Houzzツアー:おおらかで遊び心のある、ホームパーティ仕様のLDKと充実の収納の家
施主と設計者は、大学の研究室の同期生。共通の仲間を巻き込んででき上がったのは、全長4メートルのステンレスカウンターや斜めに走る廊下のある、シンプルながら個性あふれる家。
田村敦子|Atsuko Tamura
2015年6月11日
Freelance Editor
ここは、東京スカイツリーの見える中古マンションの4階の一室。光と風を満喫できる開放感いっぱいの環境を生かすべく、こまかく仕切られた「いわゆるマンションの間取り」を一掃し、さっぱりとしたスケルトンに。施主のKさん夫妻から希望として伝えられたのは、たくさん持っている服や靴のための収納がたっぷり欲しいこと、白を基調にして素材感で遊び心を表現し、「シンプルながらも変わった家」にしたいこと、そして、家族や友人など大勢の人たちと楽しく囲める大きなテーブルが中心にある「おうちパーティ」のできるLDKにしたいということ。このリクエストを全面リノベーションで形にしたのは、アトリエハコ建築設計事務所の七島幸之さんと佐野友美さん。キッチンは、こだわりのオーダーキッチン製作で定評のあるリブコンテンツに依頼した。実はKさんのご主人は佐野さんの学生時代の友人。奥様そして共通の仲間を巻き込み、アイデアを出し合い、まるで研究室時代の課題提出の際のような密度の濃い共同作業の時間をへて、素材や色づかいでスパイスを効かせたこだわりのディテールが光る、広々としためりはりのある空間が完成した。
全長4メートルのシンプルなステンレス一体型カウンターが鎮座する、日当たりのよいLDK。向かって左側の2メートルをキッチンカウンターとして使い、右側の2メートルはダイニングテーブル仕様に。キッチンカウンターの真上にある、まるで宙に浮いているようにも見えるつや塗装の白い箱は、同じ2メートル幅の吊り戸棚。一部に天井換気扇を組み込み、レンジフードとしての役割も与えられている。むき出しの天井スラブから、細いネジボルトで空間に遊びをもたせて吊り下げているので開放感があり、吊り戸棚にありがちな閉塞感がない。デザイン違いのチェアが並んだダイニングテーブルとひと続きのレイアウトは、回遊性があり動線が効率的であるだけでなく、大勢で料理を作って食べるホームパーティにも最適だ。真横から見ると門のように見えるデザインアイデアも、Kさん夫妻との話し合いで早くから決まっていた。
DKエリアの壁一面に設けられた収納は、中身をすべて引き戸で隠すのではなく、あえて半分程度を見せる仕様に。食器や家電、本やCDなどがたっぷりしまえる、取っ手のない、板をスライドするだけのシンプルなデザインも、軽やかな雰囲気と遊び心の演出に一役買っている。
どんなHouzz?
居住者:夫婦、子ども1人、猫1匹
所在地:東京都江東区
間取り:1LDK(将来は2LDKにも)
延床面積:76.49平方メートル
構造:RC造
設計:アトリエハコ建築設計事務所 七島幸之 佐野友美
キッチン製作:リブコンテンツ
施工:山洋木材
竣工:2010年8月
どんなHouzz?
