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イングリッシュガーデンをお手本に。花咲く庭のつくり方、楽しみ方
ハーブの香るアプローチや四季折々の花が楽しめるボーダーベッド、日当たりのよくない場所にもつくれるシャドウガーデン。植物の自然の姿を生かしてていねいにつくる、ナチュラルで癒される庭のアイデアをご紹介します。
Yoko Ogino
2018年5月19日
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン。英国のインテリアスタイルの中でも特にイングリッシュカントリーに共感し現在は緑豊かな鎌倉山でスローなライフスタイルを提案しています。
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン... もっと見る
5月から6月にかけて、我が家の庭でも花が咲き始め、1年で最も美しい季節を迎えています。梅雨の前のほんのひととき、庭で過ごすとただそれだけで心が安らぎ、元気がもらえる気がします。庭の持つそんなパワーはもちろん、健やかに育つ植物や花たちがあってこそのもの。今回は私の見てきたイギリスの庭のお話を交えながら、自然の姿を生かした庭のつくり方のヒント、植物の配置のしかたを中心に、庭づくりの楽しさをお伝えします。
綿密なプランのもとに、植物の自然の姿を楽しむ
庭づくりを考えるときにまずイメージされるのは、四季折々に美しく咲く花たちの饗宴ではないでしょうか。冬場に行う庭の手入れは、春から夏にかけて咲き始める花壇をイメージして、手順を決めます。この写真の庭は典型的なイングリッシュコテージスタイルのガーデン。一見無造作に見えますが、綿密な計画のもとに四季折々の花が連鎖して咲くようにプランしています。このような植物の自然なままの姿を生かし、楽しむ庭を実現するために必要なもの、日本で取り入れられそうなアイデア、おすすめの植物などについて、これからお話ししたいと思います。
庭づくりを考えるときにまずイメージされるのは、四季折々に美しく咲く花たちの饗宴ではないでしょうか。冬場に行う庭の手入れは、春から夏にかけて咲き始める花壇をイメージして、手順を決めます。この写真の庭は典型的なイングリッシュコテージスタイルのガーデン。一見無造作に見えますが、綿密な計画のもとに四季折々の花が連鎖して咲くようにプランしています。このような植物の自然なままの姿を生かし、楽しむ庭を実現するために必要なもの、日本で取り入れられそうなアイデア、おすすめの植物などについて、これからお話ししたいと思います。
ゾーニングとアプローチ
ガーデンデザインをするときは、まず花壇やテラスの位置を決める「ゾーニング」からスタートします。その後それぞれを有効につなぐ作業にかかります。
アプローチは、ゾーンをつなぐ大事な道。周囲の景色や家の配置を考えてつくります。写真のような広い庭の場合、高低差のある動線をつくることも、目線の動きが変化して視覚効果の高い方法です。テラスの位置が庭より少し上がっていることで、このスペースが他と異なる空間であることを語っています。
ガーデンデザインをするときは、まず花壇やテラスの位置を決める「ゾーニング」からスタートします。その後それぞれを有効につなぐ作業にかかります。
アプローチは、ゾーンをつなぐ大事な道。周囲の景色や家の配置を考えてつくります。写真のような広い庭の場合、高低差のある動線をつくることも、目線の動きが変化して視覚効果の高い方法です。テラスの位置が庭より少し上がっていることで、このスペースが他と異なる空間であることを語っています。
アプローチの配置には、この先に見えるものを期待させる仕掛けが必要です。曲がりくねった通路をこのように植栽でカバーし、ロマンティックな雰囲気につくることも、庭づくりの醍醐味のひとつです。
毎年5月に開催される、RHS(英国王立園芸協会)主催のチェルシーフラワーショーは、その年のガーデンデザインや植物のトレンドが見られる貴重な展示会です。ここ数年、庭のアプローチはタイルや天然石を用いたり、高低差をつける景観デザインが人気でしたが、今年はまたナチュラル志向への傾向が見られ、芝生のアプローチが流行り始めたとのこと。いろいろ変化を楽しんだけれど、結局またトラディショナルなスタイルに戻るのですね。
今年のチェルシーフラワーショーについてはこちらもあわせて:
ガーデンのトレンド:北欧スタイルの「スマートガーデン」に注目
ガーデンツアー:都会生活に癒やしとくつろぎをもたらすサンクンガーデン
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ボーダーベッド、花やハーブのアプローチ
