Houzzツアー:平屋と2階建て、2棟をコの字型につなげた「家族に優しい家」
家族の理想のライフスタイルを実現したのは、焼杉材の平屋棟と白い2階棟、日本の住まいのよさも生かした個性的なレイアウトの家。
takako kawaguchi
2015年8月7日
「家族が笑顔で元気に過ごせる家を」と新たな住まいづくりへの思いを抱いていた愛知県のT夫妻。自然素材の持ち味を活かした家づくりで評判の〈住生活空間株式会社〉と出会い、家本体の話から敷地選び、コスト面までこまやかに話し合いを重ねていった。その過程で提案されたプランは、なんと20近くにも。なかでも夫妻を魅了したのが、リビングを中心としたパブリックスペースと、寝室やクローゼットなどのプライベートスペースをそれぞれ別の「箱」として2つに分け、その2つをキッチンと中庭でつなぐ、というプランだった。
どんなHouzz?
家族構成:30代のTさん夫婦、0歳、5歳の男の子
所在地:愛知県一宮市
構造:木造2階建て(在来軸組工法)
延床面積:121.73平方メートル
設計・施工:住生活空間株式会社
竣工:2013年3月
110平方メートルもの広々した芝生の庭に向かって、大きな窓をとった開放的な平屋。これが1つめの「箱」で、玄関、リビング、客間などのパブリックな要素は、ここに集約されている。外装に焼杉を使ったトラディショナルな佇まいが、緑の庭の中に自然となじんで見える。
家族構成:30代のTさん夫婦、0歳、5歳の男の子
所在地:愛知県一宮市
構造:木造2階建て(在来軸組工法)
延床面積:121.73平方メートル
設計・施工:住生活空間株式会社
竣工:2013年3月
110平方メートルもの広々した芝生の庭に向かって、大きな窓をとった開放的な平屋。これが1つめの「箱」で、玄関、リビング、客間などのパブリックな要素は、ここに集約されている。外装に焼杉を使ったトラディショナルな佇まいが、緑の庭の中に自然となじんで見える。
T夫妻宅を横から見たところ。先ほどの写真の平屋の後ろ側に2つめの「箱」、白い2階建てがあるのがわかる。こちらは寝室や子ども部屋、クロゼットがあるプライベートスペースだ。パブリック用の平屋棟とプライベート用の2階建て棟という2つの箱を、キッチンや中庭という小箱でコの字型につなぐ「箱の組み合わせ」がこの家の形状の最大の特徴である。そのおかげで日照や通風、ゲストへの対応など日常生活の機能性や利便性が飛躍的に高まり、「明るくて本当に過ごしやすい。友人を家に招待しやすくなりました」と家族みんなが笑顔に。
屋根の勾配は平屋部分は緩やかにして大容量の太陽光パネルを設置。2階建てはやや勾配をつけて変化をもたせている。
2階建ての外装は白のリシン仕上げ。焼杉の茶色とのコントラストが非常に美しく印象的に映る。
屋根の勾配は平屋部分は緩やかにして大容量の太陽光パネルを設置。2階建てはやや勾配をつけて変化をもたせている。
2階建ての外装は白のリシン仕上げ。焼杉の茶色とのコントラストが非常に美しく印象的に映る。
内装にナチュラルな無垢材のフローリングや火山灰のシラス壁を取り入れることは、これからの家族の生活や健康を考えたうえでごく自然な選択だった。リビングの床はエルム材、垂木はベイマツ材、小屋梁、母屋には岐阜県産のスギ材を使用。さまざまな木の表情や感触、香りなどを五感で楽しめるこの空間は、自然素材を愛するTさん家族にとって、最もリラックスできる場所である。
写真のように屋根の勾配や構造材をそのまま見せた天井は、空間をダイナミックに広々と、開放的に見せる効果がある。
写真のように屋根の勾配や構造材をそのまま見せた天井は、空間をダイナミックに広々と、開放的に見せる効果がある。
庭側には、特注した3枚の大きなガラス窓が。そのうち2枚分は開け放つことができ、緑豊かな庭と同じ空気を室内でも感じられるようになっている。もちろん縁側や庭への行き来は自由自在だ。
テレビの奥にあるのは造作のパソコンスペース。パパと子どもが並んで座り、パソコン作業や読書をしたり、キッチンに立つ家族とおしゃべりすることも。将来的には子どものスタディコーナーにする予定だとか。
センスよく揃えられたソファやチェア、照明器具などは、〈住生活空間株式会社〉とT夫妻が一緒にあちこちのショップを巡って見つけたものも多い。
ハンドクラフトならではのアーティスティックなフォルムが魅力の照明はデンマーク製の《レクリント172》。スタンド照明は神戸市芦屋のショップ、〈flame〉製。ソファは名古屋のソファ専門店〈フランネルソファ〉にて購入。テレビ台、ローテーブル、サイドテーブル、ダイニングチェアは岐阜の〈杉山製作所〉で見つけたもの。
テレビの奥にあるのは造作のパソコンスペース。パパと子どもが並んで座り、パソコン作業や読書をしたり、キッチンに立つ家族とおしゃべりすることも。将来的には子どものスタディコーナーにする予定だとか。
センスよく揃えられたソファやチェア、照明器具などは、〈住生活空間株式会社〉とT夫妻が一緒にあちこちのショップを巡って見つけたものも多い。
ハンドクラフトならではのアーティスティックなフォルムが魅力の照明はデンマーク製の《レクリント172》。スタンド照明は神戸市芦屋のショップ、〈flame〉製。ソファは名古屋のソファ専門店〈フランネルソファ〉にて購入。テレビ台、ローテーブル、サイドテーブル、ダイニングチェアは岐阜の〈杉山製作所〉で見つけたもの。
