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建物や室内の印象を格段に変える建具と枠に注目
普段は気をつけて見ることの少ない建具枠と建具ですが、ちょっと意識してみるとさまざまな工夫を凝らして作られていることが分かります。
akiyoshi kawajiri
2016年4月8日
ハウスメーカー、ゼネコン、設計事務所から長年多くのオーダー家具の設計と施工管理の依頼を請けてきました。現在は、2004年に開発したフロートテレビボードとその他の家具の販売、家具データ販売、家具の記事のライティングを中心に活動しています。
ハウスメーカー、ゼネコン、設計事務所から長年多くのオーダー家具の設計と施工管理の依頼を請けてきました。現在は、2004年に開発したフロートテレビボードとその他の家具の販売、家具データ販売、家具の記事のライティングを中心に活動しています... もっと見る
建物の中で意外と注目されない部分の一つに建具と枠があります。それは建具と枠がセットとなって販売されているので独自の枠や建具を作る建築会社が少なくなったからだと思っています。確かにきれいで施工面、価格面でも優れているセット商品は魅力もあることは確かですが、こだわりの家を建てようとしたときには枠や建具、そして巾木や見切りに及ぶまで独自のデザインを施すものです。この記事では、建具と枠の工夫に迫ってみようと思います。
空間の繋がりを妨げない枠
通常、枠は壁に沿って付けられているものですが、ここでは上のルーバーの流れを遮断しておらず、さらに左の壁も仕切られていません。空間の繋がりを妨げない納まりが見事です。
通常、枠は壁に沿って付けられているものですが、ここでは上のルーバーの流れを遮断しておらず、さらに左の壁も仕切られていません。空間の繋がりを妨げない納まりが見事です。
さきほどの続きです。天井のルーバーの間接照明が続いていることがわかります。
枠に存在感を与えつつシンプルに仕上げている
天井いっぱいの枠が目を引きますが、決して暗くありません。
それは両サイドに等しい幅のFIXガラスとしているからです。
天井いっぱいの枠が目を引きますが、決して暗くありません。
それは両サイドに等しい幅のFIXガラスとしているからです。
色の異なる枠の組み合わせ
全体がホワイト基調となっている家はどこか冷たさを感じるものです。この例では暖色の木(モク)建具と枠を交えることで家にぬくもり感をあたえることに成功しています。
全体がホワイト基調となっている家はどこか冷たさを感じるものです。この例では暖色の木(モク)建具と枠を交えることで家にぬくもり感をあたえることに成功しています。
古材をランダムに貼った個性的な建具
この建具の面白さは何といっても古材をランダムに貼り分けているところです。普通ではうるさすぎると思われるこの建具の存在感を、枠を壁の色と同色のホワイトとすることで、床材と建具のみに目が行くようになっています。建具のレバーハンドルが垂直になっているところも面白いですね。
この建具の面白さは何といっても古材をランダムに貼り分けているところです。普通ではうるさすぎると思われるこの建具の存在感を、枠を壁の色と同色のホワイトとすることで、床材と建具のみに目が行くようになっています。建具のレバーハンドルが垂直になっているところも面白いですね。
独立したエントランス建具
このエントランスはまわりをFIXガラスで覆っているため、光が入り込み広々とした印象を与えているとともに、重厚感のある建具と枠が独立して見えるという効果も表しています。
このエントランスはまわりをFIXガラスで覆っているため、光が入り込み広々とした印象を与えているとともに、重厚感のある建具と枠が独立して見えるという効果も表しています。
枠を使わず広い開口を生かしたシンプルな建具
通常建具には「枠」が必要とされるものですが、特殊な金物(ピボットヒンジ)を使うことにより、枠を必ずしも必要としない設えも可能となります。袖の部分となる幅の狭いFIXガラスにも枠を付けていません。
