術により、現代の機能や設備をうまく取り入れつつ、風格・深みのある古民家が、みごとに再生されていた。
教えてHouzz
ご感想をお聞かせください。
教えてHouzz
ご感想をお聞かせください。
おすすめの記事
Houzzツアー (お宅紹介)
クラシックなパリジャン風デザインを現代風にアレンジ
古典的な優美さと巧妙な仕組みの壁収納ベッドによって、ある女性とその甥のための美しいセカンドハウスが生まれました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
明るい色使いがポイント。ホームオフィスがあるスペインのリノベーション
ハッピーな雰囲気が魅力的な光あふれる住まい。デザイナーが考えた、予算を抑えるための秘策もご紹介します。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
開放的な空間に生まれ変わった、クラシックなテラスハウス
ロンドンの歴史ある建物の全面リフォーム。そして大胆に変身した廊下を、ビフォー・アフターの写真とともにご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
スペインの街を一望できるペントハウス
息をのむようなバルセロナの眺めを楽しむことができる、素晴らしいテラスをもつペントハウス。しかし改装前、出入り口には狭い引き戸しかありませんでした。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(海外)
光に満ちた回廊を再利用して、都市型アパートを開放的に
美しい天井と大きな窓がある、太陽の差し込む明るいロッジアをリビング空間の一部とすることで、住まいを一変させました
続きを読む
はじめまして、庭咲桜の中谷です。
ここ最近の日本は災害等が多くとても安心してはいられません。いつ何時、震災や災害が起こるか予測できませんし。被災に遭われた方々を思うと、ホントこころ苦しく、何もできない自分が歯がゆいです。私自身、親戚が仙台、塩釜、郡山、青森にいますので、東日本大震災の際は正直ビックリしました。私は仕事柄、造園業(庭師)してますのでそんな時こそ、こんな時だからこそ何か役に立てないものかと胸が痛いです。家族(妻・子供)が あると、自分の生活(家族)を差し置いて被災者の方のために何かすることの勇気と財力がないためホント情けないです。でも、こうした中でも震災・災害復旧に手助している方たちがとても大きく見え、刺激を受けます。私自身も今後なにができるのかじっくり考えて何らかの形で貢献できたらと思うとともに、早期の震災復興を願うばかりです。