約12畳のリビングの隣には4畳半の和室が。暖かな日差しが心地よく、客間にしたり赤ちゃんのお昼寝部屋にしたりと、フレキシブルに使えるスペースだ。
奥のガラス戸は玄関へと続く扉。収納棚上の小窓からは中庭を望むことができる。
奥のガラス戸は玄関へと続く扉。収納棚上の小窓からは中庭を望むことができる。
和室の天井はよしずの葦を張りつけた、ヨシベニヤを使用。
ここまでが、平屋のパブリック空間である。
ここまでが、平屋のパブリック空間である。
平屋棟と2階建てのプライベート棟を結ぶダイニングキッチン。3.8mもの長いスギ板を使ったカウンターは、来客時には大人数が座ることができ、インテリアとしてもインパクト十分。一枚板を使うケースでは板の樹皮部分を見せるように設置するのが普通だが、T夫妻宅では軽さを出すためにあえて樹皮を下にして逆さに使い、直線部分は端部加工を施してある。板の厚みは60ミリ。
ダイニングのペンダントライトは世界中で愛されている名作、〈ルイスポールセン〉《PH5》の生誕50周年モデル《PH50》。
カウンター上の2つは同じく〈ルイスポールセン〉の《トルボー》。
キッチンに立つと真正面に、約8畳ある中庭が広がっている。
ダイニングのペンダントライトは世界中で愛されている名作、〈ルイスポールセン〉《PH5》の生誕50周年モデル《PH50》。
カウンター上の2つは同じく〈ルイスポールセン〉の《トルボー》。
キッチンに立つと真正面に、約8畳ある中庭が広がっている。
夫妻が強く望んだのが、水を使うキッチン部分は掃除がしやすく清潔感のあるオールステンレスにすること。キャビネットもすべてステンレスに統一したことで、クリーンな空間に仕上がっている。逆に背面の収納エリアは飾り棚や人工大理石の作業台、タモ単板にクリア塗装をした製作収納家具を設置するなど、意匠性を高めたつくりにした。
奥の扉の先は洗面脱衣室。家事動線にもきめこまかく配慮されている。
奥の扉の先は洗面脱衣室。家事動線にもきめこまかく配慮されている。
ダイニングキッチンを通り過ぎたところが2階建てのプライベート棟。ここで来客時をイメージしてみると、平屋棟とキッチンまではオープンで入りやすいが、コの字型の家の最奥にあるプライベート棟までは入っていきづらい、と考えられる。家族のプライバシーをそっと優しく守る、さりげなくも絶妙なコの字のゾーニングである。
写真は1階にある8畳の寝室。将来的には夫妻が平屋とプライベート棟1階部分だけで生活できるよう、寝室をここに決めたのだとか。壁の色は奥様の大好きなカラーであるイエローがかったグリーン。中庭からの柔らかな光を受けて、室内を明るく爽やかに見せている。リビングと同じく、天井の構造材も隠さずに見せる作りが空間を広々と感じさせる。
写真は1階にある8畳の寝室。将来的には夫妻が平屋とプライベート棟1階部分だけで生活できるよう、寝室をここに決めたのだとか。壁の色は奥様の大好きなカラーであるイエローがかったグリーン。中庭からの柔らかな光を受けて、室内を明るく爽やかに見せている。リビングと同じく、天井の構造材も隠さずに見せる作りが空間を広々と感じさせる。
高いデザイン性にもこだわったというT夫妻。焼杉とグレイッシュな石材、ブラックスレートのコンビで仕上げたこの一角は、その思いに見事に応える、一流旅館のような洗練されたエントランスとなっている。
ほんのりと照明に照らし出された焼杉は、古来重用されてきた外装材。着色では得られない自然な色合い、時を経ることで次第にシルバーがかった色味となる風合いの変化が楽しみである。メンテナンスのしやすさも大きなメリットだ。
ほんのりと照明に照らし出された焼杉は、古来重用されてきた外装材。着色では得られない自然な色合い、時を経ることで次第にシルバーがかった色味となる風合いの変化が楽しみである。メンテナンスのしやすさも大きなメリットだ。
子どもたちはいつも広々とした芝生の庭を駆け回って遊んでいる。大人も家庭菜園や仲間たちとのBBQ、趣味の野球の素振りなど健康的で解放感あふれる時間を満喫しているという。
平屋の庭先についているのは約12メートルある縁側。元気に遊んだあとはここに座っておやつを食べたり、ゴロンと寝転んでお昼寝することも。
縁側部分に使用したのはウリンという南洋材。
平屋の庭先についているのは約12メートルある縁側。元気に遊んだあとはここに座っておやつを食べたり、ゴロンと寝転んでお昼寝することも。
縁側部分に使用したのはウリンという南洋材。
夕暮れになると縁側には船舶風のライトが灯り、雰囲気のある空間へと表情を変える。キャンドルパーティに花火など、昼とはひと味ちがう楽しみ方のアイデアが次々と湧いてくる魅力的な場所だ。
家族が暮らしやすく、来客時にもスマートに対応できる、コの字型の家。木のぬくもりと光があふれるこの家を舞台に、一家4人の健やかで微笑ましい日常が今日も繰り広げられていく。
家族が暮らしやすく、来客時にもスマートに対応できる、コの字型の家。木のぬくもりと光があふれるこの家を舞台に、一家4人の健やかで微笑ましい日常が今日も繰り広げられていく。
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