直線的に長い花壇のスペースが取れる庭では、このような「ボーダーベッド」をつくることをおすすめします。ボーダーベッドとは、敷地の境界線から帯状に、手前から奥にかけて植物の背の高さを変えて奥行きを出しながら、自然に見えるように構成した花壇のことです。日本の家でも、土地の形が旗竿形で道路から家までのアプローチが長く取れる場合や、庭へ続く通路などに、このような花のアプローチがつくれるのではないでしょうか。ラベンダーやローズマリーのような香り高いハーブを植えておくと、通るたびに心地よい匂いに癒されるでしょう。
直線的に長い花壇のスペースが取れる庭では、このような「ボーダーベッド」をつくることをおすすめします。ボーダーベッドとは、敷地の境界線から帯状に、手前から奥にかけて植物の背の高さを変えて奥行きを出しながら、自然に見えるように構成した花壇のことです。日本の家でも、土地の形が旗竿形で道路から家までのアプローチが長く取れる場合や、庭へ続く通路などに、このような花のアプローチがつくれるのではないでしょうか。ラベンダーやローズマリーのような香り高いハーブを植えておくと、通るたびに心地よい匂いに癒されるでしょう。
建物に沿ってつくられるフラワーベッドは、夏の暑さを軽減させるうえ、植物から贈られる香りを楽しめるというメリットがあります。これは湿度の少ないイギリスではより有効ですが、高温多湿の日本ではしばしば湿気がたまり、白アリ等の害虫が発生する可能性もあります。建物を共存させるために、建物と植物との間を最低10cmほど離して仕立てるなど、工夫が必要になります。
陽当たりがよくない場所でもつくれる、シャドウガーデン
庭づくりは、花を植えることだけに限りません。葉ものだけでも高さや葉の色、形を変えて楽しむことができます。特に日当たりの悪い北側に庭がある場合、日陰でもよく育つ植物で構成する「シャドウガーデン」に、グラス類や葉ものの植物は大活躍します。クリスマスローズや紫陽花なども、シャドウガーデンには欠かせません。
庭づくりは、花を植えることだけに限りません。葉ものだけでも高さや葉の色、形を変えて楽しむことができます。特に日当たりの悪い北側に庭がある場合、日陰でもよく育つ植物で構成する「シャドウガーデン」に、グラス類や葉ものの植物は大活躍します。クリスマスローズや紫陽花なども、シャドウガーデンには欠かせません。
このロンドンの庭は芝生で広いアプローチをつくり、コの字型に植物を配置しています。トレリスやパーゴラ等、庭の脇役になるものは一切見当たりませんが、庭木の高低差や下草の色の具合で、ため息が出るほど美しい仕上がりになっています。芝生はエッジ(隅)をこまめに切り揃えていれば、花壇に芝が入りこむことはありません。芝はお手入れさえすればいつも美しい姿を保てます。
また写真の右手前にあるバードバス周辺は、夕方までほとんど日が射さないため、シャドウガーデンでも育つ植物で構成されています。日当たりが悪くても花は咲くよい例です。このエリアに、ツツジやユキノシタ、椿など日本の植物が生育しているのは興味深いなと思いました。太陽の光に恵まれて育つ日本の植物が、さらに北にあるロンドンでは日陰に強い植物として活躍しているのですから。
また写真の右手前にあるバードバス周辺は、夕方までほとんど日が射さないため、シャドウガーデンでも育つ植物で構成されています。日当たりが悪くても花は咲くよい例です。このエリアに、ツツジやユキノシタ、椿など日本の植物が生育しているのは興味深いなと思いました。太陽の光に恵まれて育つ日本の植物が、さらに北にあるロンドンでは日陰に強い植物として活躍しているのですから。
さまざまな葉ものを組み合わせる
近年ますます人気が出てきた葉もの植物。葉の色の、さまざまなトーンのグリーンを取り合わせた美しさも格別です。今年のチェルシーフラワーショーでは、熱帯地方や南半球などのエキゾチックな葉を持つ植物が人気のようです。温暖化の影響もあるのでしょうか、ますますもとの気候にこだわらない植物構成の庭が増えていきそうです。
近年ますます人気が出てきた葉もの植物。葉の色の、さまざまなトーンのグリーンを取り合わせた美しさも格別です。今年のチェルシーフラワーショーでは、熱帯地方や南半球などのエキゾチックな葉を持つ植物が人気のようです。温暖化の影響もあるのでしょうか、ますますもとの気候にこだわらない植物構成の庭が増えていきそうです。
色の組み合わせを考慮しながら
チェルシーフラワーショーを訪ねるといつも感心するのは、植物の色の組み合わせです。キャンバスに色を落とすように、花や葉の色、形で素晴らしいハーモニーを奏でています。写真でもイギリスの夏の花壇を代表するアリウムのピンクがかった紫やグリーンのリーフを引き立てる脇役として、ダークな色合いの葉ものが大活躍しています。
チェルシーフラワーショーを訪ねるといつも感心するのは、植物の色の組み合わせです。キャンバスに色を落とすように、花や葉の色、形で素晴らしいハーモニーを奏でています。写真でもイギリスの夏の花壇を代表するアリウムのピンクがかった紫やグリーンのリーフを引き立てる脇役として、ダークな色合いの葉ものが大活躍しています。