居住者:夫婦、子ども1人、猫1匹
所在地:東京都江東区
間取り:1LDK(将来は2LDKにも)
延床面積:76.49平方メートル
構造:RC造
設計:アトリエハコ建築設計事務所 七島幸之 佐野友美
キッチン製作:リブコンテンツ
施工:山洋木材
竣工:2010年8月
一体成型のステンレスシンクの下は、収納をつくらずオープンにしてゴミ箱置き場に。このほうが掃除が行き届いてよいのだとか。側面はプリズムのような温かな輝きのある大理石のモザイクタイルを貼り、ステンレスのクールな輝きとミスマッチさせた。ここは奥様のお気に入りのディテールだそう。
ダイニングテーブルの高さは73cm。キッチンカウンターとの間の床レベルに10cmの段差をつけることで、作業しやすい高さを確保した。床材を変えることで、ゾーニングの役割も果たしている。
「ダイニングテーブル一体型のキッチンは動線が効率的で、人と人との距離を短くすることを実感しています。普段、普通に拭き掃除はしていますが、傷などは気にしないようにしています。ガンガン使って傷や凹みも味となる、デニムパンツやワークブーツのような感覚で使っていけたらいいと思います」とご主人。
「ダイニングテーブル一体型のキッチンは動線が効率的で、人と人との距離を短くすることを実感しています。普段、普通に拭き掃除はしていますが、傷などは気にしないようにしています。ガンガン使って傷や凹みも味となる、デニムパンツやワークブーツのような感覚で使っていけたらいいと思います」とご主人。
吊り戸棚の上は、住み始めてまもなく、愛猫のお気に入りの定位置になったのだそう。設計の打ち合わせの際にもよくそばにいたという彼、「どこかにキャットウォークもつくってほしい!」というひそかな希望?がかなったのかもしれない。既存の換気扇ダクトのスリーブを使う必要があり、どんな配管ルートでまわそうかと頭をひねった、設計時の苦労を、彼は知らない…。
フローリングはナラ無垢材のオイル仕上げ。TVボードはご主人が希望のデザインを絵に描いて提出し、それをもとに製作された。ボックスにぴたっと貼りついたかのように見える薄めの白い板がフラップダウンする、シンプルでユニークなデザインは、壁面収納と同じコンセプトだ。
向かって左手に、東京スカイツリーが望めるバルコニーがある。リノベーション前は床レベルがバルコニーよりも10cmほど低い位置にあったが、あえて同じ高さに揃えて、バルコニーに続き感のあるデッキを張ることで、LDKをさらに広く感じさせている。気候のよい季節には掃き出し窓を開け放せば、明るい陽ざしがさんさんと差し込む、「ハーフ・アウトドア」リビングになる。
さて、LDKから廊下を見てみると、通路が斜めに走っているのがわかるだろうか。ここも、K邸の特徴的なおもしろい部分だ。
さて、LDKから廊下を見てみると、通路が斜めに走っているのがわかるだろうか。ここも、K邸の特徴的なおもしろい部分だ。
玄関とLDKを結ぶ空間を斜めに横切る廊下。天井が低めで少し暗いこのエリアは、天井が高く日当たりのよいLDKとのはっきりとしたコントラストにより、ちょっとトンネルのような雰囲気になっている。床はモルタルで、天井にスリット状に照明をつけた。両サイドはつやのある白で塗装。右手の白い扉の向こうはたっぷりの収納スペースで、左手にはバス、トイレが並んでいる。
蛇腹ドアの向こうは、おしゃれなKさん夫妻の靴のコレクションが並ぶ、シューズクローゼット。
この収納は、寝室側のドアからも行き来できる「ウォークスルー・クローゼット」になっている。
クローゼット内部から寝室を見たところ。たくさんの洋服を効率よく収納できるよう、収納ボックスのサイズに合わせてクローゼットを設計した。
寝室には天井をつけて、LDKとは少し違った雰囲気に。たくさんのモノがあっても、徹底した「隠す収納」で、すべてこの奥のウォークスルー・クローゼットに収めているので、室内は驚くほどにすっきりとしている。
LDKや寝室を穏やかなニュートラルトーン中心にまとめている分、随所にビビッドカラーをとり入れているのもK邸の特徴。トイレの壁は、当初濃紺の予定で話が進んでいたが、ひょんなことから鮮やかなピンクに決まった。上半分はデッドスペースだった部分を利用した収納で、ご主人のアイデアだとか。
玄関ドアの居室側だけ、さわやかなライムグリーンにペイント。これは奥様のアイデアで、好みのトーンが出るまで、数回やり直してもらったのだとか。以前の家にいたときから持っていた、ダークカラーのスリムなキャビネットと白いシャンデリアをこの空間のアクセントにした。マンションらしくないところが気に入っているというモルタルのフロアとあいまって、意外性のあるスパイシーなコンビネーションのエントランスだ。
K邸には、常に友達や仲間の来訪が絶えないという。ホームパーティの際には、広く開け放したLDKで、料理好きの仲間たちが、器や調理道具の収納位置まで、まさに「勝手知ったる」状態で、一緒に楽しんで使いこなしてくれるのだそう。
まだ小さなお子さんが成長してからの間取り変更などにも、柔軟に対応できそうなおおらかな家。ご主人の言う、「履き込んだデニムパンツやワークブーツのような味わい」が加わっていくことがこれから楽しみだ。
まだ小さなお子さんが成長してからの間取り変更などにも、柔軟に対応できそうなおおらかな家。ご主人の言う、「履き込んだデニムパンツやワークブーツのような味わい」が加わっていくことがこれから楽しみだ。
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