通常建具には「枠」が必要とされるものですが、特殊な金物(ピボットヒンジ)を使うことにより、枠を必ずしも必要としない設えも可能となります。袖の部分となる幅の狭いFIXガラスにも枠を付けていません。
時代を感じさせる重厚な建具と枠
床から天井までの重厚な建具には
、ケーシングと呼ばれる枠の装飾も欠かせません。さらに取っ手もレバーハンドルではなくドアノブとしたところに時代感が現れています。
床から天井までの重厚な建具には
、ケーシングと呼ばれる枠の装飾も欠かせません。さらに取っ手もレバーハンドルではなくドアノブとしたところに時代感が現れています。
視線の「抜け」を施した建具
一見、間仕切りのルーバーかと思ったのですが、よく見ると彫り込みの取っ手が見えたので建具だと分かりました。吊り式となっているので、必要に応じて間仕切りの位置を変えることができます。さらにルーバーとすることで視線の「抜け」がよくなり、閉鎖的になるということはありません。
一見、間仕切りのルーバーかと思ったのですが、よく見ると彫り込みの取っ手が見えたので建具だと分かりました。吊り式となっているので、必要に応じて間仕切りの位置を変えることができます。さらにルーバーとすることで視線の「抜け」がよくなり、閉鎖的になるということはありません。
違和感なく組み合わせられた建具
正面に見えるのは片開きドアで左に見えるのが、格子戸と呼ばれる引違い戸です。さりげなく見えますが、枠材をからめ(交差させ)たり材料をそろえたり、格子の形とかけ離れないドアのガラスの形など、見所が多い建具と枠です。
正面に見えるのは片開きドアで左に見えるのが、格子戸と呼ばれる引違い戸です。さりげなく見えますが、枠材をからめ(交差させ)たり材料をそろえたり、格子の形とかけ離れないドアのガラスの形など、見所が多い建具と枠です。
格子の形を微妙なバランス感覚でまとめる
この建具を見たとき、「変わっている」と思いましたが、バランスが取れていて美しく見えるので注目してみました。こちらからは枠も見せることなく、建具の框(かまち)だけでフレーミングをしています。そしてこの格子の一部に板を貼っていますが、法則性も感じさせません。まさに感覚だけで決められたデザインと言えそうです。
この建具を見たとき、「変わっている」と思いましたが、バランスが取れていて美しく見えるので注目してみました。こちらからは枠も見せることなく、建具の框(かまち)だけでフレーミングをしています。そしてこの格子の一部に板を貼っていますが、法則性も感じさせません。まさに感覚だけで決められたデザインと言えそうです。
上の写真の和室内部の写真です。
大きな格子戸のシルエットが印象的です。
大きな格子戸のシルエットが印象的です。
建具の木質に注目
建具と枠、そしてFIXガラスの組み合わせ方は多種多様です。ここでは建具の木質のみに目が集まるよう、周りに枠や見切りや巾木を付けることなくシンプルに仕上げています。何気なく使う枠などの建材を見直してみようという気にさせるものです。
建具と枠、そしてFIXガラスの組み合わせ方は多種多様です。ここでは建具の木質のみに目が集まるよう、周りに枠や見切りや巾木を付けることなくシンプルに仕上げています。何気なく使う枠などの建材を見直してみようという気にさせるものです。
「和」の粋が集まっている
柱が印象的な和の設え。右に見える格子デザインの建具、左の襖(ふすま)の格子も合わせ目寄りとしているなど見どころが多く、非常に手の込んだ造作と言えます。腰パネルの見切りの加工も見逃せません。
柱が印象的な和の設え。右に見える格子デザインの建具、左の襖(ふすま)の格子も合わせ目寄りとしているなど見どころが多く、非常に手の込んだ造作と言えます。腰パネルの見切りの加工も見逃せません。
自然光をたっぷり取り込む明るい玄関
玄関ドアの両側のガラスからは、外の景色が見えるとともに光が差し込んでいます。普通のガラス付きの玄関ドアであれば、これほど周りに光が入り込むことはありません。建具と枠には木の質感と存在感をしっかりと表し、玄関の明るさも実現させています。
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