夢のような植物の群舞。でもよく見ると、ラベンダーやサントリーナのような、日本でもよく見かける花で構成されています。淡い色の下草の中に存在感のあるアリウムギガンチウムを加え、一枚の絵のような風景を完成させました。これを見ても、花壇をつくるときのいちばんのポイントは配色、次に高さや葉の形であると気づかされます。
活用したいシンメトリー配置
いっぽう、バランスよく植物を配置したいとき少し高めの木やプランターをシンメトリーに置くこともおすすめします。これにより全体の雰囲気がかっちりと引き締まり、後の植栽のプランが考えやすくなるからです。写真のようなベイリーフ(月桂樹)のトピアリーはよく見かけますが、月桂樹の木はとても大きくなるので、仕立て方に注意が必要です。代わりに少し平凡ですが、作りやすい柘植の木などもおすすめです。最近はオリーブやフェイジュアのような、乾燥した土地から来た植物も育てやすく、人気があるようです。
いっぽう、バランスよく植物を配置したいとき少し高めの木やプランターをシンメトリーに置くこともおすすめします。これにより全体の雰囲気がかっちりと引き締まり、後の植栽のプランが考えやすくなるからです。写真のようなベイリーフ(月桂樹)のトピアリーはよく見かけますが、月桂樹の木はとても大きくなるので、仕立て方に注意が必要です。代わりに少し平凡ですが、作りやすい柘植の木などもおすすめです。最近はオリーブやフェイジュアのような、乾燥した土地から来た植物も育てやすく、人気があるようです。
ベジタブルガーデンの楽しみ
庭は育てる楽しみ、収穫する楽しみももたらしてくれます。初めてイギリスで花壇のような野菜畑を見たとき、畑のイメージが大きく変わりました。ベジタブルガーデンはプランターポットでもできますが、やはり小さくても地植えのほうがよく育ちます。スペースは限られてしまうかもしれませんが、このように庭に区画をして野菜専用のベッドをつくれたら、日々の暮らしがもっと豊かになること請け合いです。
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こちらは夢のベジタブルガーデン。ハーブの新鮮な香りが漂ってきそうな庭です。何気なく植えているようですが、この場所に入ったときの目線を意識し、手前に低めの花つきハーブや野菜を、奥側にセージのような背の高くなる植物をバランスよく植えています。畑の中につくるフェンスやゲートもナチュラルな雰囲気いっぱいで、お見事と言いたくなる庭です。
外壁に囲まれたガーデン
最近よく見かける囲い込みガーデン。日本の家の坪庭のようなものですね。こちらはテラスハウスの細長い庭で、極力手間のかからない庭づくりをしています。床にタイルを敷き込んだので、植栽にかかる時間がずいぶん少なくなります。壁面のトレリスに、いずれ蔓性の植物が育つと空間の姿がよりナチュラルに見えるでしょう。小さなスペースですが、屋外で過ごす快適さが満喫できるしつらえです。
最近よく見かける囲い込みガーデン。日本の家の坪庭のようなものですね。こちらはテラスハウスの細長い庭で、極力手間のかからない庭づくりをしています。床にタイルを敷き込んだので、植栽にかかる時間がずいぶん少なくなります。壁面のトレリスに、いずれ蔓性の植物が育つと空間の姿がよりナチュラルに見えるでしょう。小さなスペースですが、屋外で過ごす快適さが満喫できるしつらえです。
同じように植物にかける手間が少なくなるよう考えられた庭です。グリーンのメッシュのハンギングプランターポットに入っている植物と、同色のガーデンファニチャーが、アウトドアの雰囲気づくりに一役買っています。
建物の中央にくりぬかれた庭。外部から遮断された空間が家の内部とつながり、いっそうプライベートなスペースとなっています。
内部は光がさんさんと注ぐ明るい空間です。トップライトの効果と同じで、庭の向きを問わず一日中光を感じることができます。この発想は都会の狭小住宅に光を取り入れるときにも最適なアイデアだと思います。
庭はアウトドアリビングというもうひとつの部屋。屋外の光や風が心も体も満たしてくれるスペースになるのです。
花や植物で目を楽しませ、香りに癒され、時には味わい、私たちの心や体によいものを育てる場所、それが庭です。植物と関わると四季の変化に敏感になり、暮らしにメリハリができます。大小のサイズに関係なく、心豊かな暮らしを楽しめる空間として、自然の姿を生かした庭づくりをぜひ楽しんでみてください。
お近くの専門家に庭のデザインについて相談しませんか?簡単な質問に答えるだけで、専門家にすぐコンタクトできます。
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